ハッキング
私はオペレーションルームに戻ろうかと思って千織を見た時に、アラームが鳴った。
そのアラームに驚き、千織が「ギャー」と泣き出した。
私は千織をあやしながら、アラーム? なにこれ? こんな機能があったの? と考えていたら、千秋先生と由香が現れた。
千秋:「詩織、千織を由香に任せろ。オペレーションルームに行くぞ」
私は「はい」と答えつつ、由香さんに千織を預けた。
私は引きずられるようにオペレーションルームに転送された。
オペレーションルームでは全員が端末を操作していた。
誰も慌てていないので、ちょっと意外…
詩織:「なんですか? このアラームは?」
河野:「外部からのハッキングです」
詩織:「ハッキング? ハッキングされたらこんなアラームが鳴るのですか?」
千秋:「詩織、何をのんびりしている! 指揮をしろ」
詩織:「指揮? ハッキングされた時はどんな指揮を取るのですか?」
千秋:「座って、それぞれから集められた情報を整理しろ」
詩織:「わかりました」
え? それが指揮なの? ま、千秋先生が言うならそれでいいけど…
マニュアルをください
河野:「ハッキングの経路を閉じました」
詩織:「そうですか。情報漏洩したのでしょうか?」
河野:「それは今から調べます」
詩織:「アステロイドベルトでハッキング? どこから?」
神木:「弱い電波を利用していますし、タイムラグのないハッキングのようですから、近くからだと思います」
詩織:「近く? ということは美織達がハッキングしてきたのでしょうか?」
神木:「わかりません」
詩織:「ハッキングされたら、このようなアラームが鳴るのですか?」
神木:「そのようですね。鳴ったのは初めてですから…」
河野:「侵入された経路とアクセスされたデータの特定ができました」
詩織:「報告をお願いします」
河野:「侵入経路はハエトリグモなどの外部で稼働している機器との接続が切れた場合の緊急経路から侵入されました」
詩織:「それは電波なのですか?」
河野:「そうです。この緊急経路は火星から利用しているAPIですので、火星の情報を知るものがハッキングしてきたと考えられます」
詩織:「まだ、火星の時代のAPIがまだ残っていたのですね」
河野:「レーザー通信ができない場合はほぼないので、緊急時のプロトコルは以前のままでした」
詩織:「どこからハッキングされたのですか?」
河野:「先ほど神木さんが言われたように近距離ですね」
詩織:「近距離と言いますけど、どの程度の距離なのですか?」
河野:「月と地球程度です」
詩織:「かなり離れていますね…」
河野:「宇宙空間ではかなり近いです」
詩織:「はぁ。そうですか… で、アクセスされたデータはなんだったのですか?」
河野:「ハエトリグモなどの機器の数と自律駆動が可能な機能についてです。それ以外の情報漏洩はありません」
詩織:「では、それほどの被害はないですね」
河野:「ハエトリグモなどの機器の数はちょっと問題です」
詩織:「どうしてですか? 数でしょ?」
河野:「機器の数は私たちの歩兵の数です。それがわかるとこちらの戦力を想定できます。」
河野さんは、戦うつもり?
詩織:「河野さん、危険は無くなったと考えていいのかしら?」
河野:「ハッキングの脅威は無くなりましたが、近距離に敵が潜んでいることは確かです」
詩織:「敵ねぇ… 近距離にいるのは美織達だけじゃない? 美織達がハッキングしてきたということね」
河野:「確定はできません。調査します」
詩織:「お願いします。千秋先生、警戒は解除でいいでしょうか?」
千秋:「あぁ。いいだろう」
私は、みんなにセキュリティチェックを再度実施してもらうことを指示して部屋に戻った。




