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スカイプラットフォーム

 私が千秋先生がくれた資料に目を通す作業に戻った。

 その中に、NASAの計画もあった。


 O’Neill Cylinderを作るには、火星の鉄などの資源を利用できるが地球からも人や資材を多量に送る必要がある。今までのロケットでは費用がかかりすぎる。そのため、スカイプラットフォームを作り、そこからロケットを飛ばすらしい。

 このスカイプラットフォームって風船? しかも巨大で上部は平だ。


「ビアンカ、このスカイプラットフォームというものを作っているらしいけど、知ってる?」

 私はビアンカに資料を見せた。

「これは計画を見たことがある。巨大な風船の塊だな。大気が薄いところからロケットを打ち上げるから、燃料が少なくて済む」


「スカイプラットフォームからロケットを打ち上げるとありますけど… 風船ですよね? 大丈夫ですか? 燃えませんか?」

「風船だが、ロケットの発射台は耐熱の床で燃えないようにしている」


「そうかもしれないですけど…」

「それより、私が知っている方法は2万メートルにスカイプラットフォームを配置するが、そこまで荷物をどうやって上げるかが問題だったんだが… 荷物も気球で運ぶのか。なるほど」


「どうして気球を使うのですか? なんか時代が逆行しているような気がします。飛行機で飛べば簡単じゃないですか?」

「飛行機? 飛行機ってジェットエンジンか?」


「そうですよ」

「酸素を積んだジェットエンジンなら可能かもしれないが… それなら大気圏は地球の酸素を使って、酸素が少なくなれば酸素を供給して飛ぶ飛行機を作れば宇宙まで行けるぞ」


「酸素を積む?」

 私がわかっていないことを河野さんが気づいて話に入ってきた。

「詩織さん、ジェットエンジンは大気中の酸素を利用して飛びます。上空は空気が薄く酸素が少ないのでジェットエンジンでは1万メートルほどまでしか行けません」

「あ、高いと空気が薄いですね。そんな空気の薄い高いところまで風船って飛ぶことができるのですか?」


「3万メートルぐらいまで可能ですよ。ロックーンは気球でロケットを上空まで上げて、そこから発射するロケットです。燃料が節約できる構想です」

「へぇ。面白い方法ですね。高いところに上げるのにエネルギーが必要なんですよね」


「そうですよ」

「ん? 飛ばすのがエネルギーがかかるなら、飛ばすのじゃなくて引けば?」


「引く?」

「そうです。人工衛星から宇宙に引っぱって荷物を宇宙にあげることはできますか?」


「引っ張り上げる? 宇宙から?」

「そうです。人工衛星って落ちてこないじゃないですか? だったら引っ張るというのもありかなぁっと思って。人工衛星からワイヤーをおろしてそれに荷物を引っ掛けてモーターで宇宙に上げたらいいんじゃないかと。そうしたら、電気だから太陽光パネルで可能でしょ?」


「静止衛星からワイヤーを下ろして引っ掛けるですか? そんな長くて強度の高いワイヤー作れないですよ。切れてしまいます」

「ワイヤーが作れないのか… 無理なんですね」


「詩織、そうとは限らないぞ。NASAには似た考えの人もいるよ。スカイフックと言う。数百メートルの長い棒をくるくると回す方法だ。その棒の先端にフックがついていて、そのフックで飛行機をひっかける。棒はくるくると回っているので宇宙に放り上げられるというものだ」


「え! そんな乱暴な方法なんですか? 中の人は死んじゃいませんか?」

「そうかもな。それより、飛行機にフックをかけるのかがかなり難しいから実現しないだろう。でも、月にロケットを移動させる場合の加速または減速に利用する案は実用的だぞ」


「いろんなことを考える人がいるのですね。じゃ、地球と火星の移動もそのスカイフック?というのを使えば安上がりになりますね」

「かなり巨大になるから、実現したとしてもかなり先だな」


「そうなんですか… 残念です。でも、NASAには色々なことを考える人がいますねぇ。すごいです」

「いろんなことを考えるのは詩織さんですよ」と河野さんが呆れたように言った。


「え? そうですか? 押してもダメなら引いてみなと言うぐらいですから、飛ばすのがダメなら引くと考えるのが普通じゃないですか?」

「普通じゃないです…」


 私はビアンカに向かって、「このスカイプラットフォームが完成すれば、O’Neill Cylinderの開発も加速しますね」と言った。

「そうだな」


「このスカイプラットフォームを火星に作りますか?」

「火星はもともと大気が薄いので意味がない」


「あ、そうか大気が薄いんだ… 忘れていました」

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