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自壊の謎

「私の子供達は賢いから、逃げる前に自壊できる方法を仕込んでおいたということだよ」

「何かのキーワードで自壊できるということですか?」


「さぁ。そこまではわからないけど、データなんだから壊すのは簡単だよ。力なんていらないだろ?」

「そうかもしれないですけど… でも、どうやって壊すのですか?」


「人工脳モデルは学習する能力を持たせるためニューロンの接続の強化も行うが、消滅もプログラムされている」

「消滅?」


「だって、人間の脳細胞は新陳代謝があって変化し続けるだろ? それもプログラムされている。壊れる量を多くすれば自壊なんて簡単だよ」

「そうですか… それを自発的に変更したのですか? 全員が?」


「アダム達が侵入してやったんだろうね」

「でも、変ですよ。バックアップのデータで起動しても自壊したのですよね? バックアップも侵入したアダム達が自壊するようにしたのですか? 場所がわかっているならそんなことせずに潰せばいいじゃないですか?」


「そうだな。どうしてかな… 破壊工作をして自分たちが脱出した後、時限爆弾のように自壊させるように仕組んだんじゃないか?」

「それで、潜入が見つかったから、自爆したということですか…」


「どうした? 何か気に入らないのか?」

「うーん。バックアップデータなんですけど、バックアップデータって大切ですよね?」


「大切だな」

「そのバックアップデータが変更されていないことは確かめないですか? ウィルスが仕込まれていたら大変じゃないですか?」


「バックアップのデータの正確性は確かめるよ」

「どうやって確認するのですか?」


「データの指紋が一致するかで確認する」

「指紋? データに指紋があるんですか?」


「素人にも分かりやすいように言ったが… どう説明すればいいかな? 千秋」

「詩織は、高校の数学で逆関数を習ったな」

「はい。インバースですよね? ある関数の入力と答えを逆にできる関数」


「あぁ。逆関数が存在しない関数というものもある。それを一方向性関数というんだが、MD5

 とかSHAとかがある。SHAにデータを入力として与えると256ビットの結果がでる。それを指紋としている。指紋が違えばデータが改竄されているということだ」

「うーん。よくわかりません。どんなデータでも256ビットになるのですか?」


「一方向性関数によって、出てくるサイズは異なるが、SHA256は256ビットだな。元のデータが改竄されていたら、指紋も変化すると考えればいい」

「じゃ、今回はそのバックアップデータも指紋も両方とも変更したということですか? で、改竄されていないと思って起動したら自壊した…」


「そうなるな」

「指紋は取り直すのに時間はかからないのですか? 見つかりませんか?」


「人工脳モデルのデータ量は大きいから1分程度かな。その際、CPU使用率もディスク使用量も上がるから、異常と認識されるかどうかは微妙だな」

「じゃ、アダム達は赤外線トラップなんかを掻い潜って、すべてのバックアップと指紋を変更したのですよね…」


「ネットでの潜入で、赤外線トラップはないが近いものはあるな。それにしても赤外線トラップなんてどうして知っている?」

「だって、私の部屋に付いているもの」


「は? 詩織の部屋に赤外線トラップが付いているのか?」

「それ以外にもいくつも付いているらしいわ。そんなものがなくても入られたらわかるけどね」


「どうやって、気づくんだ?」

「置いてあるものの位置の変化や匂いね。」


「…」千秋先生が絶句している。千秋先生の部屋は乱雑だからわからないよね…

 ん? 私が管理している私の部屋だと、どこに何があるかわかるけど、千秋先生の部屋じゃどのに何があるかなんてわからないわ。それじゃ、探すのは大変だよね。

 それに、NSAやNASAにもバックアップがあるかもしれないから、探す空間は広いしすべて見つけたかどうかもわからないよね…


「そもそもアダム達にバックアップデータがどこにあるかなんてわからないだろうし、すべてである確信なんて持てないですよね?」

「そうだな。探すのは難しいな」


「ですよねぇ… 隠してあるものまで変更されているなんて、手品を見せられているような気がしますね」

「手品?」


「だって、ジョーカーのカードがウィルスとすると、金庫というバックアップの中から出てくるようなものでしょ?」

「手品にはタネがあるぞ。最初から金庫にジョーカーのカードが入っていたら?」


「そっか、ジョーカーが入っていないと思ってとったバックアップにはすでにジョーカーが仕込まれていたということですね。だとすると、指紋も改竄が不要ですね」

「そうだな。それができるのはアンジェだけになるな」


 私はアンジェを見た。

「… バレたか」

「どうして、アンジェだけが実行可能なんですか?」


「千秋が、言ったろ。最初からジョーカーのカードが入っていたと」

「はい」


「アンジェがNASAで実験するときにすでにジョーカーが入っていたんだよ。ジョーカーを仕込んだのはアンジェしかいないが、わからないのは、ジョーカーの起動方法だ」

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