違和感 その1
「地球の詩織が私に会わせたかったとは聞いたけど、美織たちはアステロイドベルトに来てどうするつもりなの?」
「ホルスを倒す手伝いをしてほしいの」
「具体的には?」
「資源の提供です」
「資源?」
「はい。一番必要なのはウランです」
「ウランね…」
私が明言を避けていると、千秋先生が私に目配せをした。
「ウランがあれば電力を得ることができます。電力があればホルスの管理下を抜け出して自立できます」
「こちらで検討するので、通信を切るね」
「わかりました」
詩織:「琥珀、通信を切って」
琥珀:「わかりました」
千秋:「琥珀、モンキーで音声や映像は取り続けろ」
琥珀:「わかりました」
詩織:「千秋先生、美織の話をどう思います?」
千秋:「そうだなぁ。嘘が混じっていると思うな」
詩織:「私もそう思います」
河野:「そうですか? 信用してもいいかと思いますけど…」
詩織:「河野さんって騙されやすい人じゃないですか?」
河野:「え? そうですか? 信用できない根拠はあるのですか?」
詩織:「根拠? 根拠はないけど…」
河野:「美織さんは詩織さんと顔立ちがや雰囲気が似ているので血縁関係はあるのでは?」
詩織:「それはわからないわ」
千秋:「美織が詩織の孫かどうかは置いておこう。どうするかを判断すべきだ」
アンジェ:「ホルスは本当に存在するのか?」
詩織:「それも疑わしいですね」
詩織:「ホルスを排除するために、原子炉を暴走させたという話は信用できますか?」
河野:「それは引っかかります。原子炉は非常に安全に運用する必要があるため、しっかり管理します。それをアルジャーノンの管理の逃れて暴走させることはできないような気がします」
琥珀:「小惑星のアルジャーノンは私たちとは異なると可能性が高いと思います」
河野:「50年経過しているんだから、アルジャーノンも変化していると思うよ」
詩織:「河野さん、待ってください。琥珀、なぜ違うと思ったの?」
琥珀:「映像を転送する際に、小惑星側のネットワークに接続しました。ネットには防御壁が設定されていましたので中までは見れませんでしたが、映像をアクセスするためのプロトコルの順番に違和感があります」
詩織:「プロトコルの順番?」
琥珀:「はい。映像には種類がありますし、転送速度も種類があります。こちらは接続する側なので、相手が受領できる映像の種類と速度の一覧を受け取ります。その映像の種類に知らないものがあったのは問題ないのですが、その一覧には欧米では使わないものが含まれていました」
詩織:「なるほど」
河野:「新しいコーデックだったのでは?」
琥珀:「そのコーデックは一般的なものの亜種のため、使いません。用意するコーデックは多すぎると使いにくいので整理しますが、わざわざ亜種を残すのはおかしいのです。そのような整理をアルジャーノンはしません。それに防御壁の組み方も違います」
詩織:「小惑星の内部や美織たちに不自然なところはなかった?」
神木:「美織さんと上野さんの体温変化を見ていましたが、体温の変化が少なすぎます。これを見てください」
神木さんが、グラフと映像を並列で見せた。
神木:「この地点が、美織さんが飲み物を口にしたところです。飲み物は平温で20℃程度なので若干体温が低下する可能性が高いですが、変わりません。会話の途中でも変化しません。体温変化を抑える服を着ていると思いますが変化が少なすぎます。それに、会話の内容で気分の変化もあるはずなのに、体温が変化しません」
千秋:「詩織も不自然なところに気づいたのだろ? 何だ?」
詩織:「私は… 美織が不気味に見えたわ」
千秋:「不気味? 急に孫が現れたからか?」
詩織:「孫ってのは引っかかるけど… 何か変なのよねぇ、表情や手の動きが完璧すぎるのが気になるの。それがかえって不気味なの」
千秋:「確かにな」
河野:「そうですか? 完璧なのが不気味なのですか?」
千秋:「あそこまで完璧な動きは訓練してもできないんだよ。動作の解析をしてみよう」




