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学校作成での問題点

 学校ができたら連絡してくれるように河野さんにチャットをいれた。

 待つだけで出来上がるなんて素敵!


 真織さんは、息がわからないと神木さんが言っていたよね? 息をした記憶がないから? 神木さんは息がわかっているということだよね?

 やっぱり、神木さんって不思議だよね。私の中にいたってことだよね?

 これは、わからないから放置かな…


 河野さんは家庭科室を用意するときに、味覚を神木さんと真織さんに教えるのに私が実験に付き合えばいいと言っていたけど… 高性能MRIをつけて、いろいろ食べるってこと?

 そのデータを上書きするってこと?


 それができるなら、真織さんに息を教えることもできるんじゃないかな?

 記憶がないなら、高性能MRIで縦笛を吹いている時のデータを真織さんの脳モデルに上書きすればいい?

 上書きした部分の脳細胞のデータは消えるけど、大丈夫なのかなぁ。


 脳モデルはデータだから、失敗してもロールバックすれば戻る。なんかロールプレイングゲームのキャラクタをセーブデータから起動するみたい… 生きていると思う人をそんな方法で復活させるのはちょっとねぇ。


 じゃ、脳モデルを作るときに小学校から学習を行ったけど、小学校に上がる前の日常生活を徹底的に実施した方がよかったの?

 私の運動能力や味覚がベースになるってことだけど、私、運動は不得意だよ。

 でも、高性能MRIのデータ取得の効率から考えたら私しかいないんだよね?


 意識不明を神木さんに起こしてもらってからは、神木さんの影響?でランニングをするようになったけど、運動能力は変わっていないような気がする。

 そんな、レベルの動きが今後作られる脳モデルのベースになるの?

 ちょっとかわいそうかも…


 高性能MRIのデータ取得の効率を他の人でも高められないかな? 薬剤で核スピンを合わせることができるけど、それだけじゃ不十分なんだよね?


 そういえば、神木さんは寝ないと言っていたけど、それって大丈夫なの?

 アバターだから体は休ませる必要はないけど、脳はいいのかな?

 神木さんは考えをまとめるのに横になると言っていたから、それで脳を休ませている?

 謎だなぁ。


 私の脳モデルの2日目からできた神木さんと真織さんは、私の脳モデルをベースとしているけど、あきらかに私じゃないよね。私の脳モデルの14日目の仮想空間の私は私だよね。でも、私も成長するし、仮想空間の私も成長すると、どこかで私じゃなくなる… 双子みたいな感じになるのかなぁ。



 ゴニョゴニョ考えていると、河野さんがヘッドマウントディスプレイを外した。


「詩織さん、まだいたのですね」

「はい。いろいろ考えていました」


「何を考えていたのですか?」

「家庭科室を用意するときに、味覚を神木さんと真織さんに教えるのに私が実験に付き合えばいいと言っていたじゃないですか? それって、高性能MRIをつけていろいろな物を食べるということかな?と思っていましたが、あっていますか?」


「あっています」

「高性能MRIで取得したデータを上書きするってことだと、他の記憶に影響がでないかなぁと思って…」


「脳の中は謎が多いけど多分大丈夫です。味覚は味覚神経、延髄孤束核、視床味覚野、大脳皮質味覚野の順に脳に伝えられます。さらに、大脳皮質前頭連合野、視床下部、扁桃体にも味覚情報が送られます。大脳皮質味覚野までの部分を上書きしても記憶には影響ないですよ。たぶん」

「へぇ。河野さんって物知りですね」


「脳モデルのために調べましたから」

「データの取り方ですが、高性能MRIをつけて、すべての食物を食べるわけにはいかないですよね?」


「味覚には甘味、塩味、酸味、苦味があるじゃないですか。味を感じると、ショ糖ベスト線維、食塩ベスト線維、塩酸ベスト線維、キニーネベスト線維に電気信号が流れるんだけど、面白いことに食塩を舐めたら、食塩ベスト線維だけが反応するだけじゃなく、ほかの線維も少し反応するんだ。だから、ショ糖や食塩などの基本的な動きを高性能MRIで取得する」

「基本的なものだけでいいのですか?」


「いいかどうかはわからないけど、すべての食事は取れないでしょ? 食物を解析して甘味、塩味、酸味、苦味がどの程度含まれているのかで線維にデータとして渡すしかないよ」

「食物を解析?」


「食べ物をミキサーで細かくして、味覚センサーに入れると味覚解析できる。そのデータから脳に流す電気信号を構成すれば味は伝えられるはず… 口当たりや温度は別の方法が必要だね」

「かなり面倒なんですね」


「はぁ。詩織さん… 面倒なんですよ。辞めましょうよ」

「辞めないです! もう一つ質問です。縦笛って仮想空間でどうやって鳴らすのですか?」

「そりゃ吹くしかないでしょ?」


「うーん。それはわかるんですけど、仮想空間には空気がないですよね?」

「はい。ないから、息をはいた時の強さと長さから音を再現します」


「へぇそんなことができるんですね」

「流体の計算ってとっても面倒なんですよ。辞めませんか?」

「辞めないです!」

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