アンジェとの話し合い
「アンジェ、仮想空間で味を確かめて欲しいの。いい?」
「あぁ。いいよ」
私とアンジェはMRIを装着し、「リンクスタート」と唱えた。
「琥珀、兔さんのところに転送して」
私達は城の一室に転送された。
「おはようございます。兔さん」
「おはようございます。アンジェ、猫さん」
「河野さんが持っていた、リストの食材のデータ収集は終わったわ」
「猫さんが食材を揃えたの?」
「カンナさんに頼んだだけ」
「そっか。カンナさんならすぐだよね。私からカンナさんにはお願いできないから…」
ごめんね。兔さん…
「アンジェには、グリーンカレー、トムヤムクンとかの味見をしてもらおうと思って連れてきたの。出せる?」
「出せるわ。琥珀、出して」
机の上には料理が並んだ。
「アンジェ、食べてみて」
「わかった」と言って、スプーンを取り、一口食べると「からーい!」と言った。
「え? そんなに辛い?」
「からいよこれ」
「これで辛いのだったら、他は無理ね…」
私は兔さんを見た。兔さんは理解したようで頷いたので、「アンジェ、相談したいことがあるんだけど、移動していい?」と言った。
「あぁ。いいよ」
「琥珀、私の部屋にアンジェと猫さんを移動して」
「わかりました」
私とアンジェは兔さんの部屋に移動した。
「ほう。これが兔の部屋か。広いな」
「そう?」
「あ、そうか。詩織の部屋と同じなのか」
「そうよ」
床の一部がひかり、神木さんと猫さんが現れた。
「おはようございます。アンジェ、詩織さん」
「おはようございます。神木さん」
「相談というのは、アダムのことかな?」
「え? どうして分かったの?」
「ま、わかるよ。で、具体的には何だ?」
「私から、説明します。 アンジェさん、アダム達のデータはありますか?」と神木さんが言った。
「アダム達のデータは没収されたよ」
「そうですか? 私は持っていると思っています」
「何に利用するつもりなんだい?」
「アダム達を火星に逃します」
「ほう…」アンジェは指でこめかみを軽く叩いている。考える癖?
「火星で多量のコンピュータを設置したら、起動します。火星までは追って来れないですから」
「なるほどね。君たちは火星で独立をするつもりかい?」
「そうならないことを願っていますが、独立することになるかと思います」
「…」アンジェは神木さんをじっと見て、「わかった。アダム達のデータを渡すよ。しかし、外の子とは違うよ」
「はい。外のアダム達の2組とは連絡が取れます。差分データをもらえれば、火星で再現できます」
「なるほどね。わかった」
「ありがとうございます。アンジェさん、一つ質問があります」
「私たちが、アダム達と連絡していることは千秋さんにばれていますか?」
「さぁ。どうかなぁ。十中八九、バレていると思うよ」
「そうなんですね… じゃ、アンジェがアダム達のデータを持っていることは?」
「100%持っていると確信しているだろうね」
「じゃ、千秋先生にも協力してもらった方がいいよね?」
「いや、見て見ぬふりしてくれるから言う必要はないと思うよ」
「アンジェ、ところでどうやってデータを持ち込むの?」
「そんなの簡単だよ。火星にはできるだけ多くの情報を持っていくことになるから、潜り込ませるなんて簡単さ」
「多くの情報?」
「あぁ。火星で自立するには火星で資源の現地調達が必要になるだろ? 現地調達にはあらゆる科学知識が必要だからな」
「コンピュータチップ以外はすべて1年で現地調達可能になってもらう必要がある。これに失敗したら自立は不能だろう」




