貿易中断期間の変化
ハエトリグモ改は6本腕ローバーにゆっくり近づく。
詩織:「見つかりませんか?」
千秋:「さぁな」
河野:「見つかったら逃げます。ハエトリグモ改は黒いし、小さいし、速いです。それに、ケーブルを使ってジャンプして逃げることができるので、おそらく休止モード中なら正体までは突き止められないと思います。たぶん… 取り付きます」
詩織:「大丈夫そうですね」
河野:「ダメですね。この端子は知らないです」
神木:「その端子は小惑星で利用されていました。それに、プロトコルはO’Neill Cylinderと同じ可能性が高いです。こちらの情報を転送します」
河野:「助かります。どれどれぇ… なるほど、たいして変化していないですね。これなら大丈夫です」
詩織:「変化していないのは助かりますね」
千秋:「変化していないことは問題だぞ」
詩織:「どうしてですか?」
何か千秋先生が話そうとしていたが、河野さんの言葉で中断された。
河野:「6本腕の制御を取得しました。これ、NASAの6本腕ですね。制御方法が全く同じです。外部からの操作を基本としているので、ダム端末ですから何も情報が入っていない… え? 私たちが利用しているリザバーコンピューティングが入っていますよ」
詩織:「私たちの情報が漏れているということですか?」
河野:「いえ、これは火星の時のものです。最新ではないです。そのおかげで色々わかる可能性があります」
詩織:「何がわかりそうですか?」
河野:「O’Neill Cylinderで活動するので、その情報は持っているはずですよ… あっマップがありますね。保守通路もカメラなどのセンサの位置もわかりました。うーん」
詩織:「どうしたのですか?」
河野:「O’Neill Cylinderはかなり中途半端な状態で放置されています」
詩織:「廃墟ですか…」
河野:「太陽光パネルはO’Neill Cylinderが正規運用に耐える量が配置済みですが、人が生活するためのプラントは稼働していないので電気が有り余っています。それ以外は正常に稼働しているので、廃墟っぽくないです。でもこの6本腕ローバーはメンテナンスサインが出ています。内部はかなり悪いので廃墟にいるゾンビみたいですが…」
放置されている期間が長いから見た目以上に問題があるのかな…
詩織:「6本腕ローバーを経由して色々調べることができますか?」
河野:「6本腕ローバーは待機状態なので、起動するとばれますので離れた方がいいと思います」
詩織:「では、手詰まりですか?」
河野:「O’Neill Cylinderの制御ルームは生きていますのでそれを利用すべきです」
詩織:「では、制御ルーム移動しましょう」
河野:「ちょっと待ってください。ダニをつけております。ダニを付けていおけば6本腕ローバーが動き出したらわかります」
ダニって大きさからダニってつけたけど、酷いネーミングよね…
詩織:「お願いします」
河野さんはダニを6本腕ローバーにつけて、制御ルームに移動させるが監視カメラはほとんどない
詩織:「監視カメラって少ないですね」
河野:「O’Neill Cylinderに来る前にわかりますから、中で監視しても意味がほとんどないからじゃないですか?」
詩織:「ふーん。これが制御ルームですか。大きいですね」
河野:「人が管理する前提だからでしょうか? 通常がわからないので大きいかどうかはわかりませんね」
千秋:「私がNASAにいた頃の制御ルームに似ている。だから、こんなものじゃないか?」
詩織:「AIで管理するのでしょうから、そもそも制御ルームなんていらないのでは?」
千秋:「O’Neill Cylinderは人が生活する空間だから、AIの故障時に人で管理できないと人命にかかわるからだろ?」
詩織:「AIで対処できない状況? アルジャーノンが機能しない状況でしょ? 致命的じゃないですか? 人でどうにもならないと思うけど…」
千秋:「そうだな。私たちはアルジャーノンが機能しないことには遭遇していないから想像がつかないが、人命が関わる以上、バックアップは必要だ。どうも、私たちは感覚がズレはじじめているのかもしれないな」
河野:「私たちもサーバを分散配置して耐故障性は確保していますよ。死ぬのは嫌ですから」
千秋:「そうだな。接続して調べよう」
河野:「わかりました。あっ、ここの端子は知っていますので全く問題なく接続できます」




