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子供達の変化

 火星までの道のりは何もない日々だ。もちろん、日々の航行確認はアルジャーノンが実施しているし、定期報告も神木さんが実施している。だから、何もないということではない。

 でもねぇ。猫さんとも会えないし、みんなはそれぞれの勉強を行う時間が増えた。


 理人は100冊の本を読んだようだが、神木さんに作者との会話ができるかどうかの質問をしていない。さらに本を読んでいるようだ。

 伊織はバイオリンを練習している。最初はギーギーとひどい音を出しては顔を顰めたり、キャッキャ笑ったりしていた。練習はピアノがある音楽室で行っていたので、悠人に「一人で笑って気持ち悪いし、うるさい! ピアノの邪魔」と言われてバイオリン部屋を新たに作って練習している

 悠人はピアノは変わらずピアノだね。

 小織は化学に興味があるらしく、実験をしている。仮想環境なのに実験してもねぇ…と思うけど。

 悠人は瞑想したり運動したりしているらしい。本人は精神を調べていると言っている。

 颯人はコンピュータに興味を持っているらしく、コンピュータ操作を補助する自分用のアルジャーノンの改造に注力している。


 ここの子供達に変化が現れているけど、地球の子供達も変化しているのかな?

 私? 伊織のバイオリンの改良の手伝いと縦笛の作成を実施している。

 ピアノができたのだから、バイオリンは簡単!と思ったけど、これがなかなか難しい。

 ピアノは弦を振動させているから似たものだから簡単と思ったけど、鍵盤の動きに連動して音を鳴らしているだけらしい。


 音もスタインウェイのピアノの音を調整してながしているだけらしい… なんか騙された気分。

 そういえば、私達の声も脳が発音しようと唇や舌を動かすイメージをしているだけで実際には音がなっているだけなんだって。要は口パクのようなものだ。


 以前に、河野さんに縦笛を作りたいと言ったとき、「縦笛の再現も難しいです。いっそのこと、口から縦笛の音が直接出せるでいかがかですか?」と言われた。最初は何のこと?と思ったけど、口笛みたいに縦笛の音が口から出ると言われるとイメージできた… ほんの少し、本当にほんの少し心が揺れた。だって、私は口笛が吹けないから… でも、「却下です」と答えた。


 バイオリンも縦笛も振動が発生するので振動をシミュレートするアルゴリズムを探して、伊織と一緒にバイオリンと縦笛の再現を目指している。

 今はなんとか音が鳴っている程度で、販売したら笑われる程度だ。でも伊織は日々改善を続けている。私は気になったので伊織の状況を確かめに第二音楽室に行った。


「伊織、バイオリンはどう?」

「はい、しお」と伊織が言いかけたので、「伊織! 兔でしょ」と言葉を遮った。

「はい、兔先生。すみません。やっぱり慣れないです」


「慣れて。バイオリンの改良は進んでいる?」

「まだまだです。ライブラリの教本と動画を見て勉強中です」


「ちょっと弾かせて」

「はい」と伊織は私にバイオリンと弓を渡してくれた。


 私はバイオリンを構えて、きらきら星を弾く。少しギコギコ鳴る。私の眉間には皺が寄った。

「すごいです。兎先生」

「ギコギコ鳴っているじゃない?」


「私が弾くともっと酷いです。私の腕が悪いのと、バイオリンが良くないこともあるのでどちらがどれほど悪いのかわからなかったですけど、私の腕が良くないのですね」

「私もうまくはないわ。小学生になる前には辞めちゃっともの」


「どうして辞めちゃったのですか?」

「ピアノの方が楽しかったからかなぁ。よく覚えていないわ」


「バイオリン、面白いのに…」

「そうね。頑張って習得して。私は小織を見にいくわ」


「私も行きます!」

「じゃ、化学室に行こうか」

 私達は新設した化学室に行った。ここは私がイメージする化学室を作った。すなわち、水栓がついている机が島のように並んでいる。でも、小織は水栓は使わないのでただの部屋みたいなものだ。


「小織、化学の勉強は進んでいる?」

「そうですね。どうでしょう…」


「今は何を作っているの?」

「作ってはいません。神木先生に言われて火星で手に入りやすいもので何が作れるのかを調べています」


「そうね。大切ね。私も協力した方がいいわね」

「大丈夫です。だって、情報が少なすぎて何がどれぐらい取れるのかは解らないので…」


「小織、鉄やマグネシウムはあるんでしょ? 他には何があるの?」と伊織が言った。

「ガラスはあるだろうけど、他の鉱物はあるだろうけど、どこにあるかも量もよくわからないの。火星に人工衛星を設置して調べるしかないわ」


「小織は偉いわねぇ。私も勉強しなきゃ」

 いい傾向だわ。火星開発の授業も加えようかな。神木さんが先生で…

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