やっぱり子どもじゃん
私はオペレーションルームに戻ったが、子ども達との話し合いが頭から離れない…
千秋:「詩織、難しい顔をしているが、上手く教えられなかったのか?」
詩織:「それが… 教えるじゃなくて教えられたというか…」
千秋:「ん?」
私は子ども達との会話を千秋先生に説明した。
千秋:「なるほどなぁ。私がNASAにいた2年ほどで、日本も変わった気がした。ズレるのは当然か… 重力や食事など基本的なものは保持するしかないかもしれないな」
詩織:「そうですね。最近、子ども達が義務的に夕食を摂っているような気がするんです。お腹を空いた感覚を強めた方がいいのでしょうか?」
千秋:「空腹の感覚は完全には表現できてないからな」
詩織:「どういうことですか?」
千秋:「詩織はお腹が空いたとは思うけど、放置できるだろ?」
詩織:「そうですね」
千秋:「脳はものすごくエネルギーを消費する。基礎代謝の20%から25%だ。だから、糖分の不足は脳に影響するが、人工脳モデルでは糖分の不足までは表現できていない」
詩織:「もしかして、お腹が空いても実質的な問題が発生しないから放置できるということですか? じゃ、糖分の不足で頭が働きにくいことを導入すればいいのでは?」
千秋:「そうかもしれない。糖分量の計算も導入するか… 運動との関係計算も入れておこう」
詩織:「お願いします」
気分転換かオペレーションルームに来ていたビアンカが話しかけてきた。
ビアンカ:「糖分の計算が入っていなかったからか…」
詩織:「糖分の計算が入っていなかったことで気づいたことがあるのですか?」
ビアンカ:「私はキャンデーとビスケットを常備して研究をしていたんだ。その生活に戻ってしまうのかと思ってな」
千秋:「病気をして食生活を見直したからと思っていたが、違っていたのか?」
ビアンカ:「千秋には怒られていたことを思い出したよ。私がキャンデーを食べていると必ず指摘された…」
千秋:「糖分計算を入れると、ビアンカは以前の食生活に戻ってしまうな…」
ビアンカ:「千秋には食生活のバランスが悪いと言われていたが、今は病気にならないから食生活なんてどうでもいいだろ?」
詩織:「ダメですよ。人として堕落します」
ビアンカ:「…」
千秋:「ビアンカ、私より詩織はかなり厳しいぞ」
詩織:「千秋先生、私よりしっかり管理できる琥珀に管理させますから」
千秋:「ふふっ」
ビアンカ:「…」
ちょっといじめすぎたかな…
詩織:「ビアンカ、核融合発電をすると壊れると言っていましたが、どうにかなりそうですか?」
ビアンカ:「熱で壊れることをどうにかできるといいんだけど、液体金属の合金の配合が悪いのかなぁ、今の配合ではトリチウムが取り出せるのは利点だし… いや、中性子が崩壊するまで閉じ込める方が効率がいいか…」
詩織:「千秋先生、ビアンカが考え始めちゃいましたね」
千秋:「これは、考えがまとまるまで放置するしかない。以前からそうだった」
詩織:「そうなんですか… ん? 新しく来た人たちも研究者なんですよね?」
千秋:「そうだが、それがどうした?」
詩織:「もしかして、新しく来た人たちも研究を始めたら、ビアンカみたいにのめり込む人が多いのですか?」
千秋:「私の経験から、その可能性が高いな」
詩織:「それって、子ども達の教育に悪いです!」
千秋:「詩織は、子ども達に教えられたと言っていなかったか?」
詩織:「それはそうですけど、社会とのつながりは小学生レベルと考えた方がいいと思います」
千秋:「そうか? そう考えたいだけじゃないか?」
詩織:「どういうことですか?」
千秋:「詩織は子ども達のことを子どもと考えているが、実際は十分自分の考えを持つ状態に成長している。ということは、詩織が子離れする必要があるということだな」
詩織:「そうですね…」
千秋先生との話を終えて、地球の状況を確認していると、伊織が「詩織先生、手軽に食べれる甘いものってないですか? ケーキは手軽に食べられないです」と聞いてきた。
隣にいる小織も頷いている。
詩織:「そうねぇ。キャンデー… ん? もしかしてお腹が空いているの?」
千秋先生が糖分の計算を入れたのかな?
伊織:「空いている? ちょっと違うような気がするけど…」
詩織:「ちゃんと食事を摂った方がいいわ。行くわよ」
私たちはいつも夕食を摂っているお城に転送した。
そして、琥珀にサラダとスープとカルボナーラを出してもらって、伊織と小織で食べ始めた。
すると、悠人と颯人と理人が現れた。
悠人:「あ! 僕たちも食べたい!」
颯人:「こっそり食べるなんて!」
詩織:「今後はお昼も一緒に食べましょう」
琥珀にみんなの分を用意してもらって一緒に食べた。
うーん。やっぱり子供じゃん。




