兎も化け物?
1日しか経っていないのに、レポートはイギリスのニュースでスクープとして取り上げられた。
すると、故障しているローバーが修繕されることなく運用されていることなどからレポートは正しいのではないか?とか、レポートはフェイクだなどの議論がネット上で渦巻いた。
ネットでの盛り上がりもあって、アメリカでも日本でもニュースに取り上げられた。
レポートはフェイクであり、中国は火星ベースでの運用に問題はないとの見解を公開した。
兎:「中国は問題ないと言われれば、どうしようもないですね」
千秋:「そんなことより、フォボス着陸の準備だ」
兎:「はい。今日、5台分のローバーの部品と燃料のメタンをスピンローンチで打ち上げます。本当に、ローバーを衛星に落として壊れないのですか? 宇宙船から飛ばすのでしょ?」
千秋:「あぁ。重力が地球の1/1000だ。叩きつけられることがないから壊れない。当たりどころが悪くて壊れても修理部品も一緒に送るので問題ない」
兎:「なんか大雑把ですね」
千秋:「まぁな」
河野:「兎さん、このローバーは100%火星産でできているのですよ。すごいことなんですよ」
兎:「はい。知っていますよ」
河野:「えー! わかってないでしょ。100%火星産ですよ! その火星産のローバーで別の衛星の開拓を行うのですよ! 宇宙開拓史に残ることなんですよ!」
兎:「はい…」
千秋:「明人君、兎に説明しても無駄だ」
河野:「…」
ごめんなさい。わかりません。
だって、ローバーはここで作るのは当たり前になっているし、コンピュータのチップも宇宙船で作ることが当たり前になっているんだもの…
それに、スピンローンチも失敗しない。アルジャーノンが優秀だから任せておけば問題ないんだよねぇ。
兎:「フォボスを観察して、何かわかったことがありますか?」
河野:「ガンマ線中性子線分光計の結果から考えると、太陽系の外側の小惑星の可能性があります」
兎:「外側?」
河野:「木星より外側です」
兎:「へぇ。そんな遠くから来たのですね」
河野:「可能性ですよ」
兎:「河野さんって色々詳しいですね」
河野:「わたしなんて、すごくないですよ。千秋さん、アンジェ、ビアンカは私から見て化け物に見えるぐらい詳しいですよ。天体望遠鏡が趣味な人程度ですよ」
そんなことはないと思うけど…
兎:「そういえば、アンジェと作っていた天体観測望遠鏡ってできたのですか?」
河野:「最終調整をしているところです。出来上がったら衛星としたいのですけど、いいですか?」
兎:「衛星に? ロケットから使った方が便利じゃないのですか?」
河野:「このロケットは静止させているので、星の観察には不向きなんです」
兎:「儲けがでるならいいですよ」
河野:「儲け?」
兎:「琥珀、天体望遠鏡を持っている人はどのくらいいるの?」
琥珀が現れた。
琥珀:「正確な統計はありません。世界で30万人から50万人と言われています」
兎:「天体望遠鏡の出荷は増えている?」
琥珀:「年平均成長率は5.8%と推定されています」
兎:「そっか… 天体望遠鏡を持っている人向けだけだとちょっと少ないわね」
河野:「ダメですか?」
兎:「そんなことはないですよ。固定客の量を知りたかっただけですから。綺麗な天体画像が撮れるのでしょ? 画像はないのですか?」
河野:「調整中なのでもっと良くなると思いますが…」
河野さんが端末を操作して、天の川の画像を表示してくれた。
兎:「きれいですね… これは売れるわ」
河野:「売れる? よくある画像ですよ」
兎:「琥珀、夜空を見上げた時にこの画像が見えたように加工して」
周りが星空に包まれた。
兎:「琥珀、地面は草原のようにして、少し離れた場所に木を配置して」
地面が少しはっきりしたので安心感が出た。
兎:「木をもう少しの離れた位置に変更して、倍量にして。 もう少し増やして… いいわ。 どう?河野さん。これで売れるんじゃない? 火星の地表からの映像やここからの映像も増やせばどうかしら?」
河野:「もしかして、仮想現実のアプリで儲けるのですか!?」
兎:「学校で採用できるだろうし、儲かるでしょ?」
河野:「はぁ。兎さんも化け物でした…」




