火星開発の放棄
私たちが送信した火星の情報は地球で大きなニュースになった。
NASAの火星ベースが致命的な影響を受けており、中国に非難が集中した。
しかし、中国は『火星の中国ベースの移住者が独断で実施したことであり、この独断の行動は中国への謀反である』と完全にハシゴを外した。
多くの有識者は、NASAの火星ベースが稼働していないことが明確に確認できたため、移住者の生存は絶望的であると述べた。また、火星への救援ロケットは火星の中国ベースの攻撃を受ける危険性があるとの見解が多い。
そのため、NASAは火星への救援ロケットの派遣計画を中止し、火星の開発を放棄すると発表した。
詩織:「はぁ。毎日すごい量のニュースですね…」
千秋:「そうだな」
詩織:「火星の開発は放棄して問題ないのですか?」
千秋:「さぁな」
アンジェ:「火星にロケットを送る余裕がないというのが本音みたいだぞ」
詩織:「そうなのですか?」
アンジェ:「アメリカでは一般市民の仕事が減り、デモが頻発している。これを抑えるため、支援を多発しているため、経済が疲弊している」
詩織:「アメリカでは工場も増えているし、O’Neill Cylinderの建設も行なっていますよね? 景気はいいのでは?」
アンジェ:「いや、工場では人はほとんど働いていない。それに物流でも人が働いていない。工場が増えても失業が増えているよ。O’Neill Cylinderもローバーで可能だからな」
私は失業率の推移を見た。
詩織:「失業率が増えていますね… O’Neill Cylinderの開発は各国が出していますが、原資はほとんどが国債ですね。人が働かなくても工場が稼働してO’Neill Cylinderの開発ができますね。これでは人を雇う必要がないので、資本家だけが潤う状況ですね。これでは、景気がわるくなりますね。人が働く産業が生まれなければ経済が破綻しませんか?」
アンジェ:「人が働かなければならない産業は非常に限られている。その領域も減少速度が速い」
詩織:「そうですね。ここでの作業を見ていれば、人でなければできない作業ってないですね。人でなければならない産業ってなんだろう? 詰んでいませんか?」
アンジェ:「接客業は人が行うかもしれないが、対象の人が失業している状態では収入が得られないから意味がないな」
詩織:「富の再配分が必要ですね… でも、O’Neill Cylinderの開発って国債で利益を産まないですよね?」
河野:「O’Neill Cylinder内にできる居住空間を売ればどうですか?」
詩織:「宇宙に土地を作って、その土地や建物を販売するのですか?」
河野:「そうです。固定資産税を取れば国は儲かるでしょうし、電気、水道のインフラ、食糧などで経済圏ができるのでは?」
詩織:「O’Neill Cylinderに住む人はどうやってお金を稼ぐのですか?」
河野:「農業とかの仕事をして… それもロボットができるのですね。仕事がないということですか…」
詩織:「はい。仕事がないですね」
河野:「うーん。では、ロボットではなく人に作業させるでは?」
詩織:「ロボットの方がコストが安いのにわざわざ人に作業をさせるのですか? 最初から人にお金を渡した方が安上がりでは?」
河野:「それって、仕事をせずに生活できる世界の到来ですか… 何もすることがないって、楽しくなさそうですね」
千秋:「ロボットの方がコストは安いが、何の仕事もしない80億の人を養うことはできないと思うぞ」
詩織:「そうですね… 今後はどうなってしまうのでしょう?」
千秋:「さぁな。詩織、できるだけ多くの生産設備を購入するようにしよう」
河野:「地球に仕事を与えることができますね」
詩織:「河野さん、千秋先生の意図は違うと思いますよ」
河野:「どういうことですか?」
詩織:「アステロイドベルトが全く地球に依存しない完全な自立を目指しているからだと思います」
河野:「はい、わかりますけど…」
詩織:「うーん。わかっていないですね」
河野:「どういうことですか?」
詩織:「…地球の文明があるうちに、確保しないと危険という意味ですよね」
千秋:「そこまではっきり言っていないがな」
河野さんがショックを受けているけど、無視して、千秋先生と足りない生産設備のリストアップを開始した。




