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脳モデルの実験

 大学で前期試験が近づいていきた。私は去年の後期試験は意識不明で受けていないので挽回するためにも頑張らないと。ということで、試験に全力でとりかかり、しばらくニャン吉との癒しは封印。


 封印のおかげで、意識不明で試験を受けられなかった後期試験分も取り返した。ということで、ニャン吉の癒しが必要なので生命科学室に直行。


 ニャン吉のお迎え! やっぱかわいい!

「ニャン吉、来たよー。アンドレさん、こんにちは」


「詩織さん。こんにちは」

「アンドレさん、ニャン吉の調子はどうですか?」


「詩織さんにはどう見える?」

「変わりないと思いますが、その言い方だと何か変なんですか?」


「ちょっとね」

「なんですか? 気になるじゃないですか!」


「…うーん。かなり賢くなったな。前はお腹が減ると近寄ってきて催促してたけど、餌の場所まで私を移動させようとするようになって、今では、自分で餌を入れている扉を開けて餌の袋を手で指すようになった」

「それぐらいはする猫はいますよ。 賢いのはいいことじゃないですか?」


「光量子コンピュータへの移行が原因ならよくない。 あ、そうそう、橋田さんのところに寄ってね。 メタバースとの接続が始まっているから」

「わかりました」


 私は注意深くニャン吉の動きを観察した。 ニャン吉を呼んでみたり、おもちゃで遊ばせたりしたが、特に変わりはないので、分析室に移動した。


「橋田さん。こんにちは」

「やぁ。詩織さん。 やっときたね」


「試験だったんですよ」

「そうだね。学生だもんね。僕は試験勉強はしなかったから…」

「それで卒業できたのですか?」

「トップ3で卒業したよ」


「橋田さんって賢いのですね」

「学校の試験は答えがあるからね。 僕は答えがないものは不得意なんだ」


「答えがない?」

「学校の試験って答えがあるじゃない? 答えがわかっていない問題なんてでないでしょ?」


「そうですね」

「データの処理みたいなものはどうしたいのかという答えがある作業はいいんだけど、メタバースとの接続みたいに、誰も答えを知らない作業もさせられるでしょ? そういうのが不得意なんだよ」


「誰も答えを知らない方が面白いじゃないですか?」

「詩織さんは研究向きだね。 僕は向かない。 で、今日はメタバースとの接続を見て欲しいんだ。 それで前みたいにアイデアを出してもらえるとありがたい」


「技術的なことわからないので、思ったことしか言えないですよ」

「それでいい!」

「はぁ。わかりました」


 橋田さんはご機嫌で端末を操作してメタバースの画面を表示した。


「詩織さん、さぁ! 見て」


 アバターが立っていたが、たまに右手を痙攣したように動かしたりしている。


「なんですか? このピクピク動いているのは」


「大脳だけでなく、小脳、脳幹、海馬もあるモデルと接続したら、やっと動くようになったんだよ」

「動くって… 動いていることには変わりがないですけど、ピクピクしているだけじゃないですか?」


「大脳は活動しているのですか?」

「しているよ。アバターの前に他の人を横切らせると、活動量が増えるでしょ?」


「この活動量は人の場合と同量程度ですか?」

「かなりすくない」


「じゃ、見えているだけで感情がないんですね」

「感情を司る脳幹はあるよ」


「脳幹はあっても、感情を揺さぶる状況は起きていないですよね?」

「そりゃね。メタバース内では感情を揺さぶる状況って難しいよ」


「痛いとかって、メタバース内で表現できないのですか?」

「うーん。すぐにはできないね」


「じゃ、映像を見せるとか、音楽を流すはできますよね? 外部刺激が足りなさすぎるような気がします」

「やってみるよ。じゃ、ロックを流すよ」とPCを操作した。


 音楽が流れ始める。アバターの痙攣?


「痙攣しましたね。もうちょっとしたらポゴダンスをするんじゃないですか?」

「ポゴダンス? なにそれ?」

「ライブなんかで垂直にジャンプするやつですよ」

「あぁ。あれね」

「ところで、聞いたことがあるんですが、バンド名はなんですか?」

「Queenだよ。曲名はWe Will Rock Youだよ。ロックだからこれにしてみた」

「へぇ。最初はこのぐらいのテンポがいいかもしれませんね。 あまりハードなのはやめてくださいね。 子供はうるさいって反応になることが多いので。 変化があったらまた教えてください」

「わかったよ」

今までは、現実のいろいろな研究が見えている内容を基に書いてきましたが、これからは仮想技術の展開になってきます。

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