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神木さんのMRIデータ

 神木さんのMRIのデータはすぐに取り出されてグラフ化できるそうだ。

 健康診断のMRIのデータは個人情報のような気がするけど、いいのかな…


「千秋さん。神木さんのグラフを表示します」

「詩織の勘はすばらしい! 機器が違うので単純な比較はだめだが、神木君のMRIのデータ取得数も高いな」

「核スピンを合わせる薬剤を利用した場合の値に近いですね。でも、詩織さんの方が高いですね」

「そうだな…」と千秋先生は私のほうを見た。


「詩織、脳モデルの取得に協力しろ。詩織のMRIでのデータ取得値は異様に高いので脳モデルを作るための時間を短縮できる」

「脳モデルは作成できているじゃないですか?」


「あれは、空の状態の脳モデルじゃないか。作りたいのは詩織の脳モデルだ」

「えー。私の!?」


「詩織の新型MRIでの実験結果は非常にいい。効率だけで考えると100倍は違う」

「そんなに? だって、薬剤を用いた場合の2倍程度ですよね?」


「あの薬剤は30分が限界というところだ。詩織だと薬剤は不要だろ? 夏休みに入ったら連続して取得できるしな。取得の間、お茶を飲んでも、ネットをしててもいいぞ」

「それって、千秋先生の利点ばっかりじゃないですか? あれ、あの部屋の中でネットができるんですか?」


「キーボードとマウスを有線で繋げば電波はほぼ気にする必要はないから問題ない。他に要望があれば、聞くぞ」

「じゃ、パティスリー・パリセヴェイユのフォンダンショコラをダージリンでいただきたいわ」

「はぁ、わかった。明人に用意させよう」

「えー。明人さんってちゃんとお茶入れれるのですか?」

「紅茶でしょ? そんなの誰でもできるでしょ」


「…はぁ。無理だな。じゃ、ここの料理スタッフでできるものを探す」


 明人さんがなんかぶつぶつ言ってるけど無視。


「実験のときはまた別のスイーツがいいので、リストアップしておきますね」

「…わかった。それでいいか?」

「はい」

「じゃ、明日の14:00から実験を開始するぞ」


「千秋先生、新型MRIって借りるのが難しかったのでは? そんなに簡単に利用できるんですか?」

「あぁ。詩織のデータ取得値が高いのか調べることができるので、彼らは乗り気だ。利害が一致したというだけのことだ」

「そうですか…」


「明人、絵梨香を呼んでこい。絵梨香には小脳、脳幹モデルの作成してもらう」

「絵梨香さんですね。わかりました。詩織さんご要望のスイーツも手配します」


 よしよし、私のガトーショコラが放置されないなら、千秋先生が勝手に盛り上がってもらっていても問題なし。私は部屋を後にして分析室に向かった。

 分析室のドアを開けると、橋田さんがアバターがピクピク動く映像を見ていた。


「おはようございます? もう、こんにちはかな? 橋田さん」

「おはようございます」

「アバターは相変わらずピクピクとしか動かないのですね」


「そうなんだよ。でも少しは違うんだよ。好きな音楽はあるようで、あまり反応しない音楽と反応する音楽があるね。映像は動きはほぼない。でも脳の活動はあるようなので、反応はしているような気がする。ただピクピクするだけでそれ以上の変化は今後も発生は見込めないかな。手詰まりだと千秋さんには言っているけど、もう少し工夫を続けろと言われるだけなんだよねぇ。こんな実験の仕事は分析室の仕事じゃないんだけどね。俺に向いていないし… 詩織さん、打開策を一緒にさがしてよ」


 橋田さんは疲れているようだ。


「うーん。一緒に悩むことしかできませんよ」

「ありがとう。それで、十分!」


「ピクピクが一番大きいものを見せてもらえますか?」

「動きの大きいものランキングは… 11.295ptで… 再生するよ」


 橋田さんは端末を操作して映像を流した。


「橋田さん、11なんちゃらポイントってなんですか?」

「脳からの指示で出てくるパルス量をポイントにしてみたんだ」


「これって、Queenでしたっけ? あの曲ですよね?」

「そうだよ。詩織さんの前で最初に流した音楽が一番ピクピクが大きく、その後のピクピク継続時間も一番長かったんだ。逆に言うとそれを越えられない… 何回流しても最初を越えられない…」


「それって、飽きた? 普通になった? のでは?」

「そうか。音楽というのが初めてだったので、衝撃的だったてことか… その後の音楽はその感動を越えられないってことかな」


「感動しているかどうかはわかりませんが、音楽を初めて聞いたら衝撃だと思いますよ。じゃ、Queenに慣れてきた映像はありますか?」

「あるよ」と端末を操作して映像を流してくれた。


 あ、このピクピクは大きくはないけど、リズムに乗れているのでは?

 他の曲の場合も気になったのでリクエストする。


「橋田さん。他の曲を流した時の映像はありますか?」


「おべんとうばこの歌とか、カエルの合唱なんかがあるよ。流すよ」


 ピクとはするが、乗れていない感じ… 


「おべんとうばこの歌とかって、おべんとうを想像できるから子供が合わせやすいんじゃないですか? カエルの合唱も輪唱があるのが特徴だし… 生まれたてと考えれば難しいのかもしれませんね。逆にWe Will Rock Youって途中でギターが入ったりしますけど、最初から最後まで同じリズムで全く変化しないじゃないですか? そういう方がいいのかもしれませんね」

「なるほどね。難しいね」


「気づいたんですけど、ピクピクはリズムに乗って動いていると思います。Queenを何度も聴いて、覚えているってことはないですかね?」

「そうかもしれないけど、調べようがないな」


「やっぱり、私じゃ役に立たなかったですね」

「そんなことないよ。手がかりはあったよ」


 今日はなんだか疲れたので、帰ることにした。

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