もふもふ
大学のテストも終わり、私と優佳はショッピングを楽しんでいた。
優佳に凛ちゃんの話をして、見たいと言われた無理というとがっかりされたので、猫カフェに行くことになった。
「みんな可愛いなぁ。あの黒い子、ジジっぽくない?」
「あのジブリの? そうだね」
しばらくいても、優佳にはまったく近づかないので、がっかりは続いている。
「ねぇ、兎カフェに行かない? そこなら、抱っこできるみたいだよ」
「兎! 兎は初めて」
優佳の機嫌は爆上がりで、優佳と別れた。
私はその足で生命科学室に行った。もちろん、目当ては凛ちゃんだ。
高性能MRIを付けて、「リンクスタート」と唱える。
あれ? だれもリビングにいない…
「琥珀、出てきて」
机の上がひかり、琥珀が現れた。
「はい」
「兎さんはどこですか?」
「森にいます。転送しますか?」
「はい」
私は森に転送された。
森には、全員が揃っていた。
あれ? 兎さんの足元に本物の兎がいる。
猫:「兎がいるじゃん。どうしたの?」
兎:「兎アルジャーノンを作ったの」
猫:「先にわんちゃんを作るんじゃなかったの?」
兎:「そのつもりだったんだけど、小織がウサギを見たいというから琥珀に頼んで作ってもらったら、凛ちゃんがウサギに近づいてきたの。で、先にウサギをつくることにしたの」
猫:「そっか。このウサギはなんという種類?」
兎:「ピグミーウサギだよ。こっちが、ネザーランド・ドワーフ。こっちが、ポーリッシュだよ」
猫:「3羽もいるのね。みんなぬいぐるみみたいじゃん! ん? 凛ちゃんを伊織が抱いている!?」
凛ちゃんを伊織が抱いて撫でている。小織も凛ちゃんの頭を撫でている。
兎:「そうだよ。なぜか、ウサギと混ぜると逃げないの。それに抱っこもできるんだよ」
猫:「ウサギが逃げないし、抱っこさせてくれるから、真似ているのかな? それにしても、アルジャーノンってすごいわね。猫にもウサギにもなれるなんて…」
兔:「ウサギを作るのは簡単らしいわよ。鳥もお願いしたけど、飛ぶことが難しいらしいの」
猫:「飛ぶ? そんなの空に浮かんで適当に羽を動かせばいいじゃん」
兎:「だよね、そうなんだけど… 私も神木さんに同じことを言ったら、びっくりしてた」
猫:「どうして?」
兎:「ここは仮想世界だけど、重力があるじゃない? その重力があるから自然界の鳥と同じように重力に逆らって飛ぶ必要があると考えていたみたい」
猫:「神木さんって意外と頭が硬いわね」
兎:「でしょ? 正確に再現しなくても、私たちって、羽ばたいているから飛んでいるとしか認識していないじゃない? 羽の動きが少し違うなんてわからないじゃん」
猫:「そうよね。じゃ、鳥もいるの?」
兎:「それがね、まだなの。適当に動かすのが難しいみたい」
猫:「適当でいいんだから、簡単だと思ったけど、違うのね」
神木さんが、私たちの話が途切れるのを待っていたみたいで、話かけてきた。
神木:「詩織、兎さんが、猫やウサギを作っていますが、千秋さんは怒っていませんか?」
兎が猫やウサギを作るって変な表現だなぁ… ま、話の流れでわかるんだけど…
猫:「千秋先生は怒ってはいないと思いますよ。河野さんは光量子チップやGPUを増やさないといけないと言っていましたが、無視でいいんじゃないですか?」
神木:「無視はまずいと思いますが…」
猫:「温泉は増やさないであげたほうがいいかもしれません」
兎:「え? どうして?」
猫:「温泉はGPUをたくさん必要らしいよ」
兎:「温泉街なんてよさそうだから計画してたのに… 城崎みたいな感じ」
私が『いいねぇ』と言うまえに、神木さんが「温泉街は中止です」と言った。
猫:「ウサギも人工脳で作るつもり?」
兎:「ウサギを飼ったことがないから、兎アルジャーノンと本物のウサギとの区別がつかないからいいかなと思っている。でも、ワンちゃんは人工脳を作ろうと思っているけど、他の子は猫とウサギに夢中なんだよねぇ」
猫:「大丈夫よ。たぶん… そんなことより、私もうさちゃんをもふもふしたい!」




