アンジェのメガネ
私は温度と抽出時間に気をつけて、ウバ、キーモンを淹れた。
「ウバもキーモンも、こんなにいい香りがするのですね。花のようですね」
「河野さん、なかなかいい表現ね。バラのような香りね」と香織お姉ちゃんが言った。
「では、ガスクロマトグラフ質量分析装置と味覚センサにかけますね」と河野さんが言い、計測器を操作した。
「以前の紅茶とは全く違うな… 取り直した方がいいかな」と呟いている。
「では、ダージリンも入れ直しましょうか?」
「え? はい。お願いします」
私達は食材を分析装置にかけていった。
千秋先生とアンジェが入ってきた。
「おはようございます。千秋先生、アンジェ」
「おはよう。詩織。なんだ?この匂いは… 土臭い?」
「ビーツじゃないかな?」とアンジェが言った。
「ほう。アンジェが知っているのか? 珍しい」
「ビーツは珍しくないぞ」
「そういう意味じゃないが…」
「おっ。味覚センサで計測しているんだね。じゃ、葉っぱも計測しなきゃ」
「葉っぱ? 食べられるのですか?」
「葉っぱは茹でても、焼いても食べられるよ」
「そうなんですか? 知らなかったです。アンジェって料理に詳しいのですね。食べ物に興味がないかと思っていました」
「それは、合っているけど… ビーツは赤い汁がでるから面白いし、有名だからね。そうそう、子供のおもちゃで食材のものがあるだろ? それにビーツが含まれていることが多いな。日本にも同じ遊びがあるのかなぁ」
「食材のおもちゃで遊ぶ? おままごと?」
「おままごと? 琥珀しらべて。 …あ、そうそうおままごとだね」
「アンジェ、琥珀って言ったけど、琥珀を操作したの? 携帯を使っていいないよね?」
「これは、前に詩織が携帯で使っていた琥珀の発展版だ」
「あ、前に禁止されたんだよね。そういえば、原因が分かったんだから、私も使いたい! けど、どうやって結果を見たの?」
「このメガネに投影している」
「普通のメガネじゃないのね。私にも見せてください」
「うーん。私のメガネには近視と乱視が入っているからなぁ… 度が入っていない試作機ならあるよ。取ってこよう」とアンジェが出て行った。
「詩織、高性能MRIをつけて変わったことはないか?」
「え? 何も変わりませんよ」
「そうか、ならいい」
「え! 良くないですよ。何かあったのですか?」
「雑音が消えたという症例が出た」
「雑音?」
「本人は雑音と言っているが、集中力が上がったらしい」
「集中力が上がるならいいじゃないですか?」
「ま、そうだが…」
アンジェが手にゴツいメガネを手に持って、戻ってきた。
「アンジェ、その手にあるゴツいメガネが試作機ですか? アンジェのとは全然違うじゃないですか?」
「私のは特注品だな。かなり凝っている。だから、販売しない」
「じゃ、販売されるのはそのゴツいメガネですか?」
「いや、もう少し洗練されると思うが…」
「つけていいですか?」
「いいぞ」
私がつけた試作機はケーブルが伸びていて、先には筆箱ぐらいの箱が付いていた…
「これも、琥珀が使えるのですか?」
「あぁ。使えるが、解析モードが面白いから解析モードにしよう。琥珀、解析モードに変更しろ」
「わぁ! すべてのものに名前が出ているわ」
「このボールペンを私のポケットに入れる。詩織、ボールペンはどこか探させろ」
「はい。琥珀、机の上にあったボールペンはどこにある?」
画面上に、矢印が表示されアンジェのポケットを指し示す。
「アンジェのポケットに矢印が向いています。さっき、アンジェが調べていた結果はどう表示されるのですか?」
「琥珀に検索させてみろ」
「琥珀、ボールペンの歴史を教えて」
「おっ!」目の前に、ボールペンの歴史の画面が表示された。
「アンジェ、これ便利! 私も欲しい!」
「あぁ。わかった。用意しよう。だが、発売するまではここでなら付けてもいい」
「わかったわ。で発売はいつですか?」
「さぁ。発売しないかもしれないぞ」
「どうしてですか?」
「ちょっと高いからな」
「いくらですか?」
「今の予定は2万ドルぐらいかな」
じゃ、300万ぐらいか…
「じゃ、アンジェのメガネはいくらですか?」
「うーん。20万ドルぐらいじゃないかな?」
「…」河野さんがドン引きしている…




