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最新技術の入手

 NASAから計画の承認がおり、実施する約束をしたため、レーザー核融合の最新技術と、失敗を含む実験情報、検討内容を手に入れた。

 検討内容や実験情報の量は膨大だったが、ビアンカは真剣な顔で分類していた。


 詩織:「膨大なデータですね。失敗の実験結果なんて意味があるのですか?」

 ビアンカ:「ん? 何か言ったか?」


 詩織:「失敗の実験結果や検討内容がそんなに重要なのですか?」

 ビアンカ:「失敗の実験には、失敗した原因が含まれている。同じ条件の実験をする必要がないだろ? それだけでもかなり有用だよ」


 詩織:「なるほど。失敗の実験結果は公表されることがほとんどないけど、重要なんですね」

 ビアンカ:「完全に信じることはできないがな」


 詩織:「どういうことですか?」

 ビアンカ:「実験に誤りがあるかもしれないし、再現するためには情報が足りない場合もある。論文でも再現実験を第三者が実施しても失敗することが多い」


 詩織:「論文には条件を記載していますよね? それでも失敗するのですか?」

 ビアンカ:「記載されていないノウハウなんかもあるからな。ほう。この実験は面白いな…」


 ビアンカは夢中でデータと格闘している… それをアンジェが呆れたように眺めて「詩織、ビアンカがあぁなったら、話しかけても無駄だ」と言った。

 詩織:「ビアンカがこれほど夢中になっているのを初めて見ました」

 アンジェ:「以前はいつもこんな感じだったな。データの整理をしていると言っているが、実験結果のファイルやら紙で部屋がいっぱいだった」


 詩織:「電子データじゃなかったのですか? ここでも紙にしているし…」

 アンジェ:「ビアンカはメモやら、書き込みをするから紙が多かったな。問題なのは整理済みと整理していない紙の山の違いがわからないことだな」


 詩織:「紙の山だったら、整理されていないじゃないですか?」

 アンジェ:「ビアンカの頭の中に整理されたということらしい。だから、乱雑に見えても、順番があるし、すべて覚えているから、いじると怒られる。千秋は無視して整頓していたが…」


 詩織:「この紙って、もしかしてこのままになるんじゃないですか? さすがに邪魔ですよ。どうして、仮想環境で紙なんですか? 意味ないじゃないですか? 千秋先生、ビアンカをどうにかしてください」

 千秋:「後で別部屋を作って紙もビアンカ一緒に移動させるから、今は放置しておけ。それが一番効率がいい」


 詩織:「効率? 片付けるなら今から移動させればいいじゃないですか?」

 千秋:「いや、ビアンカは考えを中断させると不機嫌になるし、研究の進捗が鈍る。だから、一段落するまで放置すべきだ」


 アンジェ:「さすが千秋。ビアンカの扱いに慣れているなぁ」

 千秋:「アンジェはビアンカと一緒で散らかす習性があるから、面倒だ」


 詩織:「アンジェの部屋を見たことがあるけど、それほど散らかっていなかったですよ」

 アンジェ:「だろ? 私は成長したのだよ」

 千秋:「詩織、騙されるな。アンジェの部屋は12存在する。興味があること毎に部屋を替えているから一つの部屋はそれほど散らかっていないんだ」


 アンジェ:「河野が私のところで手伝ってくれていたときに、分類して整理してもらっていたけど、急に『やってられない!』と言って仮想部屋を作ってくれた。実に素晴らしい! 河野の功績は筆舌に尽くし難い!」

 詩織:「仮想空間なんですから、部屋は仮想に決まっているじゃないですか?」


 アンジェ:「ま、そうなんだけど便利だぞ」

 詩織:「部屋なんて扉で繋ぐことができるし、大きくも小さくもできるでしょ? そもそもデータなんだから、琥珀に管理してもらった方が取り出すのが簡単ですよ」


 アンジェ:「私の記憶は物理的な位置で管理しているんだよ」

 詩織:「そうなんですか… 仮想空間にいるのに、3次元的ですよね」


 アンジェ:「そうか? …詩織は6本腕のローバーの操作だったり宇宙空間での動きだったり、状態?にあまり拘っていないのか?」

 詩織:「6本腕のローバーも2本は足と考えて、2本は腕と考えて、残りの2本は補助腕と考えているだけですよ。考え方を切り替えるだけだから誰でもできるでしょ?」


 アンジェ:「普通は体の形が変わることをそれほど簡単に受け入れることができないぞ。すぐに適用できたのは子供達だけだった。宇宙飛行士はかなり訓練が必要だったんだぞ」

 詩織:「仮想環境で目覚めた時は、何にもないところだったのですよ。慣れますよ」


 アンジェ:「何もない?」

 詩織:「うーん。何もないというわけじゃないですけど、私の部屋はありましたけど見た目だけだし、体がまともに動かなかったのですから、すべてが気持ち悪い状態だったのですよ」


 アンジェ:「私が仮想環境で目覚めた時は、普通に動けたし、違和感がなかったぞ」

 千秋:「それは、詩織のデータを利用していたから、体の動きに問題がない状態になっていた。それに、詩織が整えた現実と見間違うほどの環境が整っていたから、違和感がなかったんだよ」


 詩織:「私が、頑張って環境を整えた成果ですよね。次は何を作ろうかなぁ」

 千秋:「だめだ」


 詩織:「どうしてですか?」

 千秋:「光コンピュータに刷新中だ。計算リソースが足りない」


 詩織:「わかりました」

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