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温室を作ろう。みんなの力で...

 植物を栽培すると言っても、寒すぎるよねぇ。温度を考えると地中がいいんだけど、太陽光が届かない。地上の温室だと太陽光が入る。


 こぢんまり作るなら、小さい温室でいいか… 伊織に作ってもらおう。

 温度を上げるのに電力は足りないよね…


 水は氷だから、溶かす必要があるよね。これも温度を上げる必要があるね。太陽熱を利用できないかな。

 誰か手伝ってもらえないかなぁと見回すと、河野さんがいた。


「河野さん、太陽熱を集めたいけど、どうすればいい?」

「熱? ジャガイモのためですか?」


「そう。氷を溶かすにも温室を作るにも熱がいるでしょ?」

「そうですね。原子力発電で発電で余った排熱はどうですか?」


「リチウム電池の効率低下を防ぐために使っているじゃない?」

「そうなんですね。」


「でしょ。太陽熱は届いているのでしょ?」

「地球の半分程度しか太陽光が届いていません。でも、地球の北緯40度程度でも利用できるから可能性は高いと思います。ガラス管の2重構造の真空管が効率がいいですけど作れないですよね。地球ならもっと単純な構造でも氷を溶かすぐらいなら十分ですけど…」


「えーと、半分しか届かないなら、倍にすればいいのですよね?」

「は?」


「鏡で反射させるとか… だめですか?」

「ヘリオスタットを作る気ですか?」


「ヘリオスタット?」

「多くの鏡を半円に配置して、その中心に太陽光を集める方式です」


「そんな大規模なことは考えていませんした。だって、倍にすればいいのですよね? パイプを半分ししたぐらいで十分じゃないですか?」

「そうですね。でも最初はもっと単純に黒いパイプで試してもいいんじゃないですか…」


「どうしたのですか? 難しいのですか?」

「ジャガイモの栽培のための温室はどうやって作るのですか?


「ポリカーボネートが透明だし、いいかなと思っていました」

「ポリカーボネート… それができるなら、シリカエアロゲルにしましょう」


「シリカエアロゲル? 何ですかそれ?」

「透明で軽い断熱材です。ポリカーボネートより軽いので材料の節約にもなるし、これだけでもかなり温室の状態になると思います」


「へぇ。ポリカーボネートを小織が作っているので相談しましょう」

「そうですね」


 私と河野さんは小織のところに転送した。


「小織、河野さんとシリカエアロゲルを作って欲しいの」

「シリカアオガエル?」


「シリカエアロゲルよ。カエルなんて作らないわ」

「そうですよね」


「小織、河野さん、お願いね」と言って、何か言いたげな二人を残して私は自分の部屋に転送した。


 さてっと、猫さんは新しいレシピとかを届けてくれているよね?と思い、データを探る。

 もちろん、暗号されているので解読して色々見ていると、近況を記したファイルがあった。


 猫さんは大学を卒業したのか。袴の写真がある。いいなぁと思っていると、袴のデータがあるから着てみてと書いてある。気を遣っているなぁ私。

 そして、一ノ瀬グループに就職か… なんか取り残された気がする。

 優佳は商社に就職ね。優佳のお父さんの関係かな?


 沙織お姉ちゃんは副社長なんだぁ。すごいね。

 香織お姉ちゃんは変わりなしなんだ。モテると思うんだけど…。

 千秋先生もアンジェも相変わらず研究ってそんなに面白いのかな?


 神木達也さんは、居所がわからないらしい。どうしているんだろう…


 あ、新作のレシピがある! どれどれーと思っていたら、琥珀が現れた。

「兎さん、小織が呼んでいます」

「わかったわ。転送して」


 転送先には、小織と河野さんだけかと思っていたら、千秋先生もいた。

「どうしたの?」

「千秋先生が珪石が必要だと言っているのですが、シリカエアロゲルも珪石が必要なんです」


「どちらを優先すればいいですか?」

「千秋先生、珪石はシリコンだから?」

「そうだ」


「どっちも製法が確立していないですよね? じゃ、珪石も当面問題ないですよね? 製法が確立するまでには採集を加速させるのでそれでいかがですか?」

「いいだろう。だが、こっちの分が優先だからな」と言うと千秋先生は消えた。


「小織、河野さん、ということでよろしくね」

 ロキ達、颯人には珪石は優先して採集してもらうことを通知して、悠人には掘削のローバーの生産の状況を聞いて、増産をお願いした。

 はぁ。面倒ねぇ。

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