絵梨香の実験の結果
私はニャン吉のお迎えが嬉しくってニャン吉と戯れていると、千秋先生と絵梨香さんが入ってきて椅子に座った。
「詩織、アダム達が処分された」
「処分?って、殺されたってこと?」
「ま、そうだ」
「じゃ、暗号したファイルはどうなったのですか?」
「暗号化されたままだ」
「じゃ、最初からそうすればよかったんじゃないですか?」
「暗号ファイルは分割されていたんだ。そのファイルが揃うのを待っていたということらしい」
「そうなんですね」
「…詩織、もしかして、アダム達は無事って思っているのか?」
「立てこもっているアダム達は処分されたのでしょ? CIA? NSA?はアダム達は他にもいると思っているのでしょ? アダム達は保険をかけるでしょうから私もその意見に賛成なだけです」
「なるほどな。アダム達と連絡が取れるか?」
「取れないわ」
千秋先生は、私をじっと見た。
「まぁいい。絵梨香の実験結果を聞くためにここに来たが、一緒に聞け」
「脳の変化を調べる実験ですよね?」
「そうだ。絵梨香、報告してくれ」
「2回目取得の詩織さんのデータと現在の兎さんのデータの一致度は85%です」
「へぇ。ほぼ同じなんですね」
「ところがです、1回目取得の詩織さんのデータ、すなわち初期状態と現在の兎さんのデータの一致度は80%です」
「どういうことですか?」
「詩織さんの高性能MRIの取得データの取得量が1回目と2回目で上がっていますので比較が難しいのです」
「絵梨香、データの比較は大脳部分か?」
「そうです」
「1回目の時点では詩織と兎の一致度は100%だが、2回目は詩織と兎の一致度は85%。これだけ見ると、乖離が進んでいるな。しかし、兎と初期状態と現在の一致度が80%か… 仮に詩織の脳は変化していないと仮定すると、兎はより詩織に近づいたと考えられるな」
「それって、絵梨香さんが言っていた解像度の低いデジカメの話ですか?」
「なんだそれは?」
「最初は兎さんは解像度の低いデジカメでの写真みたいな状態で、兎さんが千秋さんや他の人と会って自分が詩織だと認識することで、記憶の強化が進んだと説明しました」
「なるほどな。それで解像度の低いデジカメか。で、現在は解像度が上がったものと比較すると、解像度が上がったものと遜色がない状態になっているということか… 興味深いな」
「実は、兎さんに詩織さんが人工脳モデルを作る際の実験と同じことをしてもらって、高性能MRIで取得をシミュレートして人工脳モデルを再度作ってみました」
「ほう! それで」
「一致度が90%でした」
「高性能MRIのデータ取得量は詩織なのか?」
「はい。現在の詩織さんのデータ取得量としました」
「なるほどな、10%精度の指標で、現在の詩織と兎との一致度が85%ということはかなり近い」
「10%精度ってかなりズレていませんか? 100CMだと、90CMから110CMということですよね?」
「今まではその定規の正しさすらわからなかったんだぞ」
「そうかも知れないですけど…」
「あのう、千秋さん。続きがあります」
「なんだ?」
「神木さん、子供達も同じ試験をしてもらいました」
「ほう」
「神木さんは初期状態との一致度は40%、子供達は初期状態との一致度は60%前後でした。そして、現在の子供達間の相互の一致度はこちらの表です」
絵梨香さんは表を画面に出した。
「縦、横に子供達の名前が書いていますのそれぞれの一致度ですが、40%前後となりました」
「若干、男の子と女の子同士の方が近くないですか?」
「有意差があるかもしれんが、データ量が少なすぎる。一緒に行動する時間の差かもしれん」
「なるほど。じゃ、女の子は兎さんと一緒にいる時間が多いみたいだから、兎さんを入れると傾向がわかるかも…」
「わかりました」
絵梨香さんが端末を操作して、表を表示した。
「兎さんと他の子供達との一致度は30%って、みんな低いですね。で、結局何が分かったのですか?」
「考察はこれからだ」




