プラグスーツ
実験後、ニャン吉に会いに行った。
ニャン吉は相変わらずお迎えしてくれるし、撫でられることも好きみたいなので、存分に愛でる!
私には優佳とショッピングしたり、バイスちゃんやニャン吉と遊ぶなんてできるけど、兎さんはできないんだよねぇ。
優佳やバイスちゃんは無理でもニャン吉を仮想世界に入れるのは可能性があるよね?
「ニャン吉、仮想世界に行ってみたい? ニャン吉はここから出れないけど、仮想世界ならどこまでも行けるよ。あ、そうか猫の行動範囲はそんなに広くないって聞いた気がする… でも兎さんのためにもニャン吉を仮想世界に入れたいな…」
河野さんが入ってきた。
「詩織さん、探しましたよ。ニャン吉を仮想世界に入れたいのですか?」
あ、ニャン吉と話しているのを聞かれた… よし、なんてことがないふり…
「そうです。やっぱり仮想世界にも癒しが必要でしょ」
「そうですね… それより、あさってに水槽で体への動きの遮断実験を行います。水着を持参してください。いいですか?」
「わかりました」
河野さんは連絡だけすると、出て行った。
水着か… はぁ。ちょっと憂鬱だけど、ニャン吉がいれば何とかなるな。
たしか、絵梨香さんが小脳のモデル化をしていたよね。
「絵梨香さん、ちょっといいですか?」
「なんですか? 詩織さん」
「ニャン吉は大脳だけ、光量子コンピュータですよね?」
「そうですよ」
「ニャン吉の小脳や脳幹のモデル化できれば、仮想世界に入れることはできますか?」
「できるとは思うけど…」
絵梨香さんが少し怪訝な顔をした
「どうしたのですか?」
「詩織さん、私の仕事を増やそうとしています?」
「あ、バレました?」
「バレますよ。ニャン吉を高性能MRIにかけることができないので無理ですよ」
「そっか…」
「詩織さん、時間があるなら、あさっての試験のための準備に付き合ってください」
「準備?」
「あさってに水槽に入るのですよね?」
「そう聞いています」
「プラグスーツの調整をしたいです」
「プラグスーツ?」
絵梨香さんは、ハンガーにかかっているダイビングスーツのようなゴム製のものを指差したが、すべてのパーツがバラバラ?
「これです」
「手足がバラバラのダイビングスーツみたいなのが、プラグスーツですか?」
「河野さんが、昔のアニメのものに近いのがあるって、そう名づけました。心拍、血圧、血中酸素濃度、筋電の取得の他にAEDの機能があります。設置位置が大切なので手足をバラしています。胸の部分が重要なので、接続を試したいのですが…」
「わかりました」
「こちらに来てください」と絵梨香さんが言い、水着より大きいがダイビングスーツのような素材のものを持って隣の部屋に入った。
「当日は、AEDや心拍の端末をつけてもらいますが、今日はプラグスーツのサイズだけ確認させてください。上半身は脱いでください。ブラは付けていていいです」
「わかりました」
プラグスーツをつけるが、入らない…
「ちょっと入らないですね… あとほんの少しですが… 水が入るといけないのでピッタリのつもりでした。私の目測より胸が大きかったです。かなり正確なんですが…」
「目測?」
「はい。私の特技ですね」と絵梨香さんは笑った。
「明後日はこれをつけるなら、水着は不要では?」
「上はつけない方がいいですね。ですから水着はワンピースではなくセパレートでお願いします」
「そんなの聞いていませんでした。下はないのですか?」
「前腕とふくらはぎはありますが、それ以外はないです。河野さんですから… 水着はビキニと思っているのかもしれません。あ、ビキニでもいいですよ。ビキニもセパレートですから。でも、ヒラヒラはやめてください。引き上げ時に引っかかるかもしれませんので」
「絵梨香さんがいてくれてよかったです。千秋先生は服装には気が回らないだろうし、河野さんは論外なので… フィイットネス用のセパレート水着を用意します」
「詩織さんの体を隠すのは勿体無い気がするけど、それがいいわね」




