正しい足の動かし方 その後
大学でのレポートがあったので、2日間生命科学室に行かなかった。
生命科学室に入ると、河野さんが作業をしていた。
「こんにちは、河野さん」
「こんにちは、詩織さん。詩織さんが、NASAを動かしましたよ」
「はい?」
「NASAでは、宇宙飛行士が6本腕ロボットで船外作業の実験をしたそうです。宇宙飛行士が船外に出る必要がないこと、移動が早いこと、補助腕があることにより修理等の作業が早く進むことから採用は間違いないとの報告が来ました」
そのことね… と思っていると、河野さんが「あれ? 驚かないのですか?」と聞いてきた。
「驚きましたよ。でも、少し不思議なんですよねぇ」
「何が不思議なんですか?」
「だって、人工脳モデルを宇宙で活用するなら、宇宙飛行士が船外作業をする必要なんてないじゃないですか。だったら、どうして宇宙飛行士が訓練する必要があるのですか?」
「うーん。そう言われれば、そうですね。宇宙飛行士が船外作業をする必要はないですね。そもそも人が宇宙に行く必要もないですね。宇宙飛行士は被爆するので行かない方がいいですから」
「被爆するんですか?」
「そうですよ。1日に0.5から1ミリシーベルトを被爆します。35歳の女性なら年間120ミリシーベルトに制限されていますので、最大3ヶ月ですね」
「そんなに危険な場所なんですね。どうして、地球じゃ被爆しないのですか?」
「日本だと、年間で2ミリシーベルトほど被爆していますよ」
「年間で2ミリって少ないですよね? どうしてですか?」
「地球には磁場、大気、水がありますから、軽減されます」
「そうなんですね。ん? 磁場や大気で被爆が防げているなら、飛行機って被爆します?」
「被爆しますよ。東京とニューヨーク往復で0.2ミリシーベルトほど被爆します」
「かなり被爆するのですね」
「健康には問題ないレベルですよ」
被爆って放射能? 宇宙線とか言うやつだよね? コンピュータは大丈夫なの? 太陽フレアが発生するとコンピュータに異常が発生するとか聞いたことがあるよね。
「コンピュータは被爆して大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ。宇宙線もエネルギーがあるから、コンピュータの回路に当たると0が1に変わったりする」
「でも、宇宙でコンピュータを利用していますよね? 問題ないのですか?」
「電磁バリアや遮蔽材でガードするけど、完璧じゃないね」
「そうなんですか。で、電磁バリアってなんですか?」
「地上の被爆が少ないのは磁場があるからと言ったと思うけど、同じようなものです。超伝導で磁場を発生させます」
「へー。そうなんですか」
「詩織さん、疲れました? 流しましたね」
あ、見透かされた…
「そんなことはないですよー。光量子コンピュータも宇宙線の影響を受けるのですか?」
「もちろん影響を受けるよ。でも、影響は従来のコンピュータとどの程度違うかはわからないけどね。神木さん達が宇宙に行っても、人より安全だよ」
「そうかもしれないですけど…」
「NASAは月に人工脳モデルを送り込みたいそうだよ。そして、水を確保したいそうですよ」
「水? 月に?」
「不思議だよねぇ。あるらしいよ。来月には宇宙に人工脳モデルを連れていきたいそうだよ」
「来月? 早くないですか?」
「そうですね。僕もそう思います」
「誰を連れて行くのですか? 神木さんでしょうか? 兎さんでしょうか?」
「さぁ。知らないです」
私的なことですが、引越しで忙しいので毎日更新を中断します。
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