ロケット内の探索
ハエトリグモはロケットの中を探索を開始した。
ハエトリグモの糸のおかげで電波を出さずに探索できるので安全なんだけど、糸が絡まらないように移動する必要があるので、ちょっと効率が悪い。
詩織:「ケーブルに抱きつくのはどうして?」
河野:「通信内容を傍受しています」
詩織:「傍受はさっきの場所でもできたでしょ?」
河野:「セグメントが違うか確認しています」
詩織:「セグメント?」
河野:「ルータでセグメントが分離されていますし、スイッチングされているので、さっきの場所では取得できない情報があります」
詩織:「はぁ。そうですか…」
河野:「そうです。おっ、エリア0が見つかりました」
詩織:「エリア0?」
河野:「バックボーンエリアです。要は中心ですね」
詩織:「ということはデータセンタですか?」
河野:「おそらく… ふふ。このケーブルはあたりですよ。監視カメラの情報がすべて通っているようです」
河野さんはたくさんの画像を表示した「100箇所以上の監視カメラがありますね。8割は外部ですね」
詩織:「通路がこれだけあると言うことは人が移動することを前提としていると思いますけど、人がいないですね」
河野:「通路にいないだけか、冷凍睡眠しているか、いないかわかりませんね」
詩織:「冷凍睡眠はなさそうですね。人はいないかもしれませんね。それに食糧用のプラントもないですから…」
河野:「ローバーが巡回しているから監視カメラは不要とか?」
詩織:「電気も通信も完備されているのですから、監視カメラを配置した方がローバーで巡回するよりメンテナンスを考えたら安上がりでは? それにいつでも見れるのでしょ?」
河野:「視覚以外のセンサで常時監視していればカメラはなくてもいいのかもしれませんよ。あのカメラは動いているので、ローバーじゃないですか?」
詩織:「外部ですね… エンジン?」
河野:「そうですね。エンジンですね。ビアンカに見てもらった方がいいですね」
詩織:「ビアンカ、あの画像を見てください」
ビアンカ:「どれだ? これか…」
詩織:「エンジンの性能はわかりますか?」
ビアンカ:「画像では大きさがわからないから性能はわからんな。だが、化学ロケットなのは確かだな。」
詩織:「燃料はわかりますか?」
ビアンカ:「わからん。他の画像はないのか?」
河野:「収集中です」
ビアンカ:「後で確認する」
詩織:「今、見ないのですか?」
「核融合エンジンの試験の方が面白い」と言って、戻って行った。興味がないということはそれほどすごいエンジンじゃないのかな。
詩織:「端末、見つからないですね… 端末がないとハッキングできないのですよね?」
河野:「できないわけじゃないですけど… 慎重に進めるべきですね。神木さん、お願いできますか? 神木さん?」
神木:「…あっ、え? なんでしょうか?」
河野:「忙しかったですか? すみません」
神木:「集中していて気づきませんでした」
河野:「ロケットのハッキングを手伝ってもらおうと思ったのですけど、忙しいならいいです」
神木:「ロケット? この接続はロケットかも…」
河野:「どういうことですか?」
神木:「小惑星に残されたデータセンタを見ていたのですが、生きている部分もあったのです。その生きている部分が、どこかと通信しているようだったのですけど、どこに繋がっているのかわからなかったのです。ロケットはどこまでわかっているのですか?」
河野:「リング0のケーブルは把握できています」
神木:「では、小惑星から送られている情報は把握しているので、ロケットのリング0のパケットと突き合わせをすれば小惑星と繋がっているか否かがはっきりします」
河野:「なるほど。やりましょう」
河野さんと神木さんは端末の操作を開始したが、数字とアルファベットの羅列に見えるものを楽しそうに解析している。うーん。取り残されてしまった…




