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河野さんの受難

 エバはまだ歩けないので、その訓練を見るということでアンジェは仮想環境に残ったが、私と千秋先生はログアウトした。


「エバはエバであることを受け入れたようですね」

「そうだな。あんなに早く喋り出すとは思わなかった」


「兎さん達はもっと遅かったのですか?」

「兎はエバと同じような感じだったな。他の子は本人は喋っているつもりかもしれないが、最初の10分はうめいている。徐々にわかるようになるという感じだ。1時間もすれば普通に喋れるようになったな。エバは歩くのも早そうだ」


「エバは私の2日目データと同じ程度なんですよね?」

「そうだが、アンジェの日常のデータだ。他の子は詩織の小学校程度の学習を一通り実施した結果ではないので、偏っているかもしれない」


「じゃ、エバは他の子と違う成長をするかもしれないということですか?」

「詩織とアンジェのデータの合わせた状態だから、どうなるのかは予想はつかないな」


「エバが成功したから、千秋先生も河野さんも子供を作れるんじゃないですか?」

「いや、アンジェはかなり高性能MRIでの取得値がよかったから実現できたが、我々じゃ無理だな」


「そうなんですか…」

「明人君は嫌がるかもしれないが、アンジェはバイオリンが弾けるぞ。エバも弾けるかもしれない」


「えー! 勘弁してくださいよ!」

「ふふ。覚悟しておけと言いたいところだが、アンジェの興味は男の子ができるかになっている。次はアダムらしいぞ。アンジェが戻ってきたら、作ると言うと思うぞ」


「はぁ。アダムを作るとは聞いていましたが、戻ってきたらですか? 僕はずっとアンジェに付き合わされているので、眠いです。千秋先生もアンジェ付き合っていますがタフですね…」

「そうだな、さすがにきついな… アンジェを止まらせる方法を考える必要があるな。何かないかな?」


「そんなの簡単じゃないですか?」

「どうするんですか! ぜひ教えてください。詩織さん!」


「アンジェが高性能MRIで仮想空間に入ることに挑戦させればいいじゃないですか?」

「確かに興味があるようだが、補助が必要だぞ」

「そうですよ、休めないじゃないですか」


「橋田さんに頼めばどうですか?」

「橋田さんもアンジェに振り回されていて、さっき帰りました」


「じゃ、ダメですね。諦めてください」

「そんなこと言わないで、何か考えてくださいよ! 眠いです! 寝たいです!」


「そんなこと言われても… アンジェが興味があるのは航行ミッションですよね?」

「そうだ」


「どんなこと作業があるんですか?」

「故障しないと何もないな」


「故障時は何をするんですか?」

「色々あるだろうが、ロボットアーム等での修理もあるだろうが、詳しくは知らない」


「NASAは人の代わりに人工脳モデルを使おうとしているのですよね? だとすると、人工脳モデルがロボットアームを操作するのですよね?」

「たぶんな」


「じゃ、NASA用の仮想空間にロボットアームを用意してもらって、神木さん達に操作できるか試して貰えば、NASAの人と神木さん達が忙しくなるけど、河野さんは少し楽ができるんじゃないですか?」

「Très bien! Wunderbar! Bravo! 詩織さん! 楽できます!」


 河野さんの機嫌が良くなったのでホッとしていたら、アンジェが、ヘッドセットを外した。


「詩織! エバはすごいよ。すぐに歩けるようになったし、お茶もケーキも食べていたよ。だから、後は兎に教育を任せたんだ」

「エバはすごいですね」


「河野、次はアダムだ! 起動の準備だ!」

「アンジェさん、航行ミッションにエバを連れていく想定なら、人工脳モデルがロボットアームなどの設備の操作ができる必要がありますよね? NASAに準備してもらうのが先じゃないでしょうか?」


「河野、いいねぇ。やる気だね」

「いえ、そうじゃなく…」


「NASAに航行ミッション用のロケットと装備は依頼済みで、13時間後には準備完了するはずだ。13時間あるからアダムを起動できる」

「え? え!」


 河野さんが、予定通りに話が進まなくて、パニックになっている…

 千秋先生は巻き込まれてないように、口を挟まない。

「河野、アダムを誕生させるぞ!」


 アンジェは、あわあわ言っている河野さんを引っ張って出て行った。

「河野を生贄にできたので、帰るか」

「そうですね。帰りましょう!」


 ごめんね。河野さん。助けられないわ。

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