スピンローンチ
今日はスピンローンチの実験を行う。放すタイミングの間違いでモジュールなどの設備が壊れないように、砂で作ったすり鉢状の中心にコンクリートの土台を作り、スピンローンチを固定した。
スーパーキャパシタはスピンローンチの近くに配置する必要があるが、失敗しても問題ないようにガードを固める。
ハイスピードカメラも配置し、ダミーの錘も装着して実験を開始した。
モーターは回転数を上げていき、砂埃が舞い上がる。想定以上の砂埃のため、実験は中断した。
「砂煙で見えないですね」
「あぁ。防御用の砂壁を固める必要があるな…」
砂が舞い上がらなければいいので、強度のは無視で珪素を混ぜて表面を焼き固めた。
第二回目の実験の開始だ。モーターは回転数を上げていったが、砂埃は舞い上がるがカメラの映像には影響がない程度だ。
さらにモーターの回転数を上げると、すり鉢状の砂の壁から砂煙がでた。砂煙が収まると錘が半分埋まっていた。
スピンローンチの腕?を見ると錘はなく、錘を掴んでいる指?が折れたらしい。
「指?が折れていますね」
「強度が足りないな」
鉄の強度と粘りが足りないので炭素量を0.5%増やす…
第三回目の実験の開始だ。モーターの回転数を上げて予定回転数に到達し、砂煙で包まれた。錘を掴んでいた指も問題ない。成功だねと思っていたら、ここの全体を写している映像を見ると、離れた場所で砂煙が上がっている…
「ビアンカ、これって成功?」
「いや、失敗だ。放すタイミングが遅いと思う。これから解析だ」
指の強度と粘りの変化させるために、炭素を追加したためタイミングがずれたらしい。もう一度シミュレーションをするそうだ。
「スピンローンチってものすごく放すタイミングが難しいのですね」
「ハイスピードカメラの処理時間、コンピュータの計算時間、スピンローンチの指の動作時間がすべて想定通りでないと、さっきのような失敗になる」
「あのう。基本的には真上に投げ上げるのですよね?」
「そうだ」
「宇宙まで届かなかったら、落ちてきますよね?」
「届かなかったら落ちるな」
「ここに落ちてきませんか?」
「計算通りなら落ちてこない」
「でも失敗しているじゃないですか?」
「真上に飛ばせることができれば、宇宙まで届く。0.001秒ずれると100KMはずれる。すなわち、ここが最も安全だ」
「そうですか… 微妙に届かなかったら?」
「落ちてくるな」
「じゃ、危ないじゃないですか?」
「火星は自転しているから落ちるとしてもここからかなりずれる」
「火星の大気で燃え尽きないのですか?」
「火星の大気は地球と比べて薄いから燃え尽きない。しかし、ここに落ちる確率は計算していないが、まずない」
理屈はわかるんだけど、なんかねぇ。
シミュレーションを再度実施し、第四回目の実験の開始だ。
モーターの回転数を上げて予定回転数に到達し、モーターは徐々に回転数を下げる。スピンローンチの腕には錘はない。
私は錘が落ちてくるんじゃないかと落ち着かなかったが、ビアンカが「成功だ」と言った。
「じゃ、落ちてこないのですね」
「あぁ。君たちが乗ってきたロケットの船外カメラの映像を見ろ。あの黒い点が錘だ」
「浮いていますね」
「無重力だからな」
「本当に、あんな小学生の発想のような方法で飛ばすことができるのですね」
「小学生の発想? そうか? ロケットも似たようなものだろ」
「ロケットではなくスピンローンチを使った方が効率がいいなら、スピンローンチで人を飛ばせば安上がりじゃないですか?」
「遠心力のGで人が死ぬ」
「そっか… でも火星なら使えるのでは?」
「できるだけ軽い容器にして30分程度の酸素だけにしても人を入れると300Kgにはなるだろう。そうすると、スピンローンチを3倍ぐらいの大きさにしても回転数はさらに上げる必要があるんじゃないかな。これで300Kgを上げれるとしても、人は遠心力のGで死ぬ」
「やっぱり遠心力で死んじゃうのですね…」




