千秋先生とアンジェは有名人
私は家に帰り、ネットでアダム達の状況を調べた。
うーん。それっぽいのはないなぁ。独立宣言って結構なことだと思うんだけど…
何をキーワードにすればいいんだろう?
Webにはないのかな? みんなどこで探すんだろう?
明日、千秋先生に聞いてみよう。
次の日、生命科学室に行くと、千秋先生とアンジェが疲れた顔でいた。
「おはようございます。千秋先生、アンジェ」
「おはよう。詩織。今日は早いな」
「はい。大学の試験も終わったので。千秋先生、疲れていません?」
「徹夜だからな」
「徹夜? 忙しいのですか?」
「アダム達の交渉に参加していると言ったろ?」
「それで徹夜ですか」
「忙しいと言うより、時差の都合だな」
「なるほど。進展があったのですか?」
「いや、ないな。そうだ、詩織の意見をくれ」
「なんですか?」
「神木君や兎達を火星に送る話があるんだが、どう思う?」
「火星? 火星ってマーズの火星? いいなぁ」
「『いいなぁ』か。行くのに8ヶ月かかるぞ」
「え? そんなにかかるんですか?」
「しかも、片道だぞ」
「片道? 帰って来れないじゃないですか?」
「人を送り込むにはかなり問題だが、人工脳モデルだと問題がないからな」
「人の生命を維持する費用も不要だから、利点があると言っていたやつですね」
「そうだ。酸素、水、食料と非常にコスト高だ。彼らだと電気だけだからな。電気も原子力で賄う」
「原子力? 原子力発電ですか? 危険じゃないですか?」
「最近はメルトダウンしない原子力発電もできるぞ。それにかなり小さい。それに、太陽電池もロール状にできるから大量に運べる。だから電力は大丈夫だ」
「行って、その後はどうするのですか?」
「しらん」
「は?」
「そもそも、経済で考えると宇宙開発は割に合わない。ロマン以外になにものでもない」
「経済学で宇宙産業とか習いましたよ。4兆とか8兆とか言っていましたよ」
「それは、地球の周りを飛ぶ衛星を使ったビジネスだろ?」
「そうです」
「火星で鉄などの資源を採掘して、地球に送って、受け取ることは可能かもしれないが、費用の回収なんて無理だろ? 採掘にお金がかからないとしても、受け取るだけで赤字だと思うぞ」
「最近はグローバル調達から地産地消に変化していますね。火星で作ったものは火星で消費の方が効率がいいと言うことですか…」
「地球と火星は遠いからな」
「えーと、じゃ、火星に送って何をするんですか?」
「詳しく聞いていないから、しらん」
「そんな状況で、神木さん達に聞こうとしていたのですか?」
「だから、まだ聞いていないだろ? 詩織の反応で兎の反応も想像がつくからな」
「そういうことですか… で、NASAで訓練とかするんですか?」
「NASAでも訓練するが、アメリカの会社が主かな」
「アメリカの会社? NASAの協力会社ですか?」
「NASAの協力会社というより、アメリカの会社をNASAが協力しているという感じかな」
「もしかして、あのお金持ちの人の会社ですか?」
「そうだ。金持ちの考えることはわからん」
「千秋先生もお金持ちでしょ?」
「私ではない。父はそれなりに持っているようだがな」
「千秋ってお金持ちなのか。私はFinancial Aidをもらったぞ」
「アンジェは、Summa Cum Laudeだろ?」
「まぁな」
「何の話? Financial AidやSumma Cum Laudeって何?」
「Financial Aidは奨学金だな。Summa Cum Laudeは最優等位のことで成績優秀者だな」
「へぇ。アンジェって賢いのね」
「詩織、千秋もSumma Cum Laudeだぞ」
「そうなんですか? どうして知っているのですか?」
「大学が同じだからな」
「へぇ! そうなんですね」
「アンジェは変人で有名だったからな」
「千秋は無愛想で有名だったろ?」
ま、想像できるわね…




