みゆき誕生
アルジャーノンが神木さんの脳モデルを利用している件は、アルジャーノンやNPCが利用できる脳モデルを用意することになった。
その脳モデルは神木さんの了承を得て、神木さんの脳モデルをコピーしたものだ。
仮想空間のNPCは自分自身の動きや喋り方は共通のニューラルネットに個別の設定した結果を利用するため、歩くや走るなどの日常の動きの改善を全NPCに適用することが簡単になった。
また、相手の予測を脳モデルを利用するため、毎回同じケーキを勧めるというダメな回答もない。
しかし、相手が多くになると全NPCが同じ脳モデルを利用する構成では対応できなくなるのでは?という懸念点があるそうだが、対応できなくなった時点で利用する脳モデルを分離で対応するそうだ。
河野さんはGPUの使用率を気にしていたが、多くの学習を実施していたため利用率が高かったが、学習が落ち着けばCPU使用率も落ち着くらしい。
仮想空間は現実空間との差は急速になくなりつつあるため、人格ができるかの実験が再開されるようだ。
NPCが親代わりとなり、神木さんと兎さんと人の教師が補佐を行う。
もちろん、人の教師はヘッドマウントディスプレイを介して行うことになる。
仮想空間の学校で問題となっていた、縦笛はクリアできたが、調理と水泳は諦めだそうだ。
調理できない人も泳げない人もいるので、良しとすることとなったそうだ。
調理は教えなくても、味覚に関しては教えるらしい。
5感は人として重要なためらしい。
実験で、男の子となるのか女の子になるのかがわからないため、名前はどちらでも良いような名前を付けることになり、「みゆき」と名付けられた。
みゆきは1週間で小学生低学年程度となり、性別はどちらかといえば女性ではないか?ということで、女性とすることとなった。
そのため、名前はひらがなの「みゆき」のままとなった。
その後は学習は急速に進んだ。
ということで、私が関わる間もなくみゆきちゃんが大きくなってしまった…
子供の成長は早いねぇ。
今日は、みゆきちゃんに会いに行く。
「リンクスタート!」
いつものリビングに到着したので、アルジャーノンを呼び出す。
「アルジャーノンいる?」
白いハツカネズミのアルジャーノンが現れた。
「ご用でしょうか? 詩織さん」
「今日は、みゆきちゃんに会いにきたけど、会える?」
「はい、お呼びします」
しばらくすると扉が開き、黒髪ロングで、タイトスカートに白衣の女性と神木さんが入ってきた。
そして、女性は気だるそうに、「用はなんだ?」と言った。
えー! この人がみゆきちゃん!?
もっと小さい可愛い感じかと思ったのに違う!
「あのー。みゆきさんですか?」
「そうだ。詩織か?」
「詩織さん、すみません。このアバターに変更してからこの言葉遣いを変えようとしないのです」
「いいだろ? 身分に上下はないんだからかまわないだろ?」
「そうね、その通りだわ。みゆきさんも扉から入ってきましたけど、できるだけ現実世界にあわせるためですか?」
「いや、私はワープも念力も使えない」
「えっ! 兎さんも神木さんもワープも念力も使えますよね?」
「兎さん? あ、なにか変と思ったら、現実世界の詩織か。だから、神木は兎や猫と言っていたのか… 猫さん、ワープは私が行えなくてもアルジャーノンを呼び出せばできるだろ? それに、扉は手で開けた方が早いから、覚える必要がない」
「そうですか… みゆきさんは」
「『さん』はいらない。みゆきでいい」
うーん。なぜか、「さん」なしで呼ぶのが相応しくない気がするなぁ。「みゆきちゃん」はもっと似合わない。風格がある…
前は、千秋先生を「桃華ちゃん」と呼んでいたが、今じゃ呼びにくいのと同じかなぁ。




