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エバの誕生

 次の日、生命科学室に行くと、アンジェがヘルメットをつけてノートパソコンを操作していた。

 ヘルメットには小さな箱がいくつかガムテープで付けられていた。

 すごい手作り感ね。内閣情報局やNASAの設備とは思えない…


「やあ、詩織。待っていたぞ」

「こんにちは、アンジェ、千秋先生。 アンジェ、そのヘルメットは高性能MRIですか?」


「あぁ。そうだ。今も私の脳のデータを取得している。データ取得も終了しているので詩織を待っていたんだ。私たちの子供の誕生を見守ろう!」

「私も興味があるので、見るのは問題ないですが、『私たちの子供』はやめてもらえませんか?」


「どうしてだい? 愛の結晶だよ!」

「それにしても、データは早く取得できたのですね」


「私の取得効率は高い方だったようだからな。千秋、起動しよう!」

「わかった。明人君、神木君たちに連絡してくれ」


「はい。連絡します」

「アンジェ、エバちゃんのアバターはどんなものですか?」


 アンジェはPCを操作してブラウンの少しウェーブのかかったセミロングでブラウンの目の10歳ぐらいの女の子を表示して「これだ」と言った。


「アンジェに似ていますね。アンジェの小さい頃はこんな感じですか?」

「河野が用意したアバターだ、私はこんな美少女じゃない。私たちも仮想世界に入ろう! 詩織はMRIで入るだろ? MRI室に移動するぞ」


 私たちはMRI室に移動した。私は新型MRIに接続し、千秋先生とアンジェはヘッドマウントディスプレイを装着した。


「「リンクスタート」」


 リビングには、神木さんと兎さんがいた。


 猫:「こんにちは、神木さん、兎さん」

 神木:「こんにちは、アンジェ、千秋さん、詩織さん」


 猫:「子供達はいないのですか?」

 神木:「もし、うまく動作しなかった場合、精神に影響があるかもしれませんので席を外させています」


 猫:「わかりました」

 アンジェ:「さぁ。誕生の瞬間だよ! 起動してくれ」


『わかりました。起動します』と河野さんの声が聞こえてきた。


 エバのアバターが出現したが、崩れ落ちそうになったところを兎が支えてソファーに座らせる。

 アンジェ:「エバ! 聞こえる?」


 兎は左手でエバを支え、右手はエバの手を握って、「起きて」と耳元で囁いた。

 エバは顔を顰めて周りを見た。


 アンジェ:「エバ! わかる?」

 エバはしわがれた声で「…何? どこ?」とやっと言った。


 兎:「心配しなくても大丈夫よ。慣れるまでしばらくかかるから」

 兎さんは、慣れているようだ。子供達で慣れているのかな?

 そう言えば、人工脳モデルの誕生は私も初めてだ。

 オギャーじゃないのね。それに、日本語だし。


 エバの眉間に皺を寄せている。

 可愛い顔なのに、なんか大人びている。アンジェのデータの影響かな?


 アンジェ:「あなたはエバよ。私と詩織の子供」

 猫:「だから、私の子供という表現はやめてください」


 アンジェ:「詩織、自分の子供と認めないなんて、ひどい親だよ! 情操に良くないよ」

 猫:「はぁ。わかりました… エバ、聞こえる?」


 エバ:「エバって私のことよね?」

 アンジェ:「そうよ。あなたは私と詩織の子供よ!」

 はぁ。まだ言っているよ。もう諦めるしかないなぁ。


 エバ:「…なんとなく、わかったわ。ここは仮想空間ね。そして、アンジェの脳データが私に入っているのね」

 アンジェ:「すごいわ! 私の子供は優秀よ!」


 猫:「千秋先生、アンジェは教育ママになる素質があると思いませんか?」

 千秋:「そうだな。びっくりだ。アンジェは結婚には向かないと思っていたが、予想外だな」

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