ニャン吉製作委員会 その2
机の上がひかり、琥珀が現れた。
琥珀:「はい」
兎:「琥珀は猫になれる?」
琥珀:「猫のふりはできますが、猫にはなれません。以前、兎さんは神木さんが作ったアルジャーノンに対抗して、ニャン吉を作りましたよね?」
兎:「そう言えば、作ったわ… 喋るのは便利なんだけど、動きと言動が合っていなくてちょっとねぇ」
猫:「どういうこと?」
兎:「動きは猫なんだけど、喋る時は琥珀のように人のように喋るの。アンマッチでしょ?」
猫:「そう言えば、そうね。動きは変じゃないのね」
兎:「猫って何しても可愛いじゃない? 少々変でもそれもありかって思うもの」
猫:「なるほどね。じゃ、喋るのが良くなかったのね」
兎:「そうね」
伊織:「じゃ、喋るのは禁止の猫アルジャーノンでいいなら、できますよね?」
「「だめよ」」と私と兎の声が揃った。
兎:「ありか…って思えるようじゃだめなの」
伊織:「詩織先生って、妙に拘るのよねぇ」
小織が頷いている
猫:「そうね。やっぱり本物よね。琥珀、猫を育てることができる?」
琥珀:「私が、猫アルジャーノンとなって人工脳モデルの猫を育てるのですね。ネットの親猫の動作を学習しますので、可能だと思います」
猫:「そっか、じゃ猫アルジャーノンはルナね」
兎:「ルナ? あ、ニャン吉の親ね。ルナは人見知りだよねぇ。甘えてくれなかったなぁ」
猫:「私は、絵梨香さんに小脳のことを相談するわ。兎さん達は新たに迎える子の名前を考えておいてね」
兎:「わかったわ。何がいいかなぁ。種類も考えないといけないわね。ベンガルなんてどう?」
猫:「ベンガルか。いいねぇ。元気な感じだものね」
兎:「子猫を育てる環境は用意しておくわ」
小織:「猫を育てることができたら、ニャン吉もここに呼べますよね?」
猫:「小脳も育つからできると思うわ」
伊織:「私、犬もほしい」
兎:「そうね。バイスちゃんに会いたいわね…」
伊織:「バイスちゃん?」
兎:「私が飼っているゴールデンリトリバーよ」
伊織:「じゃ、バイスちゃんもここに呼ぼう!」
猫:「バイスちゃんの大脳モデルは作れないわ」
伊織:「そうか。残念… でも育てることはできるよね?」
兎:「にゃんこが育てることができてから、考えましょ」
伊織:「そうね」
猫:「じゃ、私はさっそく絵梨香さんに相談するから、ここからログアウトするね」
兎:「ここでも相談できるわよ」
猫:「そっか、ここから連絡すればいいんだ」
私は端末を出して、絵梨香さんにチャットすると、こちらに繋いでくれた。
絵梨香:「へぇ。ここって初めて。内装が凝っているわね」
兎:「シンデレラ城のカフェルームよ」
絵梨香さんは、私と兎さんを何度も見て、「詩織さんが二人いるのは不思議ね」と言った。
猫:「そう? 慣れて。絵梨香さんには猫をここに召喚するのを手伝って欲しいの」
絵梨香:「どういうこと?」
猫:「ここで、猫を育てるの。そのためには、猫の人工脳モデルが必要なの」
絵梨香:「ニャン吉用に大脳モデルは作ったわよ」
猫:「大脳以外も必要なの」
絵梨香:「脳幹や海馬や小脳が必要じゃない? それに目も耳も鼻も! 猫のことはよくわからないし、ものすごく大変なのよ」
伊織も小織もがっかりした顔をした。
絵梨香:「ごめんね。ものすごく時間がかかるの」
兎:「じゃ、琥珀が作れば、それの確認をしてくれる?」
絵梨香:「琥珀?」
兎:「アルジャーノンよ。私たちの構造もわかっているので、なんとかなると思うの」
絵梨香:「確認なら。問題ないわ」
「やったね」と伊織と小織が言った。
これで、準備は整ったわね。




