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千秋先生の研究(前編)

 今日の大学は優佳の質問攻めから始まった…


「ねえ、詩織、昨日の男の人と知り合いだったの?」

「おはよう、優佳。昨日の男の人は知り合いじゃないよ」

「でも、亮二さん?って言ってたじゃない?」

「あれは、あの騒動を大きくしないために言っただけだよ」

「そうなの?」

「そうなの」


「じゃ、あの後、どうなったの?」

「護衛の人に用件を聞いてもらったと思うよ」

「それ以外は?」

「何もなし」

 優佳ががっかり感を全開に「はぁー 詩織は興味なしかぁ」とため息をついた。


 それから、千秋先生からは連絡はなく、2日後にやっと連絡が来て千秋先生のところに来るように言われた。私は生命科学室、通称、千秋部屋に行った。


「詩織さん、おはよう」

「おはようございます。河野さん。千秋先生はいないんですか?」

「千秋先生は遅れるらしいよ。 神木達也さんの検証結果が出ているから、端末で見れるよ」

「ありがとうございます」

「見る前に言っちゃうけど、ハッキリ言って、何も変わったことなしだね」

「何も? 全く?」

「そう、神木公人さんの検証と合わせるため、人、場所、計測機器も全く同じにしたけど、全員反応なし」


 私が少しがっかりした顔をしたのか、河野さんは「普通は反応がないものだよ」と言った。


「河野さん、達也さんへの質問はいつできるんですか?」

「結果は良くなかったのに、質問したいの?」

「神木公人さんのことを聞きたいので…」

「千秋先生に伝えておくよ」と河野さんが言っていたら、千秋先生が入ってきた。


「詩織、来てたのか?」

「来てたのかじゃなくて、千秋先生が今日来いって言ったじゃないですかぁ」

「そうだったな」

「達也さんの検証結果は河野さんから聞きましたが、達也さんの質問はしたいので質問できるようにしてください」

「わかった」


「ところで、千秋先生ってなんの研究をしているんですか?」

「ん? …」

「言えないんですか?」

「生命科学だよ」

「具体的には?」

「…」


 千秋先生は言いたくないのかな?

「わかった。見せてやる。ついてきなさい」


 千秋先生について行った。

 部屋を開けるとそこにはゲージが多く並んでいて動物の匂いがする。

 その部屋で2名が作業をしていた。


「詩織、こちらはアンドレ。ニックネームじゃないぞ。日系ブラジル3世だ」

「高田アンドレです」

「詩織です。よろしくお願いします」


「詩織、ちらが絵梨香」

「永井絵梨香です」

「詩織です。よろしくお願いします…」


 足元に真っ黒で毛並みの短い猫が擦り寄ってきた。

「この猫は、ニャン吉だ」


 ニャン吉? どういうネーミングセンス?

 私はしゃがんでニャン吉を撫でる。逃げないねぇ。人馴れしているねぇ。

「ニャン吉、詩織だよー。よろしくねー。 千秋先生、ニャン吉はすごく人馴れしてますね」

「詩織、私の研究のメインはニャン吉だ」

「猫の何を研究しているのですか?」

「ニャン吉は脳腫瘍で大脳を摘出した。その代わりに量子コンピュータに接続した猫だ」


 私の頭は『?』でいっぱいになった。

「は? 接続?」

「量子コンピュータと言っても、今までのコンピュータの先に量子コンピュータが繋がっていて、量子コンピュータがニャン吉の脳の細胞をシミュレートしている」

「は? どうみても普通の猫ちゃんじゃないですか? 量子コンピュータって前に見せてもらったものはドラム缶みたいに大きくって絶対零度に冷やしていたじゃないですか? そんなの入るわけないじゃないですか?」

「大脳との神経接続のやりとりをする部分だけがニャン吉の中にあって、無線で飛ばしているから、ニャン吉の中には量子コンピュータはない。ちなみに、光量子コンピュータであのドラム缶じゃない」


 私はニャン吉がかわいそうと思った。

「…ニャン吉…」

「だから、見せたくなかったんだ。ニャン吉は脳腫瘍で死んでいるはずだったんだぞ」

「そうかもしれないですけど…」

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