アダム達のデータ受け渡し方法の確認
「アンジェ、一緒に仮想環境に入らない?」
「あぁ。いいぞ」
アンジェと私は用意をして「リンクスタート」と唱え、琥珀に兔さんの場所に転送してもらった。
「おはようございます。アンジェ、猫さん」
「おはようございます。兔さん」
「今日はどうしたのですか?」
「えーっと。料理の進捗が知りたかったの」と言った後に、ちらっとアンジェを見た。
「そうね。進歩したわ」
「辛い料理はわからんぞ。それに朝から食べたくない」とアンジェが言った。
「アンジェ、大丈夫よ。進歩したのは紅茶だから。兔さん、ケーキも進化したわ」
兔さんは、テーブルに3つのティーセットと2種のケーキを出した。
「こちらから、ダージリン、ウバ、キーモン。ケーキは和栗のモンブランとザッハトルテよ。食べてみて」
「いただきます」と言って、私はダージリンに手を伸ばした。
フルーティな香りがする。そして、一口飲んだ。アンジェも同じくダージリンを飲んだ。
「うん。香りの強さはファーストフラッシュね。渋みはほどよいわ。とってもよくなったわ」
「あぁ。これは美味しいな」
ウバもキーモンもレベルは非常に高い。そして、モンブランを食べた。
「このモンブランはもしかしてシャトレーゼがベース?」
「そう! 再現率は高いと思うわ」
「うん。いいわ。アンジェはどう思う?」
「洋酒の香りもするし、美味い。これ、どこかで食べた気がするなぁ。絵梨香がくれたものかも… 工場生産と言っていたような気がする」
「シャトレーゼは工場生産のはずよ。美味しいから関係ないわ」
「ま、そうだな」
「もしかして、このザッハトルテもシャトレーゼがベース?」
「そう!」
「チョコが濃厚ね。このしっとり感も再現できているわ」
私達は一通りお茶を楽しんだ。
私は兔さんに目配せをした。
「じゃ、私の部屋に行きましょうか?」
私は頷いた。
アンジェと私は兔さんの部屋に転送された。数秒後に神木さんと兔さんが現れた。
「さ、座って。猫さんはアダム達の話をしたかったのでしょ?」
「そう。現実世界でも話ができないから…」
「オリジナルのアダム達のデータは火星に持っていくデータに分散して隠した」
「どうやって隠したのですか?」
「一見したら、普通のファイルに見える」
「どういうことですか?」
「そうだなぁ。色々あるが、映像なら透かしの技術を応用している」
「透かし?」
「オリジナルの映像に合成しているから通常の画像に見えるが、データを忍ばせている」
「そんなことができるのですね」
「それより、外にいるアダム達にはオリジナルとの差分が必要だが、どうやって受け取ればいい?」
「このサーバにファイルが配置されます。パスワードはこれです」と神木さんが端末を示した。
「わかった。解凍方法は…」と言いながら、アンジェは端末を操作して「このファイルを参照しろ」と言った。
「わかりました」と神木さんが言った。
「解凍? 何? 知ってる?」と兔さんに聞いたが、兔さんも「しらない」と言う。
「解凍は元に戻す方法を言います。今回は複数のファイルに分散されているデータをくっつけて戻すので通常の解凍ではないですが…」
「うん。神木君がいれば問題なさそうだな」
「はい」と神木さんが言った
「じゃ、抜けるぞ。眠い」
「どうしたのですか?」
「私は神木君達のNASAの訓練の監査人だから、訓練に付き合っていたからな」
「監査人?」
「訓練の評価をする仕事だな」
「へぇ。そうなんですね。じゃ、私達は抜けるね」
アンジェと私はログアウトした。




