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転職先は...

「私はシステム開発をしましたよ。5千万でしたけど… 私なら数億を面倒なんて思いませんよ。プライベートジェットでお迎えとかしてくれるのでしょ?」と河野さんが言った。

「プライベートジェット? ものすごく維持費がかかるけど、富豪なら関係ないか」


「そんなことを知っている詩織さんも富豪ですよ。私を除いてみんなお金の感覚がおかしいです。富豪が直接話を聞きたいなんて普通はないですよ!」

「千秋先生は富豪からの問い合わせはなかったのですか?」


「ないな。その金持ちのおかげで物資を運べることになった。面倒なこともあるが、金はある」

「面倒なこと? もしかして、物資を運ぶ代わりに資源をよこせとかですか?」


「鋭いな。ここで食糧生産をする必要がある」

「食糧? 誰も食べないですよ」


「宇宙飛行士が来た時の食糧にできるし、富豪がここに逃げ込んできた時の食糧だな」

「はぁ… で、どうやって栽培するのですか? ここの土は過塩素酸塩でしたっけ、過塩素酸塩が含まれているのでダメですよね? 水耕栽培ですか?」


「水耕栽培は現状では水が足りないから利用できない。土は塩素の酸化状態を下げるしかないな。どちらにしろ、水が足りない」

「工業にも水が必要ですし、足りないですね。どうするのですか?」


「火星の地表探査の結果、氷あると思われる場所は特定できたので、そこで採集するしかないな。運ぶコストをどうするのかを考える必要がある」

「ジップラインの登場ですね」


「ジップライン?」

「ビアンカ、何ですか?」


「兎が北の山から物資を運ぶ方法として提案で、ワイヤーロープにプーリーを使って滑り降りるアアクティだ」

「なるほど、火星は空気抵抗が少ないから有効ということですか… 高低差をつけるためには支柱が必要ですけど、どうするのですか?」


「珪素を使って固める」

「ワイヤロープの製造が必要ですね」


「銅線を作ることはできているので技術はあるが、ワイヤロープは銅線より太く長くする必要があるから別製造設備が必要だ」

「うん。いいんじゃない? ほぼ直線で運べるし、道路を作るよりコストが低いよ。私が作るよ。千秋はアレを作る必要があるし…」とアンジェが言った。


「アレ?ってなんですか?」

「半導体だよ」と千秋先生が答えた。


「半導体ってここでコンピュータチップを作るのですか?」

「あぁ。モジュールを積んできている。そのモジュールを詩織達が乗って来たロケットに移動させる必要がある」


「だから、地上に下ろした物資は撮影用のポッドと宇宙飛行士のポッドだけだったのですね」

「いや、後で1つのモジュールを投下する」


「そういえば、宇宙飛行士は何をしているのですか?」

「火星探検じゃないか? アルジャーノン写してくれ」


 宇宙飛行士が石の採集などをしている映像が表示された。


「石を採集して何になるのですか? あのあたりの石の成分解析も済んでいますよ」

「人が採集したということが重要なのだよ」


「人類初の火星到着をアメリカが達成した偉大な国だということを全世界に宣伝することで、多額の税金がかかっていることをアメリカ国民に気づかせないことが重要なんだよ」とビアンカが言った。

「辛辣ですね… で、宇宙飛行士はあのまま放置でいいのですか? 私達は会ってもいないですよ」


「彼らは私たちのことは知らないから会う必要はない」

「え! そうなんですか?」


「あぁ。アルジャーノンが対応しているから問題はない」

「そうですか… ところで、ジップラインはアンジェが作るのでしょ? 半導体は千秋先生が作るのでしょ? 食糧生産は誰がするのですか?」


 千秋先生とアンジェが黙って私を見た。

「な、なんですか? 私はできないですよ」


「水を大量に確保ができなければ栽培も難しいので、こぢんまりとすればいい。誰も知見がないから失敗は想定内だ」と千秋先生が言った。

「失敗が想定内なら… 栽培には植物のタネが必要ですよ」


「投下するモジュールに入っている。最初はジャガイモだな」

 ジャガイモ農家に転職?

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