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アンジェの調査 その1

 生命科学室に行くと、アンジェと千秋先生が話し合っていた。


「おはようございます。アンジェ、千秋先生」

「おはよう、詩織。待っていたよ」

「おはよう、詩織」


「アンジェが元気いっぱいに見えますが、千秋先生は疲れていますね」

「一晩中アンジェの質問に答えていたからね」


「千秋先生、大変でしたね。私はお父さんと沙織お姉ちゃんと話をしました。後で相談があります」

「わかった」


「千秋、いいだろう? 詩織をよこせ」

「はぁ。アンジェは詩織の高性能MRIでの接続を見てみたいそうだ」


「詩織、行こう!」


 私はMRIの部屋に連行された。

 アンジェは慣れた手つきで準備を手伝っている。もしかして、一晩で準備を覚えたのかな?


 私は椅子に座って、MRIの装置を装着した。


「詩織、準備はいいかい? 繋ぐよ」とアンジェの声が聞こえたので、「はい」と言うと、リビングに転送された。

 リビングには、みんな揃っていたが、全員が疲れた顔をしていた。


「皆さんお揃いですね。おはようございます」

「おはようございます。詩織さん」


「皆さん疲れていますか?」

「はい、アンジェの質問攻めにあっていました」


「例えば、どんな質問でしたか?」

「私は意識を持ち始めた時に関するものでした。あとは詩織さんの話ですね」


「私?」

「そうです。私たちは空の人工脳モデルに詩織さんの小学生レベルの学習時に利用される脳部分の接続をコピーされています。その後にそれぞれの意識を持つまで、すなわち詩織さんではないと思うまでの話を聞かれました」


「みなさん、最初から私じゃなかったですよね?」

「そうだと思うのですが、意識を持つ前がよくわからないというか、覚えていないのです。アバターと人格は一致する傾向があることがありそうです。子供達は女性のアバターを与えた伊織と小織、男性のアバターを与えた颯人、悠人、理人はアバターと同じ性別のようです。アバターも成長分しか変更していません」


「神木さんはアバターを変えたと聞いていますよ」

「はい。私だけアバターをなん度も変えていますので、なぜ変えたのかをアンジェから質問を多数受けました。そのため、私は他の人のなん倍も質問が多かったです」


「そうですか… 私も神木さんは不思議ですもの。アンジェの見解もあとで聞いてみます」


『詩織、次は私の番だよ。最初はお茶とケーキだ!』


 テーブルに紅茶とアテスウェイの苺ショートケーキ?が出てきた。

 私は椅子に座った。


「紅茶のいい香りがするわ。ケーキも美味しそう。これは兎さんが調整したの?」

「そうよ。かなりの自信作よ」


「楽しみだわ」と言い。私はケーキを一口食べた。


「卵黄を多めに使ったスポンジはきめ細やかで繊細な味。隠し味のレモンシロップが爽やかさがあるわね。生クリームはコクがあって空気感があるわね。すばらしい味だわ」

「そうでしょ? 自信作だもの」


「詩織さん、ケーキは本物との差はないのですか?」と伊織が聞いてきた。

「そうね。お腹がいっぱいになることはないけど、味や食感は同じね」


「そうなんですね。私達は美味しいとは思うけど、現実との差がわからないから…」と伊織が残念そうに言った。

 私はなんと答えたらいいかわからなくて、言葉に詰まった。


『なかなか興味深い話だが、次はピアノだ』

「えー。まだ食べ終わっていないわ」


『ケーキは腐りもしないし、また出せるだろ?』

「論理的にはそうかもしれないけど、食べてからね」


『はぁ。わかった。じゃ、お茶の味も教えてくれ』

「お茶?」私は一口お茶を飲んだ。


「アッサムね。力強い味わいと栗のような甘い香りがするわね。おいしいわ」

「でしょ? アッサムを単独で飲むのは好きじゃないけど、苺ショートは生クリームが強いから合うと思うの」と兎が言った。


「私が知ることができないものが現実世界には溢れているわ…」と伊織が言った。

「こんなにレベルの高い紅茶とケーキのセットはそうないわよ」


「他にもいろいろな食べ物があるだろうし、服も着て楽しめるのでしょ?」

「そうね。でもここでは思ったことはなんても実現できるじゃない?」


「詩織さんも詩織先生、いや兎先生と同じことを言うのね」

「同じこと?」


「そう。『思ったことは実現できる』ってこと」

「そうなの?」


『詩織、もう食べただろ? ピアノだ』

「アンジェはせわしないなぁ」


『せわしない? 千秋、どういう意味だ?』

『いそがしいとか、落ち着きがないという意味だ。アンジェにピッタリな言葉だ』

『そうか? 音楽室だ!』


「やっぱり、せわしない人やなぁ」

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