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地球(テラ)へ…

 プラズマエンジンのロケットは問題なく飛行を続けている。ローバーをフォボスに投げつけたときは1週間かかったが、1日で到達する。そして、フォボスの周りを回ることで減速し、戻ってくる。


 兎:「ビアンカ、フォボスを回るスイングバイで減速するのはどうしてですか?」

 ビアンカ:「火星に早く帰ってきても意味がないだろ?」


 兎:「早い方がいいと思いますけど…」

 ビアンカ:「ロケットはプラズマエンジンが6つの構成だ。あと5つは今日から作る計画だから、早く帰ってきても価値がないだろ?」


 兎:「高出力の実験になりませんか?」

 ビアンカ:「プラズマ作成部分の特性は知り尽くしているので問題ないよ。それに、火星で作成したプラズマモジュールは鉱物の精製でも運用しているので問題ない」


 兎:「あのう。どうしてプラズマエンジンは6つなんですか?」

 ビアンカ:「壊れたときの保険としての意味合いあ大きいな」


 兎:「壊れないように作るものではないのですか?」

 ビアンカ:「壊れないように作るのは理想だが、壊れる可能性は0にはできないだろ?」


 兎:「そうですね」

 ビアンカ:「壊れることを前提にすべきだ」


 兎:「うーん。壊れることが前提ですか… あれ? そう言えば、以前に千秋先生にGoogleのサーバは落ちても問題ないという話を聞いたような気がしますが、同じ考え方ですかね?」

 千秋先生が操作している端末からゆっくり顔を上げて私の顔を見た。千秋先生はびっくりしている? 怒っている? どっち? どうして? 何か悪いこと言った?


 千秋:「兎、城に移動するぞ。アンジェ、明人君、神木君もだ」

 兎:「わかりました」


 私は怒られるの? 何かした? と思いながら城に移動した。


 千秋:「スクリーンを張った」

 兎:「千秋先生、何か怒らせることを言いました?」


 千秋:「違う! 詩織はGoogleの話をいつ誰に聞いた?」

 兎:「いつ? うーん。いつだろう? 覚えていないです… でも千秋先生から聞いたと思います」


 千秋:「思い出せ!」

 河野:「千秋さん、この話は重要なんですか?」


 千秋:「あぁ。ものすごく重要だが、詩織の回答を聞かないと言えない」

 え? 私が思い出すしかないの?


 兎:「河野さんもいたような気がします… あれ? アンジェもいたかな?」

 千秋:「オリジナルの詩織に聞いたということはないか?」


 兎:「オリジナルの私と? 猫さんとはこんな話はしないわ」

 千秋:「詩織、Googleの話をできるだけ詳しく言ってみろ」


 兎:「え? 検索は多くのサーバで運用しているから、おそらく今もどこかのサーバが壊れている。だから、落ちることを前提とした設計になっているという話ですよね?」

 千秋:「聞いた場所は?」


 兎:「場所? うーん。生命科学室かな?」

 千秋:「…」


 河野:「千秋さん、この話がどうしたのですか? わからないです」

 アンジェは小さく『あ!』と声を言うと、考え込んでしまった。


 兎:「え? アンジェも何かわかったの? 神木さん、河野さんと私だけ?」

 河野:「そうみたいですね…」


 千秋:「詩織、カインができた経緯は知っているか?」

 兎:「カイン? カインはアンジェが作った… あれ? うーん。違うわね… アダムとエバが作った? そんな気がする」


 あれ? 河野さんも考え始めた…

 私だけわかってないの!?


 兎:「千秋先生、教えてください! 何が変なこと言いました?」

 神木:「詩織さん、詩織さんが言ったカインはアダムとエバが作りました」


 全員が神木さんを見た。

 千秋:「神木君、『カインはアダムとエバが作った』と言ったが、思うじゃなく断定かい?」


 神木:「事実だと思います。カインとのつながりがあると思います。いえ、正確ではないですね。共有があったでしょうか…」

 千秋:「共有? 詩織はどうだ? 神木君と同じか?」


 兎:「うーん。どうだろう。つながり? 共有? あるような、ないような…」

 千秋:「否定はしないんだな…」


 兎:「千秋先生、教えてくださいよ。気持ち悪いです」

 千秋:「…はぁ。しかたないか… Googleの話を『猫』から聞いていないなら、『兎』は知らないことなんだ」


 兎:「え? はい? 知っていますよ」

 千秋:「だから、混乱している」


 河野:「兎さん、Googleの話は『猫さん』すなわち、オリジナルの詩織さんに対して、『現実空間』で話したことなんです。それを、『兎さん』はGoogleの話を『猫さん』から聞いていない。しかも、カインの生い立ちを知っている。どちらも『兎さん』は知らないはずです。それに、神木さんもカインの生い立ちを知っている… 知らないことを『なぜか知っている』ことが問題なんです」

 兎:「え? 問題と言われても…」


 千秋:「地球の兎、地球の神木君も知っているかを確かめる必要があるが、どうやって確かめるかな…」

 兎:「ふふ。地球に行きましょう! 地球に行って直接聞きましょう! 貿易用のロケットで行けるでしょ? 『地球テラへ…』です」


 みんなびっくりしているけど、どうして?

 千秋:「本気か?」

 兎:「本気です」

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