警戒
今日は「英語」の授業の教室に入ると、優佳がいたので隣に座る。
「優佳、おはよう」
「おはよう」優佳は声を顰めて話を続けた。
「詩織のことを聞いている男の子がいるよ」
昨日、橋田さんにも気をつけろと言われたので、神木さんのこと調べている人かな?
「どんなことを聞いているの?」
「詩織の意識不明から目覚めているのか?とかだけど、他の人のことも聞いていたみたい」
「どんな背格好の人が聞いているの?」
「身長は私よりだいぶ高いから180ぐらい? 髪は短く、メガネをかけてて細マッチョ」
「ふーん」
「興味ないの?」
「ないかも」
「詩織はどんな子がお好み?」
「うーん」と悩んでいると、授業が始まった… 優佳はこの手の話が好きだなぁ。
食堂で優佳とランチを食べていると、何やら視線を感じる。
座っているので、身長はわからないが、髪は短いし細マッチョ?
「ねぇ、優佳。出口のところにいる人って私のことを聞いているっていう人?」
優佳は鏡を使って確認した。優佳はスパイの素質があるね。
「そう! あの人。結構いけてない?」
私は携帯の特製警戒アプリで怪しい人がいる場所と特徴をSPに通知した。
その後も他の友達から私が休んでいたことや、元気になったかを聞いている人が2人ほどいるらしい。でもこちらは同じ大学生らしい。
「詩織って、モテ期到来?」
「モテ期ってそんな急にくる? そんなわけないよ。で、誰かわかる?」
こちらは名前を聞き出して、携帯の特製警戒アプリに登録っと。
ちょっと怖い人からの聞き取りがあるかもしれないけど、ごめんね。
授業が終わって家に帰ると、カンナさんが「香織様がお待ちです」というので、「部屋に荷物を置いたら、行きます」と答えた。
リビングに行くと詩織お姉ちゃんがソファーでくつろいでいた。
「詩織、おかえり」
「ただいま。今日は警戒の話?」
「そう。詩織が特製アプリに入れた人は神木さんと同じ孤児院の出身の人で、神木さんと連絡が取れないので調べているようね。そこまでは理解できるけど、どうして詩織まで調べているかはわかっていないから、近づかないようにね」
「わかった」
「で、大学の男の子2人は詩織のことを知っていることを聞かれ、わからないことは詩織の友達に聞いてくれと頼まれたらしいわ。その理由が、詩織のことが気に入っているからなんでもいいから知りたいと言ったそうよ。その依頼人の身元は不明なの。プロが調べているようね」
「プロ?」
「そう。かなり大掛かりな組織だと思うわ。一人では出歩かないようにね」
「わかった」
「千秋先生のところの仕事はどう?」
「仕事というより、教えてもらうために行っているようなもんだよ。そのおかげで、ちょっと量子について詳しくなったよ」
「量子? 神木さんの仮説は量子が関係すると思っているの? どう関係するの?」
「量子って粒と波の性質があるから、波だと同期と関係するかなぁってぐらいで、仮説を説明できるレベルじゃないんだよねぇ。もっと量子について調べないとダメなんだよー。香織お姉ちゃんは量子について詳しい?」
「仕事で、新技術は広く調べているけど、詳しくないわ」
「じゃ、分析室の橋田さんに聞くよ」
香織お姉ちゃんが私の顔をじっと見てくる。
「何? 香織お姉ちゃん?」
「カンナさんが言っていたけど、最近、甘いものを食べることが減っているようね」
「そう? 変わらないと思うけど… トレーニングをするようになったからかな」
「毎日、よく続くわね」
「トレーニングすると気分がいいよー。それに肩コリも軽減したし。今日も、これからトレーニングするよ」
「ほどほどにね。やりすぎると胸が落ちるわよ」
「そうなの? うーん。どうしよう」
「やり過ぎなきゃいいのよ」
「うん。トレーニングに行ってくるね」




