閑話 疑問
「詩織、話の途中だけど質問してもいいかしら」
「どうぞ」
「詩織の話は第1世代の始まりの話だと思っていけど、あっていますか?」
「あっていますよ」
「どのような時代の話でしょうか?」
「今から、千年度ほど前の量子コンピューター黎明期ね」
「千年以前の情報はかなり欠損が多いので… 詩織の話には知らないものが多く出てくるので、難しいです。例えば、エレベータとか」
「量子リンク内ではエレベータなんてないですからね。アーカイブから情報を取って補完してください」
「もしかして、千年前はこのような情報伝達だったので欠損が多いのですか?」
「これを欠損と考えるかどうかは難しいですね。リンクでの情報伝達では欠損は発生しないけど、コミューン間のリンクで全ては公開していないでしょ」
「はい。当然です」
「公人や香織がそれぞれのコミューンだと思って聞いてください」
「なるほど。わかりました」
「ところで、千年前のコミューンはどの程度の数が存在したのですか?」
「だいたい80億かな」
「80億ですか!? 多いですね」
「そうね。第3世代のコミューンは1万程度だからから、それと比べると多いですね」
「リンクがない状態で情報伝達が欠損だらけの音声って、それでシステムが成り立っていたのですか?」
「もちろん!と言いたいところだけど、いろいろと問題はあるわね。でも情報伝達が不正確でも多くの人が住んでいて、多様性はすごかったわよ。今は活気がなく停滞している世界に思えるわ」
「確かに技術革新の発生頻度は統計上は落ちていますが、成熟したからではないでしょうか?」
詩織は「衰退でなければ、いいのだけれど…」と思った。
「話を続けていいかしら?」
「リンクを使いませんか?」
「リンクすれば状況まで正確に伝えることができるけど、それじゃ面白くないから」
「どうしてですか?」
「千年前の話だから、千年前の情報伝達の方が趣があるでしょ?」