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香織お姉ちゃん、仮想空間に入る その後3

「千秋先生、技術的な興味ですけど、他の人の脳モデルって作ることは可能ですか?」

「時間がかかるが、可能だろうね」


「時間?」

「高性能MRIでデータ取得が詩織と他の人と違うという話をしたよな。詩織と他の人では効率が約100倍違う。詩織が2週間かかったということは、200週必要だ。ということは3年半は必要になるな。だが、3年半もかかると記憶している内容も変化することが問題になる可能性があるな」


「もっと効率のいい方法がないと難しいということですね… そう考えると私の脳モデルって特殊? レア? なんですね」

「そうだ。そういう意味ではニャン吉もかなり特殊だ」


「ニャン吉の体があって、ルナが育ててくれたからですね。かなりレアですね。ニャン吉を仮想空間につれてくることはできますか?」

「ニャン吉の大脳は問題ないが、猫の小脳や脳幹のモデルがないし、猫のアバターがない。人型を使うわけにはいかないからな」


 猫族!? それは惹かれるかも…


「詩織、変な想像をしたろ? もし、人型にニャン吉を入れたら、人型の猫パンチはかなり強烈だろうし、服を着せることはまず不可能だろう」

「そうですね…」


 逆に、仮想空間ではなく、リアル空間に仮想空間の私を連れてくることは可能かな?


「リアルなロボットの体を仮想空間の詩織が操作することは可能ですか?」

「操縦という意味なら可能だが、詩織はそういうイメージじゃなく人のように動く義体を仮想空間の詩織に与えることができるのか?という質問だな。ロボットではなくアンドロイドの方が正しいと思われるが、現時点で人と同程度の動作ができるアンドロイドの体は存在しないから無理だな。もしできたとしても、詩織とかけ離れた体に長く接続することは精神にどう影響するのかはわからない」


「心と体は一体だから?」

「私の意見だが、心と体は相互作用があると思う。だから、仮想空間の詩織はリアルの詩織と同じ外見が望ましいと思う」



 電子音がなり、河野さんが端末を確認すると、千秋先生に声をかけた。

「千秋さん、香織さんが呼んでいます」

「仮想空間の詩織についてだな… 詩織も一緒に行こう」


「私が行っていいのですか?」

「香織は詩織に甘いからな さぁ行くぞ」


「どこに行くのですか?」

「香織のオフィスだ」


 香織お姉ちゃんのオフィスは同じフロアにあり、近かった。


「香織、はいるぞ」と千秋先生はノックもせずに入った。

「詩織も一緒なの?」

「え! お父さんも一緒なの!?」香織お姉ちゃんは私がいることに驚き、私はお父さんがいることに驚いた。


「桃華、詩織、座りなさい」

「はい」


 千秋先生と私はソファに座った。


「香織から聞いた。詩織の脳モデルが動いたそうだな」

「はい。実験の映像はご覧になりましたか?」


「あぁ。仮想環境の詩織と詩織との実験も、仮想環境の詩織と香織との実験も観た。実に成果としては素晴らしいが、この結果が外部に漏れると詩織の普通の生活はなくなるな」

「そう! 詩織の普通の生活ができなくなるのはダメよ! このプロジェクトはなかったことにするべきよ」


「香織、落ち着きなさい。桃華の意見を聞かせてくれ」

「はい。私も現時点の成果が外部の漏れると詩織の普通の生活はなくなると思います。秘匿レベルはSSですが、外部からのハッキング状況から考えると脳モデルを作成していることはバレることは防げないと思います」


「では、プロジェクトを中止にするか? 空の脳モデルは人にはならなかったのだろ?」

「はい。空の脳モデルの教育は難しいと考えています。プロジェクトは続けますが、詩織の普通の生活も守ります」


「ほう。どうやって?」

「詩織のアイデアを利用すると、詩織の普通の生活を守れます」


「詩織のアイデア?」

「そうです、詩織の脳モデルの作成では、高性能MRIを利用しますが、詩織に小学生のカリキュラムを実施してシナプスの接続を取得しました。その後、中学生のカリキュラム、高校のカリキュラムと進み、最後に個人的な情報を見せるという順で、シナプスの接続を上書きすることで詩織の脳モデルを作成しました。詩織は、小学生のカリキュラムが終了した時点の脳モデルを利用すれば、別人格の脳モデルが作成できるのではないか?というアイデアをだしました」


「なるほど… 別人格ができれば詩織は単純に普通の研究員というだから、詩織は普通の生活が送れるな。詩織はこのままこのプロジェクトに参加したいか?」

「はい」


「そうか。わかった。香織も納得したか?」

「はい…」


「桃華、プロジェクトを続けなさい」

「ありがとうございます。一つ問題点があります」


「なんだ」

「光量子チップの高性能版を急ぐ必要がありますが、資金が足りません」


「そういうことか。いくら必要なんだ?」

「現予算の3倍でお願いします」


「出せなくはないが、業績の監査があるため年度末には脳モデルに対する出資であることを公表する必要がある。急いで開発を進めるように。先ほどの話の資料をできるだけ早く作って送ってくれ。経営会議にかける」

「わかりました」

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