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スロナガスクジラをデコれるか?

 オペレーションルームに戻ったら、千秋先生が「詩織、どこに行っていた?」と聞かれた。


 詩織:「ビアンカのところです。最近ビアンカが引きこもっているので、何しているかなぁと思って行ったら、核融合発電の研究をしていました。千秋先生、知っていました?」

 千秋:「もちろん知っている。必要だからな」


 詩織:「核融合発電は必要なのですか?」

 千秋:「そうだ。ここには石油がない。それにトリウムもウランも貴重だからな。地球で問題が発生している」


 河野:「地球は石油の値段が高騰していますよ」

 詩織:「どうしても必要なら、買うしかないでしょ? この1年で石油は20%の上昇ですけど買うしかないですね。電気は石油を使う場合が多いし、物流も石油を使いますね。すべてのものの値段が上がります。このままではハイパーインフレの国がたくさん出てくると思います」


 近くで話を聞いていた伊織が不思議な顔をした。

 詩織:「伊織、何か変?」

 伊織:「『どうしても必要』というのがわからないのです」

 ん? お金は知っているよね?


 詩織:「水や食糧は生きていくには必要じゃない? 必需品はお金を積んでも買うしかないでしょ?」

 伊織が考えている横で、小織は首を傾げている。


 詩織:「伊織、もしかして、水や食糧が『どうしても必要』とは考えられないということ?」

 伊織:「…はい」


 河野:「ふふ。『パンがなければケーキを食べればいいじゃない』ですね」

 伊織も小織も頷いている。


 詩織:「うーん。これはまずいですね。早急にどうにかしないと…」

 伊織:「ケーキはまずくないですよ」


 千秋:「はぁ… 詩織、教育が必要だが後でしとけ」

 詩織:「わかりました」


 千秋:「明人君が言った、石油の値段が上がっていることに関連するが、油田の権益をめぐってパイプラインの破壊されたことから、戦争に発展した」

 千秋先生が地球のニュース映像を見せてくれた。

 詩織:「さらに石油の値段が上がりますね。生産にも影響がでるでしょうし、戦争だと物流も止まりますね… この戦争は拡大しますか?」


 千秋:「拡大しそうだ」

 詩織:「地球から買う生産設備がなくなったら、アメリカ株でも買いましょうかね」


 河野:「どうしてアメリカ株なんですか?」

 詩織:「アメリカって軍事力が強くて、食糧生産国で工業国で島国ですよ。これだけ揃っているのはアメリカ以外にありますか?」


 河野:「軍事力が強いなんかはいいですけど、島国って… アメリカは大陸でしょ?」

 詩織:「北はカナダで南はメキシコですけど、大きな島国とみなせるでしょ? 引きこもりできるなんて素晴らしい立地です。それより、私たちの立ち位置ですよね…」


 千秋:「そうだ」

 詩織:「今後、次の貿易がなくても私たちは問題ないとは思いますけど、持続できますか?」


 千秋:「100年ぐらいは大丈夫だと思うが、持続するには、ここに適合した文明形体に変更する必要があるだろう」

 詩織:「千秋先生にはビジョンがあるんですか?」


 千秋:「ビジョンというほどじゃないが、最終的には核融合をエネルギーの主体にして、構造物などはすべて炭素を主体にすべきかと思う。核分裂はいずれ利用できなくなる」

 詩織:「どうして核融合なんですか?」


 千秋:「ウランやトリウムなど鉄より重いものは少ないからだ」

 詩織:「確かに火星でもなかなか見つからなかったので、少ないとは思います。ここでもトリウムが初期にみつかりましたけど、その後はほとんど見つかっていませんね。でも、どうしてですか?」


 千秋:「それは、核融合が関係している」

 詩織:「核融合が?」


 千秋:「私もビアンカに教えてもらったのだが… 核融合は水素同士がぶつかっていることは知っているな?」

 詩織:「はい」


 千秋:「水素と水素がぶつかってヘリウムになる。その時にエネルギーが発生する。最初は水素と水素ばかりがぶつかっているが、ヘリウムとぶつかることが発生する」

 詩織:「そうやって、大きな元素が出来上がるのですね… ということは大きな元素は作られにくいということですね」


 千秋:「そうだ。だが、いつまでも大きい元素同士がぶつかれるわけじゃない。限界が来る。その限界が鉄だ。だから、鉄より大きい元素は見つかりにくい」

 詩織:「なるほど… 持続するには鉄より軽い元素を主体にする必要があるのですね。それで炭素ですか? 炭素と言えばダイヤモンドですね。スロナガスクジラがスワロフスキーでデコレーションしたようにキラキラひかるようになるのかしら…」


 千秋:「ダイヤモンドは硬いが脆い。そうはならないだろう」

 詩織:「残念…」


 千秋:「そんなことより、子ども達を教育しておけ」

 詩織:「わかりました。伊織、みんなを教室に集めて」


 伊織:「わかったわ。でも、子ども達って… 子ども達って歳じゃないと思うけど…」

 詩織:「子どもって言われて怒るのは、子どもの証拠よ」

 伊織は不服そうにみんなを教室に移動させた。

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