神木公人
香織お姉ちゃんは何も教えてくれない…
3日目にやっと香織お姉ちゃんは、「今日、千秋先生が来て情報説明をする」と言った。
千秋先生と河野さんが到着した。
「千秋先生、公園の人は何者だったのですか?」
「結論から言うと、対象が絞りきれないかな。下っ端の会社はわかるが、指示の出しもとはわからない。現時点では気を付けるしかないな」
「そんな気がしていたよ。行動範囲の制限は無くなったで良い?」
「その話は後でする」
「わかりました」
「この前、神木君ゆかりの場所や人を合わせたよな。その結果を知りたくないか?」
「そういえば、神木さんのことがありましたね」
「自分のことなのに気にならないのか?」
「結果は気になるけど、神木さんの記憶なんてないもん」
千秋先生は私を見つめた。一度目を閉じ話し始めた。
「結果を教える。詩織が反応した城東消防署の署員、天王公園は神木君に関係している。署員は神木君の部下で、天王公園は神木君が保護された場所だ。どちらも詩織が知らない情報だ」
「そうなの!?」
「今までの詩織の移動情報から、詩織は知らない情報だ」
「納得できないけど、いいわ。その神木さんは保護されたってことらしいけど、どういう人なんですか?」
「神木君は10歳の時に記憶喪失の状態で警察に保護され、神木孤児院で育った。神木君の親もわかっていないし、記憶も戻らなかったらしい」
「あのう。千秋先生、どうして記憶喪失なのに、10歳ってわかるんですか?」
「体格から判断したそうだ。だから年齢は当てにならない」
「持ち物や、行方不明の情報から身元はわからなかったと言うことですか?」
「裸で気絶した状態で見つかったらしい。でも足の裏は汚れていないので、運ばれたと思われたが、運んだ人の有力な足跡は見つからなかった。その後、病院で目覚めた神木くんは、喋ることもできなかったし、食べ方も分からなかったらしい。でも、1週間で話せるようになり普通に生活できるようになっていたらしい。そして、1ヶ月で読み書き計算ができるようになったらしい。国語辞書も読書のように最初のページから順番に全て読んだらしい…」
「覚えるのが早いのではなく、記憶が戻ったってことじゃない?」
「外部へのアクセスはいっさいできない状態で生活したので、与えた本や教えたこと以外の知識は全くなかったらしい」
「ふーん。で、その後はどうなったのですか?」
「警察は事件性を調べていたが、手がかりがなく捜査終了した。名前がないので、病院で看護師が『公園で見つかった子』からもじって『公人』と呼んでいたので、神木孤児院に入れるときに神木公人としたらしい。その後、高校まで進学して消防官になった。消防官採用試験はほぼ満点だったらしいぞ。大学進学すればどこでも入れたそうだ」
「どうして、消防官の神木さんが私の部屋にいたのですか? 私が救助されたのですか?」
「違う。香織の暴走が原因だな」
「香織お姉ちゃんの?」
香織お姉ちゃんが話始めた。
「詩織が意識不明になって色々手を尽くしたけど、2週間経っても詩織の意識が戻らないかったの。藁をもつかむ思いで、特殊事例の情報を探っていたの。そして、救急救命士の救命活動で移植患者の免疫抑制剤が不要になった2例発生した事例を見つけたの。その2例のどちらも神木さんだったの。さらに、彼は救護の生還率が日本で一番だったわ。直感だけど、香織を起こせるかもと思ったの」
香織は少しお茶を飲み話を続けた。
「神木さんは能力が高い人として、人材バンクに登録されている人だったのでスカウトの対象としては問題ない。けど、それだけじゃ採用できないから、千秋先生を巻き込んだの」
「はぁ。香織が持ってきた事例を調べると、理屈がわからない現象に見えて興味を持った。香織が採用したいと言うので、経歴をみると情報処理能力も高いし、救急救命士なので医学用語も問題なので、私の依頼する情報処理にうってつけで事例調査後も使えると思ったので採用すると香織に言った。次の日には香織は採用の資料、根回しまで終了していて、私がワークフローの許可を出すだけになっていた…」
千秋先生は呆れたと言う感じのため息をした。
「そこからは私が大変だったんですよ。千秋さんは神木さんの能力を検証するための試験計画を1日で作成しろと言うし、試験の対象の患者の選定と承認。神木さんの監視まで仕事にするんですから…」
「明人君が忙しいのはどうでもいい。その試験の結果、神木君は患者に何か影響を与えることができる可能性が出てきた。なぜ影響を与えられるのか?と言う仮説を神木君が考えたんだが、これがちょっと面白くて検証しようとしていたら、、、香織が神木君を無断で連れ出して、詩織に合わせたんだ。その時の映像は詩織に見せた映像だ」
「無断? 香織お姉ちゃんは大丈夫だったの?」
「叱責を受けたわ」
河野さんが「俺だったら首が飛ぶだけじゃないだろうな…」とボソッと言った。
「明人君と香織の立場が違うからな」
「詩織、ここからが本題だが、誰かが調査しているのははっきりしているから、護衛を強化しなきゃならない。私の部署に入れば護衛の強化が簡単だから、私の部署に入れ」
「護衛がないと怖いのは感じていけど… 千秋先生のところで何をする?」
「神木君と同じく私の情報処理の補佐だな。で、神木君の仮説を引き継いでもらえるかな?」
「私にできる?」
「どうかな?」




