増員
株式会社ABからとは次回の貿易品についての整合が始まったが、株式会社AB経由で移住に関する問い合わせも来ている。
問い合わせは資産家からで、アステロイドベルトでO’Neill Cylinderを作って移住したいというというものだ。
資産家の間では情報ネットワークがあり、人工脳モデルがここを運営していることも知っているし、株式会社ABとの関係も知っているようだ。
回答に矛盾があると面倒なことになる可能性があるから、以前のアーシャさんからの問い合わせと同じ回答をしてもらった。
今後は同様の問い合わせには同じ回答を送るように指示をしたので、問い合わせはこないだろうと思っていたら、今度は人工脳モデルをこちらで稼働させて欲しいと要望が来た。
私は夕食後の報告の場で話すことにした。
詩織:「株式会社AB経由で人工脳モデルをこちらで稼働させて欲しいと要望がありました」
アンジェ:「人数は何名なんだ?」
詩織:「人数の記載はありません」
アンジェ:「そうか… NASAも私宛に増やして欲しいと要望がある」
詩織:「どうして、NASAは増やしたいのですか?」
アンジェ:「ウランを確保したいからじゃないか?」
詩織:「ということは、鉱物や探索などに詳しい人をNASAは推してくるということですね」
アンジェ:「そうなるだろうな」
詩織:「NASA側の基準はあったのでしょうか? ステファニー達は応募したのですか?」
ステファニー:「私は応募しましたが、NASA側ではアステロイドベルトで不足している技術者の増員で、対象の技術が記載されていました」
詩織:「募集要員の人数とか、応募した人の数とかわかりますか?」
ステファニー:「知らないです」
詩織:「アンジェは知っていますか?」
アンジェ:「募集は10名までだったよ。応募してきた人の数はわからないなぁ。NASA側から打診した場合もあったようだし…」
詩織:「総数がわからないのはどうしてですか? アンジェが絞ったのではないのですか?」
アンジェ:「書類選考、第一次選考は参加していない。私は第二次選考に参加したからな」
詩織:「千秋先生、ここに受け入れることができる人は何名程度ですか?」
千秋:「今、すべてを光コンピュータに置き換えようとしているところだから、今は5名だな」
詩織:「ということは、株式会社ABの一般市民は無理ですね。株式会社AB経由の受け入れは拒否したいと思いますが、いいですか?」
千秋:「そもそも受け入れたくない」
アンジェ:「NASAはどうする?」
詩織:「技術者は追加した方がいいと思います。前回と同じように、誰かが行って面談するのがいいと思いますがどうですか?」
アンジェ:「面談はいいが、私以外がいいと思うぞ」
詩織:「連続は面倒だからですか?」
アンジェ:「いいや、偏りが発生するからだな」
詩織:「では、誰がいいですか? NASAの内情を知る人がいいでしょうから、ビアンカかしら?」
ビアンカ:「私はダメだ」
詩織:「どうしてですか?」
ビアンカ:「私はNASAを休職していたとはいえ、復帰できない病状だったんだ。そういう前例があることが知れ渡ると、不治の病の人を優先してもらえると考える人が出るため、面倒なことになる」
詩織:「そうですか… では、どうしましょう」
ビアンカ:「ステファニーがいいんじゃないか?」
詩織:「推薦の理由を聞いていい?」
ビアンカ:「NASAというかアメリカはウランを手に入れたいから、鉱物関連の人材に偏るだろう。これは避けられないとすると、鉱物に知識がないと面談してもわからないだろ?」
詩織:「そうですね」
ビアンカ:「ステファニーは材料力学に精通しているから、その鉱物関連もわかるだろ?」
ステファニーがメンバを見渡した。
ステファニー:「化学系の由香か、私ですね。で、どちらが鉱物に詳しいかとなると、微妙ですがNASAの内情は私の方が詳しいでしょう」
詩織:「では、ステファニーにお願いするわ」
ステファニー:「わかりました。私たちが欲しい技術と理由を明らかにしておけば、NASAと交渉できます。どういう人材がほしいかは後で整合しましょう」
報告会は終了してオペレーションルームで作業をしていると、NASAから計画書が送付されてきた。




