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新型MRI 試験結果

 30分ぐらい経った時、千秋先生と河野さんが入ってきた。


「まだ、詳細の解析はできていないが、グラフは作れた」

 千秋先生は端末を操作してグラフをモニターに表示した。


「赤の線が詩織で、他の色が他の被験者だ。縦軸がMRIで取得できたデータ量で横軸が時間だ。ただし、詩織は例の映像の時間で中断しているので、中断部分は省いている。だから、同じ試験データを利用しているので、どの内容で反応が大きかがわかる」


 他の被験者は同じぐらいの値をうろうろしているのに、私だけ途中から大きく上にグラフのラインが突き抜けている。


「横軸の時間はいいのですが、縦軸が変ですよ。どうして、縦のスケールを全体が見えるようにしないのですか?」

「これは、最初がほぼ同じということをわかってもらうためにあえてしている」


「そうですね。私の赤が、最初は他の被験者とあまり変わらないけど、途中から縦軸が振り切れていますね。縦軸ってMRIの取得数?ですよね? MRIの取得数が多いとはどういうことですか?」

「MRIのデータ取得数が多いということは、核スピンがあっている場合が多いということを示している。データ取得数が多いほど解像度が高いということだ」


「じゃ、私はデータを取りやすかったということですか?」

「そうだ。MRIの解像度を高めるために核スピンを合わせる薬剤を用いると言っただろ? 次のグラフは核スピンを合わせる薬剤を用いた場合のデータに詩織のデータを重ねたものだ」


「これも、赤が私ですよね? グラフの縦軸は突き抜けていないですけど、薬剤を用いた場合の被験者の倍ほどの高さがありますよね?」

「そうだ」


「あのー。赤のラインが他の薬剤を用いた被験者の倍近くの位置ですね」

「そうなんだ」


「この急激に上がった場所って、最初の方だから映像ですよね? なんの映像ですか?」

「オーケストラで『ラプソディ・イン・ブルー』が流れ始めた時点からだな」


「あの虫の映像かと思いました」

「私もそうかと思ったが、違った。詩織、『ラプソディ・イン・ブルー』が流れる時、何があった?かわかるか?」


「覚えていないです」

「あの時の詩織を写した実験映像があるから見て思い出してくれ」

「わかりました」


 千秋先生が実験映像を流した。はじめは普通だよね? そして、あの虫の映像…

 私って、こんなに焦ってギャーギャー言っていたの? はずかしい…

 千秋先生が落ち着けとか言っているし、そうりゃそうか…

 試験再開だけど、かなり私は警戒しているね。

 そして、『ラプソディ・イン・ブルー』が流れ始めた。


「『ラプソディ・イン・ブルー』が流れ始めた時、何かあったか?」

「えーっと。私、あの虫の映像の後の再開で、またあの虫が表示されるんじゃないかとすっごく警戒していたんです。でも『ラプソディ・イン・ブルー』が流れてきてホッとして落ち着いたので集中できたんです」


 千秋先生は端末を操作して、「そうか… 今回の詩織の再試験のデータを重ねるぞ」と言った。


「最初から高いですね。で、あの虫の部分?で急激に下がっていますね。そして戻りましたね」

「そうだな。MRIのデータ取得数は同じ人でも多少の変化はあるが、詩織ほどの変化はない。しかも、詩織のデータ取得数は異常だ。これは、再試を行なっても同じだったので計測機器の異常ではない」


「機器の改良も行なっているのですよね? そのせいでは?」

「確かにプログラムの修正は行なっているが、前回の詩織のデータ取得数が多かったため、被験者にはもう一度試験を実施してもらったので、プログラムの修正は影響がなかったことは確認できている」


「じゃ、なぜなんでしょう?」

「最初の詩織の試験結果が偶然良かったのかと思った。それを確認するために、詩織で再試を行なったが、データ取得数の良いことは同じだった。偶然ではない」


 私はふと、意識不明から目覚めた時に、私の右手を握っている神木さんの姿が頭に浮かび、「…神木さん…」と呟いた。


「詩織?」

「あ、なんでもないです」


「神木と言わなかったか?」

「はい… なぜか、意識不明から目覚めた時に、私の手を握っている神木さんの姿を思い出したので、つい、口走ってしまいました」


「…神木君か。神木君は、神木君が起こした特殊な4例の原因の仮説が『同期』と言っていたな。強制的に核スピンを合わせる薬剤は『同期』と言えなくもない… 神木君がいれば試験ができたが残念だ」


「神木さんって、救急救命士だったので、何かの検査で、高性能版じゃなくてもMRIの結果はどこかにありませんかね?」

「詩織、いいぞ! 明人君、神木君のここでの健康診断のMRIの結果を調べろ」

「わかりました」

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