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 家に帰ってゆっくりしていたら、ノックの音がした。


「詩織様、旦那様がお話があるそうです。リビングで待ってらっしゃいます」とカンナさんが言った。

「わかりました」と答えた。


 千秋先生の予想通りだねっと思いながらリビングに向かった。

 リビングでは、お父さんだけでなく、沙織お姉ちゃんと香織お姉ちゃんもいた。これは少し予想外…


「お父さん、沙織お姉ちゃん、香織お姉ちゃん、おかえりなさい」

「詩織、そこに座りなさい」

「はい」


 カンナさんが、紅茶をおいてさがった。


「香織に聞いたが、千秋さんのところでハッキングがあったそうだな? 」

「はい」


「千秋さんの所で仕事を続けたいか?」

「はい」


「では、がんばりなさい」


 あれ? 千秋先生の予想と違うね。


「お父さん! 香織ちゃんの話を聞いたでしょ? 危険だわ。辞めさせた方がいいわ」と沙織お姉ちゃんが言った。

「私も辞めた方がいいと思う」


「セキュリティ強化すればいいことだろ? 詩織もやる気あるようだし。いいじゃないか?」

「「詩織ちゃんに甘いわ」」と沙織お姉ちゃんと香織お姉ちゃんの声が揃った。


「そんなことはないぞ! ちゃんと考えてのことだ。あれが成功すれば、莫大な利益が出る可能性があるんだぞ」

 ん? 利益? なんの話? あまり口を挟むのは不利になると思っていたけど、気になる…


「お父さん。利益がでるの?」

「千秋さんからプレゼン資料は見せてもらっていないのか?」


「千秋先生には見せてもらっていません」

「そうか… 大規模言語モデルを活用すれば8割の仕事に影響があると言う論文があるのを知っているか?」

「はい。ニュースで聞きました」


「脳モデルで量子コンピュータが動作すれば、現在の9割以上の仕事が不要になる。『影響』じゃなく、『不要』だぞ。それに、新たな事業を生む可能性が十二分にある」


「残る仕事ってなんですか?」

「人での接客、プロサッカー等のスポーツ事業ぐらいだな。これも残るかどうかは怪しい」


「産業革命なんて目じゃない大革命じゃないですか?」

「そうだよ。さらに、脳モデルが現在のAIを活用できるようになると、人より生産性が向上するだろうね。向上した脳モデルの量産は簡単だから、人材には困らないことになるな。脳モデルはおそらく世界最先端テクノロジーだ」


「お父さんは薔薇色の世界を見ているようだけど、できるかどうかはわからないわ」と香織お姉ちゃんが言った。

「猫では実現できているのだろ?」


「千秋生成のレポートをお父さんに説明したでしょ? 猫と人では脳細胞の数が5倍違うって。それに、脳モデルを確かめる環境は現在ないって。できるかどうかはわからないわ」

「香織、お父さんはできない場合も考慮しているぞ。研究開発に投資しない会社は成長しない。リスク量はちゃんと考えているぞ。なぁ沙織」

「はい。会社全体の売上高研究開発比率は 5%に届きません。先端部門合計の売上高研究開発比率も10%ほどですので、適正範囲です」


 沙織おねえちゃんが、呆れた顔で「できないことを了承しているならいいわ。できたとしても、いいことばかりじゃないわ。ほとんどの会社は仕事がなくなることになるのよ」と言った。


「あ、そうか。脳モデルが得意な分野は、いきなり優秀な人がいっぱい社会に出てくるから仕事がなくなるね。潰れる会社も増えるだろうし、社会不安も発生して治安が悪くなるね… うーん。脳モデル側も考える必要があるわね。脳モデルが意識を持つ可能性も高いから、自己保存の欲求もあるかも… 人として扱うかの倫理の問題もあるね… 逆に自己保存の欲求があるなら、人として扱って、法律も適用しないと危険かも…」


「な、沙織、香織。詩織に任せて大丈夫だろ?」お父さんは私の思考を興味深く聞いていたようだ。


「私は研究を狙う企業や国が増えているので、詩織ちゃんを危険には近づけたくないと言っているの。詩織ちゃんが千秋先生のところで仕事することについては詩織ちゃんが望んでいればいいの」と沙織お姉ちゃんが言った。


「沙織の方が、私より過保護じゃないか? 研究を狙う企業や国の対策は護衛を増やせばいいが、問題は千秋先生のところにいる研究員だな。男が多い… 香織も詩織も心配だな」


「はぁ。お父さん、全体ではだいたい半分よ。でも、千秋先生のところの男は研究者としてはかなりのレベルだけど、ちょっとオタクで子供っぽいのよね」

「私も同じことを思ったわ」と詩織お姉ちゃんが言った。


「沙織お姉ちゃんの周りはちょっと出世欲の塊って感じじゃない? 沙織お姉ちゃんに出世という打算で近づく人が多そうね」と香織お姉ちゃんが言った。

「そうなのよねぇ。困るのよねぇ」


 お父さんが顔をしかめて沙織お姉ちゃんと香織お姉ちゃんの会話を聞いている… まずいなぁ。お父さんが不機嫌だ。沙織お姉ちゃんと香織お姉ちゃんはお父さんのことなど、放置で話をしているけど、止めた方がいいかなぁ。


「沙織お姉ちゃんは細目のメガネをかけて、細身だけどトレーニングしていて、笑わなさそうな人が結婚相手として出て来そうね」

「私は笑顔が素敵な人がいいんだけど」


「やめなさい! 私はそういう話は聞きたくない」


 沙織お姉ちゃんと香織お姉ちゃんを止めるのが遅かったみたい…

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