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ファンタジーだからこそ、ちゃんとしないと

「こんにちは、河野さん」


 河野さんが端末に気を取られていてこちらに気づかない…


「河野さーん。河野さーん。どうしたのですか?」

「あ、詩織さん… ちょっと、仮想空間がすごいことになっていて…」


「どうすごいことなんですか?」

「このグラフを見てください」


 河野さんはグラフを表示したが、何かわからない


「このグラフは何を表現しているのですか?」

「GPUの使用率です。昨日から急激に増加していますよね?」


「そうですね、100%に近いですね」

「GPUは10倍に増強したばっかりですよ。ものすごく余裕を見て増強したのに足りない状況ですよ」


「ウィルスか何かですか?」

「いいえ、神木さんと詩織さんがものすごくGPUを使っているようです」


「ウィルスじゃないなら問題ないですよね? 何に使っているのですか?」

「さっき理由がわかったのですが、NPCです。NPCが1000体以上になっています」


「NPCって、会話にならないキャラクタで以前に消したものですよね?」

「一般的なNPCはそうですけど、今回はアルジャーノンのように会話ができるようです。しかも、動きもかなり自然なようです」


「すごいですね。いいじゃないですか?」

「その点はいいのですが… 動作の学習データが半端ないのです」


「確認に行きましょう」

「そうですね」


 私たちはヘッドマウントディスプレイをかぶった。


「「リンクスタート」」


 リビングには、スーツを着た30前後の男性が立っていた。


「詩織さん? ですか?」

「はい。詩織です」


「そちらはどなたでしょうか?」

「河野です」


「河野さんですね。わたくしはセバスチャンです」


 セバスチャン? 執事かな? そんな感じがするね。


「私、詩織というか、兎さんはいますか?」

「詩織さんはあなたでは?」


「うーん。面倒だなぁ。神木さんはいますか?」

「お呼びします」


 あれ? 部屋を出て行ったよ…

 しばらくすると、神木さんと一緒に戻ってきた。


「こんにちは、神木さん」

「こんにちは、詩織さん、河野さん」


「セバスチャンはNPCの執事ですか?」

「そうです。よくわかりましたね」


 神木さんは仮想空間の詩織と同じ考えで、呆れているようだ。


「セバスチャンはアルジャーノンと同じく大規模言語モデルで話しているのですか? アルジャーノンとは言葉使いが違うような気がします」

「セバスチャンには執事らしい言葉と行動ができるようにいろいろ設定をしています」


「そうなんですね。ところで、神木さんを呼ぶ際にどうして部屋を出たのですか? ここで呼べますよね?」

「そうですが、ここを現実世界にできるだけ合わせるため、現実世界でできないことは見せないようにさせています」


「端末の操作でも可能ですよね?」

「それは、詩織さん、いえ、兎さんが執事らしくないということで禁止しました。セバスチャンの端末の操作はフリだけなので元から意味はなかったのですが…」


「もしかして、セバスチャンにはものすごい量の設定がされていますか?」

「はい、びっくりするぐらいの量が設定されています…」


「ところで、兎さんはどこですか?」

「ファンタジーエリアです」


「河野さん、神木さん、行きましょう! ワープできるんでしょ?」

「はい」


 神木さんがファンタジーエリアのお城の広間?にワープさせてくれた。

 そこには、メイド?と兎さんとアルジャーノンがいて、兎さんがなにやら話している。


「そちらのメイドさんは元気に! こちらのメイドは他のメイドを監視するような感じで!」

「わかりました」とアルジャーノンが答えるが、声?が女性だね。しかも少し黄色い?


「あ、猫さん。こんにちは」

「こんにちは、兎さん。なんか、演技指導しているの? 掃除はここでは必要ないでしょ?」


「必要ないけど、お城にはメイドがいて、掃除していなきゃ!」

「わかるけど、大変じゃない?」

「えー! わかるんですか? 掃除もメイドも不要じゃないですか? 無駄ですよね?」


「「無駄じゃないわよ!」」 兎さんと私の声が揃った。

 河野さんはびっくりした顔の後、疲れた顔をした。

 神木さんは我関せずを決め込んでいているようだ…


「はぁ。もしかして、すべてのNPCに設定を入れているのですか?」

「そうですよ。だって、ファンタジーだからこそ、ちゃんとしないと」

「そうよねぇ。いいかげんだと、なえるよね」

「そうそう!」


「この子、アルジャーノン?だよね? 声が違うようだけど…」

「アルジャーノンじゃなく、琥珀だよ」


「琥珀です。よろしくお願いしますでちゅ」

「琥珀ちゃん、よろしくね。で、「ちゅ?」って語尾をつけるの?」


「たまに付けるように設定しているの。アルジャーノンと区別するために設定したんだけど、可愛いからそのままにしている」

「語尾に「にゃ」という猫耳のちょっとドジっ子はいないの?」


「うふふ。いるよー」

「ここ、楽しいねぇ。河野さんもそう思わない?」


「…GPUの使用率が異常に高い理由がわかりました」


 楽しいからいいじゃんねぇ。

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