シロナガスクジラのオヤジ化阻止
アンジェがシロナガスクジラが4頭が連動して移動して、太陽光パネルどうしが接触しないように引っ張りながら移動するシミュレーションを行った結果を見せてくれた。
アンジェ:「これが、1万回移動した場合のシミュレーションだ。精製能力が12%低減し、太陽光パネルの破損が2%発生する」
詩織:「精製能力の低下はシロナガスクジラが1頭だけが移動した場合と比べてですか?」
アンジェ:「そうだ。太陽光パネルが繋がっている紐の長さは巻き取ったり伸ばすことで接触を回避するが、長さに限界があるため、精製対象の小惑星を捕まえることに失敗する場合がある」
詩織:「精製能力が落ちるのは痛いですね。紐をもっと伸ばすことができれば、小惑星を捕まえることの失敗を減らせるのではないですか?」
アンジェ:「紐といっても超伝導電線だから、作成にコストを考えるとこの長さが限界だ。それに長くなると、計算も難しい」
詩織:「シロナガスクジラを増やして精製能力を保つ必要がありますね」
アンジェ:「シロナガスクジラを増やすと超伝導電線も必要になる。そうすると超伝導電線が短くなり精製能力も落ちることになる」
詩織:「難しいですね… シロナガスクジラの移動の制約が少なくなればいいのですよね?」
アンジェ:「そうだが、それが難しい」
詩織:「では、シロナガスクジラのヒゲだけなら?」
アンジェ:「ヒゲだけ? ヒゲってアンカー発射装置か?」
詩織:「そうです。アンカー発射に特化したシロナガスクジラ… 砲台が何本か生えている機械がシロナガスクジラの補助をすれば、シロナガスクジラは精製能力を落とす必要がないのでは?」
アンジェ:「砲台が何本も生えている機械?」
詩織:「そうです。ウニみたいに何本もアンカー発射装置が出ている機械です」
アンジェ:「ウニ?」
ウニの絵を端末で検索してアンジェに見せた。
アンジェ:「これは生物か?」
詩織:「美味しいですよ」
アンジェ:「おいしい? これを食べるのか!?」
詩織:「ウニの中の黄色い部分を食べますけど、どの部位なんだろう? 考えたことがなかったわ。琥珀、検索して」
琥珀:「精巣または卵巣です」
詩織:「え? 精巣? 卵巣? そだったんだ… ま、美味しいからいいか」
アンジェ:「話を戻すぞ。こんなにアンカー発射装置は不要だな。だが、超伝導電線が必要なのは変わらないぞ」
詩織:「シロナガスクジラは精製するのにレーザーを使うので大量の電力が必要なのでしょ? アンカー発射装置は発射する時以外は電力が必要ないなら、超伝導電線なんて不要では?」
アンジェ:「そうだな。スーパーキャパシタがあれば電線もたいして太くする必要はない。だから、超伝導電線を利用したとしてもコストが少ない。それにアンカー発射装置が3つ程度で十分だな。それなら、数を揃えるのは難しくない。シロナガスクジラもこれで動かした方がが効率的か…」
詩織:「じゃ、名前を決めましょう」
アンジェ:「スーパーキャパシタとアンカー発射装置の機械の名前か?」
詩織:「そうです。ウニってのはちょっとですよねぇ」
アンジェ:「糸を飛ばすのだから、スパイダーでいいだろ?」
詩織:「スパイダーか… ま、いいか。じゃスパイダーを作りましょう」
アンジェ:「シミュレーションして、有用性が分かってからだな」
詩織:「わかりました」
その後、アンジェがシミュレーションすると、非常に運用性がいいみたいだ。
それに、他の化学モジュールやトリウム溶融塩炉などの移動もスパイダーで十分だということも判明した。
スパイダーのアンカー発射装置は発射する向きを調整する必要があるが、自立した機能を持たせるためにコンピュータチップを搭載するのは無駄だということで、操作は6本腕のローバーが担当する。
だから、6本腕のローバーが糸の上を移動してスパイダーを作業することになる。シミュレーションを見ていると、スパイダーより6本腕のローバーの方がクモっぽい。
名前を変更した方がいいんじゃないかなぁと思って提案したけど、もう言い慣れたから変えたくないと却下されてしまった…
ま、シロナガスクジラからヒゲがなくなって、オヤジ化を阻止できたから良しとするか。




