方針会議 その1
衛星から鉄が含まれていると考えられるC型小惑星が2つ見つかったので、報告会で説明する。
詩織:「C型小惑星で鉄の反応がありました。場所はこの近くですが入り口は確認できていません。今日の議題はこの小惑星をどうするかです」
伊織:「どうするって、調べるか調べないかですか?」
詩織:「いろいろありますよ。いきなり行って調べるとか、電波などを飛ばして調べるとか、気づかなかったふりをして調査しないとか」
伊織:「調べないというのはよくないと思うわ。電波を飛ばしたら、あなたたちのことは気づいていますよと教えることになりませんか?」
詩織:「そうなのよねぇ。でも、今のデータだけでは、いるかいないかもわからないのよねぇ」
伊織:「前に小惑星の基地を見つけたときは調査したじゃない?」
詩織:「モンキーで入り口まで行ったから、相手にモンキーを捕捉されているなら隠れても意味がないと思ったからよ。でも今回はこちらが相手にこちらが気づいていないと思わせることができるでしょ?」
伊織:「小惑星の基地に入ったことを知っているかもしれないわ」
詩織:「電波や光など通信した形跡はないわ。それに、偵察機などは基地には来ていないわ。だから、基地に入ったことは知られていないと思うの」
千秋:「これからの対応に関わる判断だな」
詩織:「そうなのです。無視して『勝手にどうぞ』とできるし、『私たちのテリトリーに入らないで』と言うこともできます。どちらが正解なのかわからないです」
アンジェ:「…詩織、調査するしない以外にも選択肢はあるぞ」
詩織:「何があるのですか?」
アンジェ:「そうだなぁ。攻撃して独立宣言をする。アステロイドベルトから逃げるなどかな」
詩織:「独立宣言? 前に聞いたような… そんな過激なことはちょっといやだなぁ。で、アステロイドベルトから逃げるってどこにですか?」
アンジェ:「近いのはケンタウリだな」
詩織:「近いって言いますけど、どのくらいの距離ですか?」
アンジェ:「4.3光年だな」
詩織:「え? 光の速度で4年かかるのでしょ? 行けるのですか?」
アンジェ:「10年から20年で着くだろう。追って来れないぞ」
詩織:「ま、そうでしょうが…」
千秋:「先に彼らが来た理由を考えた方がいいのではないか? そうすれば対応方法も考えられる」
詩織:「ウランを採集しき来たとか?」
千秋:「ウランの可能性は高いな」
河野:「私たちと貿易するためとかは?」
千秋:「どうどうと通信してくればいいだろ? 場所はわかっているのだから通信できる」
河野:「そうですよねぇ」
神木:「地球では私たちのことをどう認識しているのでしょうか?」
詩織:「NASAは私たちがいることを知っているけど、世間は人工知能が開発を行っているでしょ?」
河野:「人工知能が開発を行っていたが、現在は機能していないか、何らかの問題が発生して貿易が停止していると思うのではないですか?」
詩織:「あっ。そう考えることもできますね。でも見つからないように来ているじゃないですか? NASAはこちらを知っているのですから通信できますよね?」
アンジェ:「アステロイドベルトは広いから見つからない可能性も高い。それに、NASAが知っていると思うのは早計だな」
詩織:「どうしてですか?」
アンジェ:「年月が経過し過ぎている」
そうね… そう言われればそうだわ。時間の感覚がなくなってきているのかしら…
詩織:「でも、記録にはあるでしょ?」
アンジェ:「公式では人工知能に指示を出していただけだ。私たちと交信したことがある職員はNASAにはいない。退職している。後から入ってきた職員は公式記録を見る程度だろう」
河野:「引き継ぎはしますよね?」
アンジェ:「河野君、君は引き継ぎの内容をすべて覚えているか?」
河野:「重要でないものは覚えていないかも…」
アンジェ:「だろ?」
詩織:「でも、実際と公式記録が違うから、覚えている人や調べる人がいるのでは?」
アンジェ:「あぁ。実際は違う。陰謀や謎があれば調べる者はいるかもしれないが、謎なんてないからな」
詩織:「うーん。じゃ地球の立場で考えてみて… ウランが来なくなったのは謎じゃないですか?」
アンジェ:「謎かどうかはわからないが、再開させたいとは思っているだろうな」




