許可取得
私が、千秋先生の助手になるには関係各所への説明が必要らしい。これには時間がかかるが問題はないらしいが、お父さんの許可を得るのが千秋先生には難関らしい。
で、千秋先生は私ならイチコロだから許可を取ってこいと言う。
早速、お父さんの許可を取りに行った。
「お父さんいる?」と私は書斎をノックした。
「詩織か? いるぞ」
「入るね」
「体は大丈夫か? まだ細いな。体力は戻ってないんじゃないか?」
「うん!大丈夫。細いじゃなく、締まっているの。ランニングもしているから、高校の時より体力があるぐらいだよ」
「そっか。詩織はやりすぎることが多いから、ほどほどにな」
「わかった。今日はね、お父さんにお願いがあるの。千秋先生のところで補佐をしたいんだけど、いい?」
「ダメだ。護衛の強化のためと聞いているが、千秋のところでなくても護衛は強化できる」
「護衛の強化は私も必要と思っているけど、千秋先生のところの仕事に興味があるんだよー。いいでしょ?」
「詩織はお父さんの会社で仕事するのがいいんじゃないか?」
「お父さんの会社で何をするの?」
「そうだな… そろそろ沙織はどこかの事業を任せて経験を積ませたいから、沙織の代わりにお父さんの秘書はどうだ?」
「えーー! いやだ!」
「楽で高額収入だぞ」
何その、怪しいバイトみたいな誘い文句! 欲しいものはお父さんが買ってくれるのに、高額収入なんて意味ないじゃん。
「私、データ解析に興味があるんだよね」
「経済に興味があるんじゃないのか? 大学も経済学部だろ?」
「経済に興味はあるよ。経済もデータ解析が重要じゃない? どちらも似たようなもんだよ」
「そうか… じゃ、お父さんの会社の分析室でデータ解析の仕事をするか? …いや、あそこはかなり変わった奴が多いらしいから、詩織が危険だな… 戦略室は陰険なのが多いし、危険か… 他は…」
お父さんが思考の沼にはまってしまった… これはなかなか帰ってこない。
「お父さん! 何ぶつぶつ言っているの?」
「あ、すまん。お父さんの会社より、千秋のところの方が香織もいるから安全だな… よし、許可しよう。でも、危険が大きくなったら辞めさせるぞ」
「わかった。じゃ、お父さんおやすみー」
「おやすみ」
部屋に戻ると、千秋先生と香織お姉ちゃんが紅茶を飲んでいた。
結果が聞きたくて、待っていたようだ。
千秋先生に結果を報告した。
「やはり、詩織に行かせて正解だな。詩織に甘い」
「そうね、私ではお父さんを説得できないわ」
「そんなことないよ。香織お姉ちゃんでも説得できるよ」
「私が行くと、怒られて終わりよ。お父さんは昔から詩織に甘いわよ」
「香織も、沙織も、おじさんも、おばさんもみんな詩織に甘い」
「そうかな? バイトしたいって言うのは却下されたよ」
「当然よ。詩織にバイトなんてさせないわ」
「えーー。香織お姉ちゃんは家庭教師やカフェでバイトしてたじゃん」
「そういえば、そうね。カフェでのバイトは憧れていたから…」
「いいなぁ。私もカフェでバイトしてみたいな。香織お姉ちゃんがバイトしていたカフェの制服は可愛いし…」
「可愛い制服なんてくだらない。それより、許可は出たけど手続きの都合上、私のところの部屋には入るのは4月からになる」
「わかりました」
「学業優先なので、授業を休んで私のところに来ないように。詩織が選択している授業はすべて把握しているし、護衛から生活の報告があるから、言い逃れは不能だ」
「わかりました」
護衛? そういえば、香織お姉ちゃんや沙織お姉ちゃんは護衛を撒いて遊びに行ったと言う話を聞いたことがあったよね?
「香織お姉ちゃんは護衛を撒いて遊びに行った話をしてくれたよね。どうやって撒いたの?」
「それはねって、教えるわけないでしょ?」
「惜しい。流れで教えてくれると思ったのに」
「姉妹のじゃれあいに付き合ってられないので、帰る」
「千秋先生、じゃあね」
「私も部屋に戻るわ」
2人が部屋を出ていった。
私は冷めた紅茶を飲み、2人に言っていないけど消防署も懐かしく思ったんだよね。消防署なんて入ったことないから私の記憶じゃない。もしかして他にも記憶していることがあるかも…




