火星へ
「詩織、神木君を火星へ送ることになる。そのため、来週から訓練が行われる」
「神木さんを? 人だとコスト高だから人工脳モデルということですよね? 神木さんだけですか?」
「立候補があれば送ることになるな」
「そうですか…」
「兎達はどういうと思う?」
「兎さんは神木さんだけを送ることはできないと言うような気がします」
「他の子供達は?」
「どうだろう? わからないです。前に半年以上?かかるとか言っていましたが、どのくらいかかるのですか?」
「まだ完全に計算が終わっていないからはっきりしないが、4年ほどだろう」
「4年? 長いですね。推力?の高いロケットだとコストが高いからですか?」
「そうだな。従来のロケットは化学反応を利用しているため燃料の比率が高くなる。今回は非化学ロケットとするようだ」
「非科学ロケットってなんですか?」
「いろいろ種類があるが、今回はイオンジェットを使うらしい」
「イオンジェット?」
「アルゴンをイオン化させてローレンツ力で加速する」
「ローレンツ力って習いましたが、今回の総量って多いのですよね? 化学反応より弱いような気がしますが、動くのですか?」
「推力は化学ロケットには及ばないが、アルゴンと電力があれば加速を続けられる。加速を続ければ問題ない」
「化学ロケットは力が強いけど燃費が悪い。非化学ロケットは力が弱いけど燃費がいいという感じですか? 兎と亀みたいですね。」
「ま、そうだな」
「電力は原子力発電ですか?」
「よく覚えているな。そうだ、原子力発電と太陽光発電を利用する」
「太陽光発電は必要なのですか?」
「原子力発電は火星では作れないからな」
「太陽光発電は火星で作れるのですか?」
「材料は持っていくしかないが、ペブロスカイト太陽電池なら現地で作成可能だ。それ以外も3Dプリンタでかなりのものを火星で生産できる。できるだけ多くの資材を載せて、火星で自力開発ができることを目指しているからな」
「すべての生産設備を持っていくことなんてできないでしょうし、材料も現地調達になるんですよね?」
「そうだ」
「地球での産業発達を火星で再現ですか… 難しそうですね」
「地球での失敗した開発をスキップできるから、発展できれば早いと思うがな」
「後発の方が、より少ない投資で効果を得やすいですからね。それに食物生産は不要だし、電気で動作するものに特化すればいいので可能性はあるんじゃないですか?」
「お、さすが経済学部だね」
「授業にありますから」
「コンピュータが生産できるようにはなかなかならないですよね? そうすると、発展する前にコンピュータが壊れて神木さん達が死んじゃいませんか?」
「そうだな。作成が不可能なチップは大量に持ち込むしかないな。今、火星で自活できるようになるかはシミュレーション中らしいぞ」
「火星と交易できれば、チップも入手可能じゃないですか?」
「火星の資源を宇宙に運ぶ必要があるが、メタンを生成できるだろうからロケットの燃料は現地生産可能だろう。宇宙航行のアルゴンも火星で手に入るだろう。しかし、火星の資源を地球で受け取るコストも高いだろうから交易になるかどうかはわからんな」
「そうですね… 火星で付加価値の高いものが生産できないと難しいですね。そういえば、訓練って何をするのですか?」
「知らん。アンジェ、知っているか?」
アンジェは新型高性能MRIを分解してブツブツ独り言を言っている
「ダメですね。自分の世界に浸っていますね」
「そうだな」




