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お花見

 火星に来た宇宙飛行士は火星でのミッションを終了し、帰っていった。

 特に関わりもなかったので、感慨も何もなし。


 ケーキやお茶は地球の私?兎?が調整しているので、ここではそのまま再現するだけだ。宇治抹茶のスポンジに小豆クリームで桜色のモンブランが美味しそうだった。

 そうだ、桜満開のお花見だ。


 私はみんなを招いてお茶会を開く。場所は森だ。

 集まった、子供達を含めみんな満開の桜に圧倒されている。


「どう? 満開の桜は」

「そうだな、桜はいいねぇ」と千秋先生が言うと、子供達も頷く。

「ほう。これはすごいな。さすが仮想世界だ」とビアンカが言った。


「え? これ、私の家の庭の木を再現しているのよ」

「そうなのか? これは現実にあるのか?」


「そうよ。毎年咲くわ。私は花粉症だから、花見はできなかったけど、仮想世界に花粉はないから、問題なしよ」

「花粉症? ブタクサか?」


「ブタクサ? 日本じゃ杉や檜の花粉症の人が多いわね。私は杉ね。桜の季節は杉がピークだから…。 ま、みんな好きに座って、お弁当を食べて」

 子供達や千秋先生が茣蓙に座ったが、ビアンカやアンジェやロキ達は茣蓙なんて初めてみたいでキョロキョロしていた。


 ビアンカがテーブルにしないか?というが、無視!

 と言っても、茣蓙だけだと座りにくいのでクッションを出した。


 いつの間にか、千秋先生がビールを飲んでいる。

「千秋先生、ビールなんて作ったの?」

「あぁ。ビールの他にもワイン、シャンパン、日本酒なんかもあるぞ」


「千秋先生って、お酒を飲むイメージがなかったわ」

「そうか? 普通に飲むぞ。兎は飲まないのか?」


「私? 20歳でないとお酒はダメですよ」

「20歳は超えているだろ? この酒のレシピは地球の兎だぞ。地球の兎は飲んだことがなかったから、私が調整したがな」


「そっか、20歳は超えているのか… じゃ、少しだけ飲んでみる」とビールを口にした。

 苦いわね… でも、料理には合うかも。

「えー! 私も飲んでみたい」と伊織が言った。


「子供はダメよ」

「仮想世界なんだから問題ないでしょ?」

「ダメ!」


 拗ねている伊織をよそに、千秋先生に話しかける。

「私が20歳を超えているように、地球も変わった? 人工脳モデルはどう認識されているの?」

「一般には人工脳モデルの神木君は忘れ去られているな。アルジャーノンは色々と展開している。アルジャーノンは人工脳モデルの一部を使っているが、知られていないからな」


「アルジャーノンがどう利用されているのですか?」

「自動運転、工場の作業者、介護と様々だ」


「じゃ、人手不足は解消ですね」

「自動運転や工場は自動制御が進んでいたので、一気に変革されたが、介護はロボットが少ないのでまだまだだな。だが、人手不足は急速に改善したが、社会治安が悪くなった」


「どうしてですか?」

「アルジャーノンは24時間働くことができる。人より安価だ。仕事はアルジャーノンが行うと、職につけない労働者が増えた。日本での失業率は6%を超えた。失業者が増えれば治安が悪くなる。企業の税率を上げて社会保障を増やすことでバランスをとっている状態だ」


「海外はどうなんですか?」

「海外か… 東南アジア、インドの経済成長は止まったと言っていい」


「どうしてですか?」

「最大の市場のアメリカに工場を作って作成した方が流通のコストを考えると安い。同じようにヨーロッパや日本にも工場が増えた。逆に東南アジアやインドの工場は減った」


「じゃ、アメリカ、ヨーロッパ、日本は景気がいいのですか?」

「さっき言ったように、失業率が増えている。工場が増えても働くのはロボットだからな。企業は儲かっているが、一般市民は収入は減っている。現在は緩やかなデフレだな」


「日本の失われた30年みたいに、緩やかなデフレなんですね。じゃそれほど大きな問題はないかも…」

「どうかな。先はわからん」


「アンジェ、NASAは火星をどうみているの?」

「資源確保が可能な場所として有望視している。投資先としてファンドが出来上がるぐらい人気だが、リターンは出せていない」


「そりゃそうですよね。資源開発なんてそんなすぐにはできないですよ」

「さっき桃華が言ったように、デフレになってきている。企業が儲かっている間にこちらも自立できなければ、その後の支援は受けられなくなると思った方がいい」


「そうですね」と言おうかと思ったら、「桃華と言うな」と千秋先生が言った。

「でも、名前は桃華だろ?」

 二人が言い合いが始まった… 桜が綺麗だねぇ。桜のケーキも美味しい。平和だねぇ。

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