接触
免疫や量子について調べても考えがまとまらない状態で2日過ぎたとき、大学の食堂に向かう途中でちょっとした騒ぎが起きた。
「優佳、何か騒がしくない?」
「何人かが揉めているようね」
数人と揉めている人って、私を見ていた人? で、あれって私のSP?
騒ぎが大きくなる前に止めなきゃと思い、その揉めている中にあえて笑顔で入った。
「あのぉ。どうしたんですか?」
「一ノ瀬さん、話があるんです!」と男の人が言い、私の手を掴んだ。
何が起こったの? 目の前が真っ白になりよろけた。
「離れなさい!」とSPが大きな声をあげ、亮二さんの手を掴み上げた。
亮二さんの手が離れた反動で私はふらつくと、もう一人のSPに抱き止められた。
騒動がもっと大きくなる!と思い私は咄嗟に、亮二さんの手をとった。
「亮二さん、騒ぎが大きくなるのであちらで話しましょう!」
「危険ですので、離れてください」
「いいえ、あちらで話をします」と私は強引に亮二さんの手を引っ張り、その場を離れた。
少し歩き場所を変えて人目が少なくなると、SPが「離れてください」と亮二さんとの間に入ったので、私は手を離した。
すると、亮二さんが「どうして私を亮二と…」と言ったところでSPが話を止めた。
「詩織様、このまま車で移動します。神木さんもいいですね?」
私は「神木さん?」と思ったが、亮二さんは「わかりました」と言い、亮二さんとは別の車に乗せられた。
どこかの会議室?には私だけ通される。
「あのー。亮二さんと話をしたいのですが…」
「許可したくはないです」
「どうしても話をしたいです」
「…わかりましたが、身体検査後です」と仕方なさそうに言った。
しばらくすると、亮二さんが入ってきた。
「何かされませんでしたか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「どうして騒ぎになったのですか?」
「…その前に、確認しておきたいのですが、どうして私を亮二と呼んだのですか?」
「え、どうしてでしょう? 山里亮二さんじゃないですか?」
「… 私は神木達也です。その名は捨てました」
「捨てた?」
亮二さん? 達也さん?は仕方なさそうに話を始めた。
「私の父が犯罪を犯し、母は父の共犯者に殺されました。そのため神木孤児院に預けられました。旧名をどうしても利用したくなかったので、孤児院を出る際に改名を申請しましたので神木達也です。旧名を知る人はいないはずです。なのに、どうして?」
山里亮二という名前は自分でも言いたくないなので、達也さんと呼ぶことにする。神木さんが2人で紛らわしい…
「どうしてと言われてもそう思ってしまったとしか言いようがないです… では、達也さんとお呼びした方がいいのでしょうか?」
「はい… 達也でお願いします」
「では、達也さん。なぜ騒ぎになったのですか?」
「私は一ノ瀬さんの周りに怪しげな人が多いので、公人と同じようにさらわれてしまうのではないかと思ったので、警告をしようと思い、近寄ろうとしたのですが…」と、達也さんは周りのSPを見回して言った。
「そうなんですか。彼らは私の護衛ですし、公人さんはさらわれたわけではなく、合意されていると思いますよ」
「そうとは思えないです… 公人とは連絡が取れないし、城東消防署の奴らも連絡が取れないと言っていました。公人はどこにいますか?」
達也さんが立ちあがろうとしたので、SPが肩を押さえた。
千秋先生はどうやって神木さんを連れて来たんだろう… こんな感じで強引に?
「公人さんは亡くなりました」
「え! 公人が… どうして?」
「…すみません。死因は聞いていません」
「神木達也さん、なぜ詩織様が神木公人さんと同じようにさらわれると考えたのですか?」
「私も公人と同じく緊急救命士ですから、公人の異動先を知り合いを通じて調べました。すると、本庁への異動となっているが、実際は市ヶ谷だということがわかりました。そこで出入りを調べていると一ノ瀬さんが出入りしていることがわかり、一ノ瀬さんの情報を集めていました」
「裏付けを取りますので、後で詳しく聞きます」
SPは私の方に向き直り、「詩織様。ここまでです」と終了を告げ、私は車に乗せられ、強制的に自宅に帰された。
えーー。もっと聞きたいことがあったのに…




