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香織お姉ちゃん、仮想空間に入る その後2

 仮想空間の私が死んだと思わなければ、いいか。でも、仮想空間に一人ぼっちは寂しすぎるし、耐えられないな。どうにかできないかな?


 仮想空間の私は香織お姉ちゃんを見て香織お姉ちゃんと認識したよね?


「千秋先生、仮想空間の私は初めて香織お姉ちゃんと会ったにも関わらず香織お姉ちゃんをなぜ認識できたのですか?」

「詩織の脳モデルを作る際に、写真を見る試験があったろ? その中に香織もあったからだろ? その情報が転写できたのではないか?」


「じゃ、私の口調まで同じというのはどうしてですか?

「試験の間、詩織はいろいろ喋っていたからな」


「うーん」

「どうした? 何が気に入らないんだ?」


「だって、あまりにも仮想空間の私と私が同じだったことですよ」

「そりゃ詩織の脳モデルだからな」


「そう! その脳モデルですよ。試験に出てきていない私の記憶までコピーできているじゃないですか? 仮想空間の私は私の部屋を見たことがないはずなのに、私の部屋と認識していたし…」

「そうだな。でも、それほど不思議でもないぞ。脳モデルを作成する時に勉強させたり、写真を見せたりしたろ?」

「はい」


「MRIは脳の働いている部分はよく取得できるから、その部分のデータ取得に集中しているが、その周りの場所もデータが取れないわけじゃない」

「その周りにある記憶もコピーできているということですか?」


「そうだ。よく活動している部分は明るくはっきり取得できるが、周りも取得できる。取得できたデータはすべて脳モデルに反映させているからだと考えられる。よく活動する場所をできるだけまんべんなく振り分けるために、小学校からの学習をしてもらった」


「なるほど… じゃ、2週間のデータではなく、最初の1週間のデータで起動したらどうなるのですか?」

「!? 最初の1週間は高校前半ぐらいまでの学習で、詩織の家族の写真等は見せていない状態か… 詩織はこの状態で、香織を認識できるかどうかを知りたいのか?」

「そうです」

「おそらく認識は難しいだろうな」


 だとすると… 小学校を学習した脳モデルを起動して、学習させると、小学校からやり直しができる?

 千秋先生に確認してみたくなった。


「小学校の学習が終わった状態で起動すると、ある程度会話ができる状態で起動できるとすると、その状態から教育すると、小学校からやり直しみたいなものだから、別人格になりませんか?」


 河野さん、橋田さんは驚きの顔で私を見た。


「詩織さん! すごいですよ! 特殊技能を持つ脳モデルに育てることができますよ! いろいろな人を作ることができます! 超画期的ですよ! 橋田さん、あのピクピクしか動かない脳モデルを使う必要なんてないんですよ!」

「河野、落ち着け。確かに色々な発展が開けたのは確かだ」


「確かに、詩織のアイデアは面白い。データの取り直しをする必要がないこともいいな」

「そうですね。小学校から順に学習する試験にしたのは英断でしたね、千秋先生!」


 みんなの興奮を見ていて別の疑問が湧いた。


「あのー。小学校の低学年なら男の子も女の子もあまり変わらないから、男の子として育てたら、男の子になるのかな? それとも性別不明に育つのかな?」


 また、河野さんと、橋田さんが驚きの顔で私を見た。


「詩織は、男の子になりたかったのか?」

「そうじゃないけど、どうなるのか気になっただけ」


「詩織の脳モデルなのに試してみたいって、嫌悪感はないのか?」

「ないよ。じゃんじゃんいろんな私を作っちゃいましょう!」


「…計算機資源が許さないから無理だ」

「どういうことですか?」


「仮想空間で詩織を動かすには、ここのデータセンタの計算機のGPUの6割を消費する。それだけじゃなく、光量子コンピュータを使い切っているので、新たに用意する必要がある」


「GPU?は買えばいいんですよね? 光量子コンピュータはここにしかないから買えないからですか?」

「光量子用のチップはメーカーが作っているが市販していないな。色々動かしたのでボトルネックの位置は明確になったので、改良版を試作中だ」


「ボトルネックって遅い箇所ですよね? どこなんですか?」

「光量子チップの量子数が足りない。今は1024だが、4096に増やす。さらに、積層にして増強するだけでなく、チップ間の接続も3次元にするらしい」


「『らしい』って、千秋先生もわからないのですか?」

「私の専門じゃないからな。高速化し、渋滞を解決するとしか理解していない。そうするとニューロンを計算結果を次のニューロンに引き渡す処理用の接続が早くなるらしい」


「そのチップが完成しないと仮想空間の私を増やすこともできないのですね…」

「そうだ。それにアルゴリズムの改良も必要だな。これは、明人君の仕事かな」

 河野さんはアルゴリズムの改良は楽しくない仕事のようで項垂れて「はい…」と答えた。

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