モンキーの試作機
移動している何かをよく見ると、細い糸が伸びている。
詩織:「体から細い糸が伸びていますよね?」
河野:「そうですね」
マルコ:「詩織さん、どうですか? 新しいローバーは」
詩織:「マルコ、あれが新しいローバーなんですか?」
マルコ:「試作機のモンキーだ」
詩織:「モンキー? どうやって動いているのですか?」
マルコ:「本体から細い糸の先に掴むことができる手がついている。その手を超小型レールガンで飛ばして糸や手すりを捕まえるんだ。そして糸を縮めれば移動できる。伸び縮みする腕? そう、糸付きナックルボンバーみたいなものだ」
河野:「ゴムゴムの実を食べたゴム人間ですね。で、ナックルボンバーって何ですか? 指の関節? 拳? の爆弾?」
マルコ:「日本人なのにナックルボンバーを知らないのか? Jeeg Robot d'Acciaioを知らないのか?」
河野:「なんでしょう? 調べますね… 鋼鉄ジーグ? 昔のアニメのようですね。すみません知りません」
マルコ:「そうだ。日本の昔のアニメだ。イタリアで放送されていた。磁石で体のパーツがくっついていて、腕を飛ばすことができる。Jeeg Robot d’Acciaioのように磁石で腕を回収したかったが、できないから仕方がない」
うーん。何の話で盛り上がっているの? で、いつになったら終わるの? 話の方向を変えよう!
詩織:「マルコ、糸や手すりを捕まえることに失敗したら、危険じゃないですか?」
マルコ:「伸び縮みするは2本用意している。両方の腕を同時に放すわけではないから、問題ないだろ?」
詩織:「なるほど、うんていでの移動のようですね」
マルコ:「うんてい?」
詩織:「はしごみたいな遊具ですよ」
私は端末を操作して、うんていをマルコに見せた。
マルコ:「あぁ。barre di scimmiaだな。悠人もうんていを知っているから、簡単に操れたのかな?」
詩織:「あのローバーは悠人が操っているのですか?」
マルコ:「そうだ。今、モンキーを動かしているのは悠人だ。彼はうまい! 最初は距離感がわからなかったのか、掴むのに失敗していたが…」
腕を伸ばして移動していると言われれば、そんな気がするけど、腕の長さが尋常じゃないけど…
詩織:「河野さん、糸を掴むと太陽光パネルが動いて問題になりませんか?」
河野:「新しいアルゴリズムで調整が簡単ですから、問題ないと思います」
詩織:「マルコ、あのローバーはスパイダーマンのようですけど、モンキーと名付けたのですね」
マルコ:「悠人は長い手で掴んで移動するイメージが一番しっくり移動できると言ったので、モンキーにした」
詩織:「糸は細いようですけど、問題ないのですか?」
マルコ:「カーボンナノチューブで作っているので問題ない」
詩織:「悠人、モンキーは使いやすい?」
悠人:「ハエトリグモは糸を外すのが難しかったけど、モンキーは手で掴んでいるイメージなので、手を放すだけで糸を離せます。ですから、長距離の移動も速いですよ。問題は距離感ですが、距離感もアルジャーノンが届く届かないを色わけをしてくれるので、それを参考にすれば問題ないです」
詩織:「じゃ、これからはモンキーを使いましょう」
マルコ:「精密な動作をする腕はできていない」
詩織:「じゃ、操作する腕は従来の6本腕ローバーでいいのでは? 人工筋肉で精密な動作ができるようになったら、切り替えるでいかが?」
マルコ:「あぁ。わかった。L’attacco dei Gigantiのような見た目になるがいいか?」
詩織:「L’attacco dei Giganti? 琥珀、どう言う意味?」
琥珀「『進撃の巨人』のことのようです」
琥珀が、絵を見せてくれた。 筋肉隆々の変な巨人? ちょっと怖い…
詩織:「もしかして、こんな生々しいものを作る気ですか?」
マルコ:「骨格に人工筋肉を付けると、見た目は皮を剥いだ肉体のような見た目になる」
詩織:「あのう。却下で…」
マルコ:「そうか? 美しいぞ。ま、できたものを見てから判断してくれ」
詩織:「わかりました…」




