辛い料理 その1
私は千秋さんの方を向き、「神木さん達に火星の話をしたのですか?」と聞いた。
「あぁ。したぞ。了承を得ている」
「そうなんですね。命がかかっているのに了承が得られたのですね」
「命? 仮想世界の住人だぞ?」
なんか、神木さんたちが生きていないと言っている?
「それはそうですけど… 彼らは生きています」
「詩織、彼らのコピーが宇宙空間に行くから、本体は地球にある」
「あ、そうか。コピーなんですね。だからと言って、安全でないのは困りますよ」
「わかっている。安全性に問題があれば、変更させる」
「そんなことができるのですか? あぁ。神木君達を送る条件にしているから問題ない」
「そうなんですね。…神木さん達を送る? 送るのは誰なんですか?」
「全員だ」
「全員?」
「子供達が乗り気だったから、全員になった。意外か? 危険だからか?」
「いえ、自分のコピーを作ることに抵抗がなかったのかな?と思って… だって、私であって私ではないのですよね?」
「お、さすが詩織。兎と同じ反応だな」
「そうなのですか? どうやって納得させたのですか?」
「神木君も子供達も詩織のコピーだぞと言った」
「なるほど、そう言われればそうですね」
「びっくりするぐらい同じ兎と同じ反応だな」
「ま、私ですから」
「兎は詩織のコピーじゃないのか?」
「そうだけど、私と同じなんてできないと思っていたから… できてしまったら消すなんてできないじゃないですか」
「ほう。すごい割り切りだな。なかなかそんな反応をする人は少ないと思うが…」
「そうですか? アンジェは自分の分身ができることがわかった状態で、ノリノリで作っていたじゃないですか?」
「アンジェは自分の考えが中心で動く変人だからな」
自分の考えが中心というのは千秋先生にも当てはまると思うけど、千秋先生も変人か変人でないかと言われれば、変人だと思う。でも、それは言葉に出さずに「そうですね」とだけ答えた。
「そうだ、詩織。兎が新作の料理を味見して欲しいと言っていたぞ」
「新作? わかりました。仮想空間に入りますね」
「あぁ。わかった」
私は仮想環境に入るために高性能MRIを付け、「リンクスタート」と唱えた。
リビングには誰もいないので、私は「琥珀、兎さんの場所に転送して」と言った。
空中から「わかりました」と声がして、シンデレラ城の一室?に転送された。
そこには、全員が揃っていていろいろな料理が机に並んでいた。
「おはようございます。皆さん」
「おはようございます。猫さん」
「新作の料理を作っているって千秋先生に聞いたけど、その料理?」
「そうだよ」
「辛そうな匂いがしているけど…」
「グリーンカレー、トムヤムクン、麻婆豆腐に麻婆茄子、そして、欧風カレーに普通?のカレーだよ」
「ぜんぶ辛い系ね」
「そうなの。私、辛いのが苦手だから…」
「私も苦手よ」
「でも、子供達は辛いがあまりわからないみたいで不評だけなの」
子供達は、こんな料理は美味しくないという顔をしている…
「神木さんは?」
「私は美味しいと思うので、改善点などは指摘できないのです」
「そうなんですよ、神木さんは『問題ない』としか言わないのですよ。これじゃ、良くできないでしょ」
「そうね。でも私も兎と同じだと思うけど… でもどうして子供達は辛い系が苦手なんだろう?」
「そう! 私も気になったの。神木さんと話た結論は、2日目までのデータでしょ。その間の食べ物ってちょっとした食べ物とケーキぐらいだったからじゃないか?ということなの」
「辛いものを食べた情報が転送されなかったということ?」
「子供達も辛いことはわかるけど、美味しいとは思わないだけらしいわ」
「そうか、情報は脳に伝わるものね」




